創業21年となるファッションジュエリーブランド、ケンドラスコット(Kendra Scott)のCEO、トム・ノーラン氏は、7月12日に配信されるGlossyポッドキャストのエピソードを収録している際に、同ブランドの新しいラグジュアリー戦略について語った。2016年以降、ケンドラスコットは婚約指輪や時計などを含むデミファインジュエリーやファインジュエリーをローンチしてきた。ノーラン氏はこれらのカテゴリーは「大成功」だと言う。
「ダイヤモンドのイヤリングの販売だろうがファッションジュエリーの販売だろうが、当社の価値提案は変わらないし、人々は自分の金で多くを手に入れたいと思っている」とノーラン氏は述べた。「それが不安定な経済状況を切り抜けるのに役に立っている」。
昨年の第4四半期、ノーラン氏とチームはファインジュエリーを身につけるのが大好きな人々が、品質はそのままに価格帯を下げたケンドラスコットの製品に「トレードダウン」していることを知った。「景気がよかったころは、(こうした買い物客は)ティファニー(Tiffany & Co.)やデヴィッド・ヤーマン(David Yurman)など、もっとハイエンドなブランドや超高級と思われるブランドなどに手を広げていた。だがその後、そのような非常に高い価格帯で消費することに抵抗を感じるようになった。そこで当社が新たな顧客を惹きつけることができた」。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
創業21年となるファッションジュエリーブランド、ケンドラスコット(Kendra Scott)のCEO、トム・ノーラン氏は、7月12日に配信されるGlossyポッドキャストのエピソードを収録している際に、同ブランドの新しいラグジュアリー戦略について語った。2016年以降、ケンドラスコットは婚約指輪や時計などを含むデミファインジュエリーやファインジュエリーをローンチしてきた。ノーラン氏はこれらのカテゴリーは「大成功」だと言う。
「ダイヤモンドのイヤリングの販売だろうがファッションジュエリーの販売だろうが、当社の価値提案は変わらないし、人々は自分の金で多くを手に入れたいと思っている」とノーラン氏は述べた。「それが不安定な経済状況を切り抜けるのに役に立っている」。
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昨年の第4四半期、ノーラン氏とチームはファインジュエリーを身につけるのが大好きな人々が、品質はそのままに価格帯を下げたケンドラスコットの製品に「トレードダウン」していることを知った。「景気がよかったころは、(こうした買い物客は)ティファニー(Tiffany & Co.)やデヴィッド・ヤーマン(David Yurman)など、もっとハイエンドなブランドや超高級と思われるブランドなどに手を広げていた。だが、その後、そのような非常に高い価格帯で消費することに抵抗を感じるようになった。そこで当社が新たな顧客を惹きつけることができた」。
ラグジュアリー消費者はブランド名は譲歩しても品質は下げない
ラグジュアリー消費者が現在どのように消費しているかについては、さまざまな真意がある。しかし、最近のデータや専門家のインサイト、最近の顧客行動に関するインサイダーレポートなどによると、ラグジュアリー消費者も消費力の低い消費者と大差ないというのが、はっきりと伝わってくる。ラグジュアリー消費者はこれまでと同じように買い物をするが、購入に関しては以前よりも思慮深くなっている。だが、特に富裕層の買い物客にとって、それは支出を切り詰めることと同義ではない。
2月下旬、コンサルティング会社カーニー(Kearney)の社内シンクタンク、カーニー・コンシューマー・インスティテュート(Kearney Consumer Institute)は、インフレが消費者の買い物の意思決定に与える影響に関するレポートを発表した。調査対象者のうち64%が、物価が上昇しているにもかかわらず、過去半年に購入した商品やサービスを変更しなかったと回答した。だが、資金の振り分けを変更することはあった。69%が別のカテゴリーでの支出を増やすために、あるカテゴリーでの支出を減らしたと回答している。また、こうした買い物の「トレードオフ」を「格下げ」とみなしている回答者はわずか34%だった。
一例としてこのようなトレードオフの買い物客は、より入手しやすい価格のブランドから購入している。たとえば、ケンドラスコットのパールのブレスレットは650ドル(約9万3890円)だが、ティファニーのものは1350ドル(約19万5000円)だ。しかしラグジュアリー購入者はブランド名は譲歩しても、品質は犠牲にしたくないと考えることが多いと、カーニー・コンシューマー・インスティテュートの責任者で消費者支出レポートの著者であるケイティ・トーマス氏は述べている。重要なのは「適正な」ものに支出することだ。
出費を調整する買い物客
シャネル(Chanel)やエルメス(Hermès)をはじめとするブランドは、最近になって大幅な値上げを行い、多くの買い物客にとってラグジュアリーは手が届かないものとなっている。だが、最近では「静かなラグジュアリー」の台頭により、ロゴ入りのハイヒールやハンドバッグ以外にもラグジュアリーのルックを実現するための選択肢が広がっている。ラグジュアリーブランドは価格を正当化するために、これまでのように上質な職人技と高水準のサービスの優先が重要になっている。
ラグジュアリーの再販もまた、かつてプライマリーマーケットで購入していた人々が、中古のスタイルにトレードダウンしているために盛況だと報じられている。さらに、買い物客は自分がもっとも価値を置くものを手に入れるために出費を調整しており、現在は旅行などの体験が優先されている。
「買い物客はウォルマート(Walmart)で買い物をするので、日々の生活でもっとも支出に見合う価値を得ながら、贅沢をすることもできる。」とトーマス氏は言う。彼女はまた、ディスカウントストアのダラー・ゼネラル(Dollar General)の最近の成長と、もっとも急成長している顧客層が高所得の買い物客であることを指摘した。
eコマースやグーグル検索に基づくショッピングの台頭は、価格帯を問わず多くの選択肢を提供し、この転換を支えている。また、製品カテゴリーを超えて競争が激化していることでも同じことがいえる。インフルエンサーも、魅力的で価格競争力のある製品を市場に送り出す元祖である。価格帯を超えて消費者を獲得するために、消費者が買い物を意識している流通チャネルでの高い認知度を確保することに、多くのブランドが取り組んでいる。
人気の旅行先をベースに展開するラグジュアリー小売
マッキンゼー(McKinsey)がまとめたデータによると、2023年4月は、すべての年齢層と所得層で2年ぶりに前年比で支出が減少した。同月にGlossyとサックス(Saks)が行ったラグジュアリー購入者を対象とした調査では、30%の人が2023年は2022年にくらべて支出が減ると答えている。また24%が、今後1年はその前の1年間と比較して支出を減らす予定だと答えた。回答者の65%が今後1年間は旅行にもっともお金を使う予定だとしている。
創業6年のラグジュアリー小売店ウィート(Wheat)の創業者モリー・シャヒーン氏とフー・コリンズ氏は、人気の旅行先をベースに自己資金でのビジネスを展開している。5月にファラウェイ・ナンタケット(Faraway Nantucket)に店舗をオープンしたことに続き、7月1日には、ファラウェイ・マーサズ・ヴィンヤード(Faraway Martha’s Vineyard)にコーヒーショップ併設の店舗をオープンする。今年中にはニューハンプシャー州ドーバーに17店舗目、2024年春にはボストン地域に18店舗目がオープンする予定だ。ウィートの店舗は主にホテル内にあり、フォーシーズンズ(Four Seasons)やリッツ・カールトン(Ritz-Carlton)にも出店している。
コリンズ氏によると、ホテルグループやオーナーの需要によって実際に来店する客が牽引され、ウィートのビジネスは昨年20〜30%成長した。「ホテルのアメニティと小売りの間には大きな落差があり、ホテル内の店舗はすべてハドソン・ニュース(Hudson News、空港などで新聞を販売している店舗)のようなものだった」とコリンズ氏は言う。ウィートは、ジマーマン(Zimmermann)、トムフォードアイウェア(Tom Ford Eyewear)、アウグスティヌスバデール(Augustinus Bader)などのライフスタイル商品を販売している。
「ラグジュアリーなホスピタリティ分野は、大きな景気変動の影響を受けにくいと考えていた」とコリンズ氏は述べたが、パンデミックのなかでそうではないと証明されたと指摘した。「我々は理想的な心理状態にいる消費者をつかまえている。つまり、もっとも出費をするラグジュアリーなデスティネーションにいる消費者だ」。
ウィートが拡大し、旅行が軌道に乗るにつれ、ブランドはウィートでの販売にますます意欲的になっている。「消費者を取り込む新しい方法だ」とコリンズ氏は述べた。
トレードダウンへの言及が記録的なレベルにまで急増
だが、トーマス氏は、10月の学生ローン返済再開が旅行ブームに悪影響を及ぼすだろうと予測した。休暇を取り戻す人々の高い需要に基づき、たとえばホテルや航空券の価格が上昇している。また、3年後には、多くの消費者が毎月数百ドルを支払うことになる。消費者ブランドにそれがどのように影響するかは不透明だという。
「商品(に対する支払い)にはメリットがあると立証されるかもしれない。なぜなら『3000ドル(約43万円)のバケーションに行く代わりに、1000ドル(約14万円)の贅沢をしよう』と消費者が考えるかもしれないからだ。あるいは、高額な商品の買い物は完全に控えるかもしれない」。
もちろん、このような支出の変動は、通常の購買層よりも贅沢な買い物をする客層によく見られることだ。
コリンズ氏によると、ウィートのプライベートブランドのアパレルは、98ドル(約1万4000円)のVネックTシャツのような「手に取りやすい価格帯のラグジュアリーな必需品」で構成されており、店舗でもオンラインでも「信じられない」勢いで売れているという。同社はそれに追いつくため、この手のスタイルの生産を増やした。カーニーの消費者レポートによると、ブランド品ではなくストアブランドの商品の購入をダウングレードだと考える人は、調査対象者のわずか34%だ。その対極では、500ドル(約7万2000円)から1万1000ドル(約159万円)で販売されるジェニファー・メイヤー(Jennifer Meyer)のスタイルなど、ファインジュエリーの売上がウィートでは伸びている。
「トレードダウンするかトレードアップするかのどちらかであり、その中間が引き締められているのを目にしている」とコリンズ氏は述べた。これは同社のもっとも好調な店舗にも反映されており、アンギラとラナイ島にあるフォーシーズンズを含む一流リゾートの売上がもっとも高い。売上が減少しているのは、メイン州ヨークにある店舗だ。
バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)の金融アナリストは11月、当時のテック企業のレイオフを引き合いに出し、「企業は、高所得の消費者がより安価な商品やサービスを求めてトレードダウンしているとみている」と述べた。「決算説明会では、『トレードダウン』に関する言及が(世界金融危機の)レベルを超えて記録的なレベルにまで急増している」。
消費者物価指数のインフレ率は、2022年6月に40年ぶりの高水準となる9.1%を記録したが、過去1年間は着実に低下している。一方、金利は5%を超え、いまだに上昇している。
[原文:Luxury Briefing: How luxury shoppers are trading down in the challenging economy]
JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)