FUTURE OF WORK

「LVMHでは、どんな人材にも仕事がある」:同社コーポレート・レスポンシビリティ責任者 K・ラグイン氏

16万人の従業員を抱えるグローバルカンパニーで、企業の社会的責任をマネージメントすることは容易ではない。特に2021年のような、混沌の年においてはさらに困難だ。しかし、LVMH北米(LVMH North America)の人材管理および企業責任担当のバイス・プレジデントであるカリン・ラグイン氏は、この課題に取り組んでいる。

「2020年を通して重要だったのは、人、安全、健全さ、価値観、そしてどうやったら人々が意味のある形でキャリアを積むことを可能にできるか、に取り組むことだった」と、ラグイン氏は米DIGIDAYの姉妹サイト、グロッシー(Glossy)のポッドキャストで述べている。「私の仕事はこの1年で変わっておらず、むしろ加速している形だ」。

2007年にLVMHに入社する前はソーシャルワーカーとして働いていた同氏は、2020年は透明性の点でLVMHの転換点だったと述べた。それは主に、ジョージ・フロイド氏の殺害事件後に広がった社会動乱によって引き起こされた。「従業員や顧客のあいだで、我々の取り組みをより直接的に伝達することへの期待と注目が生まれた。そのため、私たちは多様性と包括性(インクルージョン)に関する我々の取り組みについてより大きな声で発信するようになった」。

また、従業員のメンタルヘルスをサポートするための取り組みも強化したという。

以下、ポッドキャストでの会話のハイライトをいくつか紹介する。読みやすさのために若干の編集を加えてある。

Subscribe: Apple Podcasts | Stitcher | Google Play | Spotify

2020年によって牽引された透明性

「LVMHはこれまでは、文化、多様性、包括性についてあまり声高に発信はしてこなかった。だからと言って我々が何も取り組んでいなかったわけではない。しかし、この1年間は大きな転換となり、特に透明性を求める動きが生まれた。従業員や顧客のあいだで、我々の取り組みをより直接的に伝達することへの期待と注目が生まれた。そのため、我々は多様性と包括性に関する我々の取り組みについて、より大きな声で発信するようになった。特にジョージ・フロイド氏の殺害事件があったあとは、全員が立ち止まって耳を傾けるべき時間が訪れた。我々は組織として、フォーカスグループや、人々の意見を聞く機会をすぐに作った。理解を深め、我々の取り組みを強化し、もっと社内での、そして社外とのコミュニケーションを取り、黒人コミュニティを真に支援することが目的だった」。

多様な人材の獲得に向けて

「人材はどこにでもいるが、適切な候補者を見つけるのは信じられないほど難しいため、採用は本当にチャレンジングな課題だ。適切な候補者とひと言で言っても、ラグジュアリー、ファッション、ビューティについて多くの誤解が(人材のあいだで)がある。まず伝えたいのは仕事には多様性があるということだ。基本的にLVMHでは、どんな人材にも仕事がある。我が社ではリーダーシップのスタイルはひとつではなく、多様なリーダーシップのスタイルがある。我々の頭脳でさえ、企業の観点からすると、とても異なっている。私が特にキャリア初期の人々に伝えたいアドバイスは、ブランドを越え、肩書きを越え、人と出会い、ソーシャルメディアに参加し、文化を理解し、自分の価値観に共鳴する企業文化を見つけることだ。キャリアは仕事だけではなく、日々の充実感をもたらしてくれるからだ」。

男女共同参画の推進

「LVMHはおそらく、リーダー的役職にある女性の数値目標を設定した最初の組織のひとつだ。それが始まった10年以上前には23%しか(リーダー的役職における女性は)いなかった。現在は44%を超えており、10年で倍になったことになる。この道のりから学んだことは、まず道のりはまだ終わっていないということ。第2に、これは自然に放置して起きる変化ではないということ。3つ目は、インターセクショナリティ(*)が重要だということだ。なぜなら、性差別は人種差別と同じように、組織における構造的な変化を強制的に起こしてしまうからだ。そのため、すべてがつながっている。しかし、我々のここまでの前進をとても誇りに思っている。そして、女性がキャリアを伸ばせる環境にいることは、すべての女性にとって、そして男性にとっても、非常に誇りを持てることだと思う。そして実際、女性が男性の味方を持てるようにするためのアライシップ(被差別者支援)プログラムを開始しようとしている。私たちは特に、有色人種の女性に対する女性からサポートに焦点を持っている。また、キャリアをスタートさせたばかりの女性のメンターに、より若い女性をアサインすることにも力を入れている。このように、我々はまだこの道のりの途中だ」。

*訳注:インターセクショナリティとは、社会に存在する差別には、人種、性別、障害、性的指向など個人が有するさまざまな属性が複数組み合わさって、さまざまな影響を及ぼしているという観点

社員のメンタルヘルスの重視

「(メンタルヘルス)はすべての出発点である。メンタル上の安全、社内における気持ちの安全を確保することが、日々の仕事に取り組み、自分の力を最大限に発揮するための出発点となる。そのため、私の仕事のひとつは従業員とブランドにさらなるサポートを提供することだ。また、パンデミックにおけるメンタルヘルスへの支援も強化している。私たちはメンタルヘルスファーストエイド(精神的な救急手当)の試験運用をしてきた。これは素晴らしい訓練であり、同僚のメンタルヘルスの支援や、その他の助けを必要とする人を支援をしたいと考える人に強く勧める内容になっている。人事部でもセッションをいくつか行った。人事部はメンタルヘルスの最前線にいるからだ。そして残念ながら、今後もその状況は続くだろう。人々の30%がPTSDを経験することを、人事部のメンタルヘルスセッションでトレーナーとセラピストから学んだ。そのことからも、来年もまたこのトピックが重要事項として存在するだろう。そのため、我々にはさらなる追加の支援が本当に必要であり、企業には(従業員のメンタルヘルスに)安全を確保するリソースを提供する役割がある。私たちは人々を修理するためにここにいるのではなく、彼らが必要とする助けを得ることができるように支援するためにここにいる」。

[原文:LVMH head of corporate responsibility Karin Raguin: 2020 was a ‘tipping point’ for brand transparency

JILL MANOFF(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)