「静かなラグジュアリー」というコンセプトが主流となりつつある現在、600ドル(約8万8000円)のスニーカーや1200ドル(約17万6000円)のハンドバッグを扱うブランドの新たな波が生まれつつある。そうしたブランドは、ラグジュアリー志向の消費者がベーシックではないスタイルを切望しているという点に賭けている。
ポップカルチャーのアイコンであるカイリー・ジェンナー氏とソフィア・リッチー氏が、静かなラグジュアリーのブランドを開発中だと報じられている。また、HBOのドラマシリーズ『メディア王 〜華麗なる一族〜(Succession)』や最近美しく変貌したと話題になったジェニファー・ローレンス氏のおかげで、「ロロ・ピアーナ(Loro Piana)」や「ブルネロクチネリ(Brunello Cucinelli)」という名前はいまや「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」や「グッチ(Gucci)」のようにスラスラと人々の口から出るようになった。富裕層の買い物客は、「知る人ぞ知る」というコンテクストにおいて、自分だけが「知っている」という排他的なサークルの一員であることを重視するが、静かなラグジュアリーは話題になりすぎてしまっている。
トレンドの潮流はすでに変わりつつある
「我々の文化は、極端な出費と極端な技能を(個々に)発見することに執着している」と、ブランディング・エージェンシー、ゼネラルアイデア(General Idea)の共同創業者、イアン・シャッツバーグ氏は4月のGlossyのフォーカスグループで述べている。そのため、「新世代のニッチなラグジュアリーブランドが、大手ラグジュアリーメゾンに対抗する存在となるかもしれないし、ニッチなラグジュアリーの分野で健全性を目にすることになるだろう」。
シャッツバーグ氏は、最近ハンプトンの人々のあいだでトム・フォード(Tom Ford)に取って代わったアイウェアブランドで、LAを拠点に創業して8年となるジャックマリーマージュ(Jacque Marie Mage)を挙げた。750ドル(約11万円)から2300ドル(約33万7000円)のサングラスを販売する同社は、そのEコマースサイトで高級素材と100人の職人による300もの工程を経た精巧な製造工程を紹介している。
トレンドの潮流はすでに変わりつつある、と述べたのは、ファッションインフルエンサーのチャールズ・グロス氏だ。「エルメス(Hermès)やシャネル(Chanel)に飽き飽きしている裕福な消費者は、もっと小さなブランドに傾倒している」と彼は言う。そして、この購買層が明らかにトレンドを作り出しているため、ほかの層もそれに倣うのが賢明だろう。「いま参入すれば、時代を先取りできる」。
「静かなラグジュアリー」というコンセプトが主流となりつつある現在、600ドル(約8万8000円)のスニーカーや1200ドル(約17万6000円)のハンドバッグを扱うブランドの新たな波が生まれつつある。そうしたブランドは、ラグジュアリー志向の消費者がベーシックではないスタイルを切望しているという点に賭けている。
ポップカルチャーのアイコンであるカイリー・ジェンナー氏とソフィア・リッチー氏が、静かなラグジュアリーのブランドを開発中だと報じられている。また、HBOのドラマシリーズ『メディア王 〜華麗なる一族〜(Succession)』や最近美しく変貌したと話題になったジェニファー・ローレンス氏のおかげで、「ロロ・ピアーナ(Loro Piana)」や「ブルネロクチネリ(Brunello Cucinelli)」という名前はいまや「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」や「グッチ(Gucci)」のようにスラスラと人々の口から出るようになった。富裕層の買い物客は、「知る人ぞ知る」というコンテクストにおいて、自分だけが「知っている」という排他的なサークルの一員であることを重視するが、静かなラグジュアリーは話題になりすぎてしまっている。
トレンドの潮流はすでに変わりつつある
「我々の文化は、極端な出費と極端な技能を(個々に)発見することに執着している」と、ブランディング・エージェンシー、ゼネラルアイデア(General Idea)の共同創業者、イアン・シャッツバーグ氏は4月のGlossyのフォーカスグループで述べている。そのため、「新世代のニッチなラグジュアリーブランドが、大手ラグジュアリーメゾンに対抗する存在となるかもしれないし、ニッチなラグジュアリーの分野で健全性を目にすることになるだろう」。
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シャッツバーグ氏は、最近ハンプトンの人々のあいだでトム・フォード(Tom Ford)に取って代わったアイウェアブランドで、LAを拠点に創業して8年となるジャックマリーマージュ(Jacque Marie Mage)を挙げた。750ドル(約11万円)から2300ドル(約33万7000円)のサングラスを販売する同社は、そのEコマースサイトで高級素材と100人の職人による300もの工程を経た精巧な製造工程を紹介している。
トレンドの潮流はすでに変わりつつある、と述べたのは、ファッションインフルエンサーのチャールズ・グロス氏だ。「エルメス(Hermès)やシャネル(Chanel)に飽き飽きしている裕福な消費者は、もっと小さなブランドに傾倒している」と彼は言う。そして、この購買層が明らかにトレンドを作り出しているため、ほかの層もそれに倣うのが賢明だろう。「いま参入すれば、時代を先取りできる」。
アーリーアダプターに発見してもらうことが重要
だが、影響力のある裕福な消費者にリーチしようとしている若いブランドにとって、課題は発見しやすいステージを設定することにある。
創業3年のコーサー(Courser)は、ターゲットとするエンドカスタマーから一歩離れた人々や目立たないインフルエンサーに595ドル(約8万7200円)のスニーカーを履いてもらうことに注力している。
「頭からつま先までルイ・ヴィトンで着飾るような人は、コーサーは買わないだろう」と、同ブランドのマネージングディレクター、タイラー・フェアチャイルド氏は言う。「我々は、ルイ・ヴィトンやプラダ(Prada)をいくつか所有しているような消費者を対象にしているが、そのような消費者は一般的に新しいブランドのアーリーアダプターで、何か違うことを試み、限界を少し押し広げようとしている。本当の意味でのラグジュアリー製品を確実に手に入れるために、より深く掘り下げることも厭わない」。
フェアチャイルド氏は、3万ドル(約440万円)のスピーカーを含むラグジュアリーオーディオ機器メーカーで、コーサーの主要投資家であるジョー・アトキンス氏が創業したバウワースアンドウィルキンス(Bowers & Wilkins)に11年間在籍しており、そこで活用していたマーケティング手法を拝借しているという。ある時、「何億ドルも持っていて、いつも最高にクールでスタイリッシュなギアを身に着けている連中がたくさんいる部屋」に入り込むため、フェアチャイルド氏はLAレイカーズ(L.A. Lakers)の用具マネージャーに同ブランドの500ドル(約7万3300円)のヘッドフォンを贈った。その計画は功を奏し、何人かの選手がすぐにそのヘッドホンを装着するようになった。
「ラグジュアリーな空間では派手で強引な印象を与えたくない。しかしまた新しいブランドである以上、人の耳に入るようなことをする必要がある」とフェアチャイルド氏は述べ、コーサーがプロモーションを行うことは決してないだろうと付け加えた。彼は「適切な場所にいる適切な人々」にブランドを身に着けてもらうという自身のアプローチを、「静かな種まき」と表現する。インスタグラムでこのブランドを身につけている姿をタグ付けしている人々には、ニューヨークのソーホーにある人気のブランチスポット、ジャックスワイフフリーダ(Jack’s Wife Freda)の創業者らがいる。ブランドのマーケティング予算は主にPRと有料ソーシャルに使われている。
急成長しすぎると多くの失敗を犯す
コーサーはクリエイティブディレクターを兼任するジョニー・クラリエヴィチ氏が、プーマ(Puma)、ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)、ラグ&ボーン(Rag & Bone)などのブランドでのフットウェアデザインの経験を経て創業した。クラリエヴィチ氏はラグジュアリーとパフォーマンスの交差点にホワイトスペースを見出して2020年にブランドをローンチして以降、そこを「モノにする」ことに取り組んできた。トップクラスのラグジュアリーブランドはどこもスニーカーを製造しているが、現時点では、それらは「重く」、履き心地もパフォーマンスも欠けていると彼は言う。
「そうしたブランドはストリートウェアを作ったが、パフォーマンスを求めるようになるのは時間の問題だ」とクラリエヴィチ氏は述べた。
ゆっくりとした成長がこのブランドでもっとも重要な点だ。現在、コーサーの従業員はわずか5人で、11色展開のスニーカー、ウノ(Uno)という一つのスタイルを販売している。
「あまりに急に成長しすぎると、多くの失敗を犯すことになる」とフェアチャイルド氏は言う。「私たちは長期戦のためにやっている。非常に体系的なアプローチを取っているし、時間をかけて適切に行っていきたい」。
ラグジュアリーとなるには多くの初期費用が必要
ウノをデザインする際、クラリエヴィチ氏は自身のキャリアで初めて、目標小売価格に基づいたパラメーターに導かれるのではなく、自分が好きな素材で最高の靴を作ることに集中したという。0.5ミリのヌバックレザーを含む素材を使い、一足一足がイタリアで手作りされている。毎回少量生産のたびに、コーサーはシューズの性能にアップデートを加え、アジアに追いつきつつあるイタリアの工場で展開する際には進歩を取り入れている。
「これは簡単にはいかないだろうとわかっていた」とフェアチャイルド氏は言う。「なぜなら、ほかのファッションメゾンのラベルや伝統が牽引している世界で、ただ製品をローンチするわけにはいかないからだ。(そうしたブランドは)何でも出せるし、ブランドのラベルが付いていれば売れる。でも(私たちの考えでは)よりよい製品を作れば売れる。私たちにとっては製品がすべてだ」。
その思いは、創業4年のハンドバッグブランド、シルバー&ライリー(Silver & Riley)の創業者ローラ・バンジョー氏も同じだ。同ブランドは1500ドル(約22万円)までのスタイルでローンチした。「一般的にラグジュアリーブランドの評判は、人々が店頭で商品を試したり商品を街で目にしたりすることで、何年もかけて築かれてきた。そして『ラグジュアリー』というラベルを得るには、多くの初期費用が必要なのだ」。
それでもバンジョー氏はイタリア製の製品の品質の高さに支えられ、シルバー&ライリーは黒字を達成している。顧客の40%はリピーターである。現在、バンジョー氏は、自宅でスタイルを試せる機会を提供するなど、より多くの買い物客にバッグを手に取ってもらう方法を模索中だ。
ラグジュアリーは人々が手にしたい感覚
バンジョー氏は、製品パッケージからマーケティングイメージにいたるまで、あらゆるタッチポイントでラグジュアリーレベルの品質を提供することを優先しているという。だが、そのためには大手ブランドと比較して会社の収益のかなりの部分をマーケティングに費やす必要がある。たとえば、前回のシルバー&ライリーの写真撮影には4万5000ドル(約660万円)かかった。これはディオール(Dior)のようなブランドにしてみればバケツのなかの1滴のようなものだ。しかし、彼女はそのような投資に価値があると述べた。
「『ラグジュアリー』とは、人々が手にしたい感覚であり、ある意味、人は実現不可能な何かの一部に属しているのだと感じたいのだ」とバンジョー氏。「それを手に入れるために懸命に働いてきたので、そうしたものを自分のご褒美にしている。だから、こちらも確実にラグジュアリーな体験を提供できるようにしたいと思っている」。
コーサーも同様に、60日間の返品保証を含む、次のレベルのカスタマーサービスに注力している。初期の顧客との絆を深めるため、ブランドはカスタマーアドバイザリーボードのようなものを立ち上げようとしている最中だ。これは、メンバーに「驚きと喜び」の瞬間を提供し、製品開発について意見を述べる機会も設ける。クラリエヴィチ氏によれば、ブランドはフットウェアで基盤を築いているが、将来的にはアクセサリーやアパレルも作る予定だという。
コーサーはほとんどD2Cで販売を行っているが、ウノはSaks.comやファーフェッチ(Farfetch)のプライベートクライアント(Private Client)というプログラムでも販売されている。フェアチャイルド氏によれば、同ブランドは近々、金儲けというよりはマーケティング戦略として「テイストメーカーであるブティック」に進出する予定だという。LAのフレッド・シーガル(Fred Segal)、マイアミやハンプトンズの店舗などが含まれることになるだろう。ブランドは現在、米国市場に焦点を絞っているが、来年早々にはアジアにローンチし、ヨーロッパでの存在感を高める予定である。
[原文:Luxury Briefing: ‘Niche luxury’ the new ‘quiet luxury’]
JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)