誰もがお金持ちに見られたい。
これは、ファッション再販会社のザ・リアルリアル(The RealReal)が8月22日に発表した2024年ラグジュアリー委託販売レポートによるものだ。ほかの裏付けデータでは、Z世代が「静かなラグジュアリー」の代名詞である6つのブランドをTheRealReal.comで検索した回数は、2022年にくらべて今年29%増加したことが示されている。そのなかにはブルネロクチネリ(Brunello Cucinelli)、ロロ・ピアーナ(Loro Piana)、ザ・ロウ(The Row)があり、それぞれ超富裕層に愛されている、ロゴのないスタイルで知られるブランドだ。
しかし同時に、もっともハイエンドなファッションブランドは価格を大幅に引き上げている。2022年、エルメス(Hermès)は今年5~10%の値上げを発表した。一方、シャネル(Chanel)は3月だけで平均8%の値上げを実施し、いくつかのスタイルでは16%の値上げを行ったと報じられている。またシャネルは年内にさらなる値上げを行う予定だ。
クレジットカードの支払延滞が増え、学生ローンの返済が迫るなど、消費者の家計は圧迫されており、嗜好品への支出が抑制されている。多くのファッションファンにとってそれが意味するのは、「イット」スタイルやランウェイを彷彿とさせるOOTD(本日のコーデ)を満喫するための新たな手段を見つけることだ。
幸運なことに、最新のデザイナーズルックのワードローブをより手頃な方法で提供する、ラグジュアリーなレンタルの選択肢が市場に登場している。そうした市場を開拓している起業家たちによると、それらの企業は需要に応えるために急速に事業を拡大しているという。
誰もがお金持ちに見られたい。
これは、ファッション再販会社のザ・リアルリアル(The RealReal)が8月22日に発表した2024年ラグジュアリー委託販売レポートによるものだ。ほかの裏付けデータでは、Z世代が「静かなラグジュアリー」の代名詞である6つのブランドをTheRealReal.comで検索した回数は、2022年にくらべて今年29%増加したことが示されている。そのなかにはブルネロクチネリ(Brunello Cucinelli)、ロロ・ピアーナ(Loro Piana)、ザ・ロウ(The Row)があり、それぞれ超富裕層に愛されている、ロゴのないスタイルで知られるブランドだ。
しかし同時に、もっともハイエンドなファッションブランドは価格を大幅に引き上げている。2022年、エルメス(Hermès)は今年5~10%の値上げを発表した。一方、シャネル(Chanel)は3月だけで平均8%の値上げを実施し、いくつかのスタイルでは16%の値上げを行ったと報じられている。またシャネルは年内にさらなる値上げを行う予定だ。
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クレジットカードの支払延滞が増え、学生ローンの返済が迫るなど、消費者の家計は圧迫されており、嗜好品への支出が抑制されている。多くのファッションファンにとってそれが意味するのは、「イット」スタイルやランウェイを彷彿とさせるOOTD(本日のコーデ)を満喫するための新たな手段を見つけることだ。
幸運なことに、最新のデザイナーズルックのワードローブをより手頃な方法で提供する、ラグジュアリーなレンタルの選択肢が市場に登場している。そうした市場を開拓している起業家たちによると、それらの企業は需要に応えるために急速に事業を拡大しているという。
接客サービスで差別化を図る
創業5年のラグジュアリーレンタル会社、ジャネット・マンデル(Janet Mandell)は9月にマンハッタンのフラットアイアン地区に3店舗目をオープンする。同社は、アライア(Alaia)やアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)からヴァレンティノ(Valentino)やヴェルサーチ(Versace)まで、ファッション界の一流ブランドによるスペシャルオケージョンの服やアクセサリーを専門に扱っており、シカゴとロサンゼルスにも店舗がある。
創業者のジャネット・マンデル氏は、「全米各地で存在感を示したい」と語った。フロリダとテキサスも店舗拡大のために狙いをつけている州だという。
ジャネット・マンデルは今年、300万ドル(約4.4億円)の売上を見込んでいるが、これは主に実店舗の売上によるものだとマンデル氏は述べた。オンラインレンタルの需要にもかかわらず、最近やっとその機会に取り組み始めたところだ。品揃えの約70%を扱う同社のeコマースサイトは、ラグジュアリーな店舗体験とうまくマッチするよう近々「刷新」される予定だ。
マンデル氏によると、店員はスタイリストとして顧客一人ひとりに1時間かけて接客するという。このサービスと、同社が頭からつま先までのスタイルを提供していることが、ますます盛況となるラグジュアリー再販市場における差別化要因だと同氏は述べた。
ハンドバッグが加わり、ビジネスが一変
創業7年のラグジュアリーレンタルサービス、スウィッチ(Switch)の創業者でプレジデントのリアナ・カディシャ・コーン氏は、同社の成長は12月以来「爆発的」だと語る。これはスウィッチセレクト(Switch Select)というハイエンドなメンバーシップのローンチによるものだという。平均小売価格4000ドル(約58万円)のアクセサリーを月額195ドル(約2万8000円)で利用できるというサービスだ。
また12月には、テキストメッセージ、電話、Eメールによる顧客サポートなど、より「コンシェルジュ的なアプローチ」を顧客サービスに取り入れた。そして特筆すべきは、ジュエリーだけでなく、ハンドバッグにも商品を拡大したことだ。
「ハンドバッグが加わったことで、ビジネスが一変した」とカディシャ・コーン氏は言う。当初、顧客の需要が予想を上回ったため、同社はメンバーシップにウェイティングリストを導入せざるを得なかった。また、特に商品の初期費用が高いことから、需要に対応していくことが引き続き課題となっている。ブランドから独立して運営されているスウィッチは、シャネル、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)、エルメスのスタイルを扱っている。
カーストル(Caastle)のグロース・グローバルヘッドであるジェシカ・カハン・ドヴォレット氏は「シャネル(が運営する)レンタルを目にする日が来るとは思えない」と述べた。「シャネルは独占性であり、レンタルはアクセスだ」。
認知度を高めても在庫がなければビジネスは終わり
その点、マンデル氏は、同社がマーケティングよりも在庫への投資を優先していることを指摘し、2020年に閉店したアルマリウム(Armarium)を含む競合他社が間違った方向に向かったのとは逆をやっていると話す。ジャネット・マンデルはクチュールレベルのデザイナーズアイテムも含む合計200のブランドを扱っており、ブロンクスアンドバンコ(Bronx and Banco)、パットボー(Patbo)といったコンテンポラリーブランドの限定版スタイルのレンタルも行っている。
「認知度を高めて顧客を呼び込んでも、在庫がなければビジネスは終わりだ」とマンデル氏は言う。
マンデル氏はビジネスを始める前から顧客としてブランドやヴィンテージディーラーと関係を築いてきたが、それが功を奏したという。そうしたブランドやディーラーは、販売や新しいスタイルを「いち早く」許可してくれることが多い。マンデル氏は小売店でクチュールアイテムを購入する一方で、マグダ・ブトリム(Magda Butrym)やデヴィッド・コーマ(David Koma)などの若いブランドとともにバイヤーのように働いている。そうしたブランドのファッションショーに参加し、ブランドはマンデル氏に卸値を教えてくれるのだ。
地域密着型ライフスタイル情報誌によるオンラインレンタル
レンタル市場に参入したばかりの、ありそうでなかったもうひとつのブランドが、『オーシャンダイブ(Ocean Dive)』や『ロサンゼルス・コンフィデンシャル(Los Angeles Confidential)』など、地域密着型のライフスタイル情報誌を所有するメディアブランド、モダンラグジュアリー(Modern Luxury)だ。同社は10月、ヴィンス(Vince)、シンシア・ローリー(ynthia Rowley)、デレク・ラム・10クロスビー(Derek Lam 10 Crosby)など、現代的で先進的なコンテンポラリーブランドのスタイルを扱うオンラインレンタルプラットフォーム、ModLux.Rentをソフトローンチした。。このサービスの大部分は、レンタルに特化したソフトウェアプロバイダーのカーストルによって運営されており、カーストルは事業の一部を所有し、品揃えを自社の顧客であるブランドに提供する。
「レンタルを通じてブランドと関わる顧客は、eコマースでもそのブランドに多くの金額を費やす」と、カーストルのカハン・ドヴォレット氏は述べた。「ブランドにとってマルチブランドのレンタルサービスは、デジタルに精通した新規の若い顧客に接する絶好の場所だ」。レンタルを提供することでブランドは収益源を多様化することができ、顧客の嗜好や行動が変化してもブランドを守ることができると、同氏は付け加えた。
モダンラグジュアリーは、ModLux.Rentのマーケティングエンジンとしての役割を果たしており、1600万人の読者にレンタルのサブスクリプションサービスを宣伝している。ModLux.Rentの会員は、月額125ドル(約1万8250円)で一度に5つのスタイルを利用できる。
これまでのところ、同社は「本当に勢いがある」とカハン・ドヴォレット氏は言う。近々、ザック ポーゼン(Zac Posen)、エルベレジェ(Hervé Léger)、ジョイー(Joie)などのブランドが加わる予定だ。そして2014年春には、投資額を増やして顧客獲得と成長を加速させることを目指す。
ModLux.Rentは、ラグジュアリーという名に恥じないよう、提供する衣服、パッケージ、カスタマーサービスの品質を最優先しているという。「ラグジュアリーアクセサリーを身につける消費者は、現代的で先進的なコンテンポラリーブランドを着用することが多い」とカハン・ドヴォレット氏は述べた。
「プレミアム」セレクションを優先するレント・ザ・ランウェイ
一方、元祖レンタルサービスのレント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)は、顧客からのフィードバックに基づいて引き続き、在庫の「プレミアム」セレクションを優先している。同社が最近実施した顧客調査では、回答者の85%がハイエンドのラグジュアリーファッションを重視すると答え、87%がほかの方法では買えないブランドにアクセスするためにレント・ザ・ランウェイを利用していると回答した。
また、レント・ザ・ランウェイは、ハイエンドなブランドと質の高いサービスとともに、サービスが提供する価値を伝えることを優先している点も共有している。レント・ザ・ランウェイのサブスクリプションサービスは、平均して顧客の消費額の20倍の商品総額を提供している。人気の高い会員ランクでは、毎月10スタイルを144ドル(約2万1000円)でレンタルできる。レント・ザ・ランウェイが提供する700以上のデザイナーには、ニューヨーク・ファッションウィークの定番であるアルチュザラ(Altuzarra)、プロエンザスクーラー(Proenza Schouler)、ウラ・ジョンソン(Ulla Johnson)などがある。
ラグジュアリーアイテムレンタル事業の課題と将来
ジャネット・マンデルのマーケティングは、有料顧客であるファッションスタイリストなどの口コミに大きく依存している。ジャネット・マンデルからレンタルしたアイテムをスタイリングしたセレブリティの顧客には、カイリー・ジェンナー氏、ミーガン・フォックス氏、コートニー・カーダシアン氏などがいる。マンデル氏が投資したインフルエンサーキャンペーンは、会社の立ち上げに合わせた1回のみだ。そして9月のニューヨーク・ファッションウィーク前後に「小さなキャンペーン」を行う予定だという。
マンデル氏は、夫とふたりで築いたこのビジネスは利益を上げていると語る。成長を早めるため、現在は投資家を探している。
もちろん、顧客が高額のアイテムを借りられるようにすることには課題もある。損害賠償やドライクリーニングよりも、むしろ最大の問題となっているのは盗難だと、マンデル氏はそれとなく述べている。同社は現在、交換できるものがない一点もののアイテムを借りる人の身元調査を実施している。
近年、高級時計のレンタルプラットフォームが複数生まれては消えていったことは注目に値する。2018年、イレブンジェームズ(Eleven James)は5年間の営業ののち閉鎖した。一方、2021年にローンチしたブライトリングセレクト(BreitlingSelect)のオンラインサイトでは、レンタルサービスが復活した際に通知されるよう、興味のある買い物客が記入するフォームが現在用意されている。ブライトリングはコメントの要請に応じなかった。
マンデル氏によると、SAGのストライキは同社の成長にも影響を及ぼしており、売上の60%を占めているロサンゼルスの店舗があまりにも鈍化しているため、店員の勤務時間を短縮している。ほかの市場が損失を補っているという。
だが、この記事の情報源となった人々は、ラグジュアリーレンタル事業の現在の成長軌道をベースに戦略を練っていると述べており、それは市場にとって明るい兆しだ。たとえば、カディシャ・コーン氏は、スウィッチは来年ハンドバッグを「倍増」し、将来的にはより多くのアクセサリーカテゴリーに拡大する可能性があると述べた。
「ラグジュアリーは伝統的に超独占的で、希少で窮屈なものだった」とカディシャ・コーン氏は言う。「しかし、レンタルはその代わりにラグジュアリーを『インクルーシブで、豊かで、解放的』だと感じさせている」。
[原文:Luxury Briefing: The luxury fashion rental market is gaining traction]
JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)