ルルレモン (Lululemon)がミラー(Mirror)を5億ドル(約570億円)で買収してから18カ月が経過したが、コネクテッドフィットネスのブランドである同社は業務拡大に苦闘している。ルルレモンの最新の四半期決算発表によれば、ミラーの売上は2021年ルルレモンの総収益のうち3%に満たない。
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ルルレモン(Lululemon)がミラー(Mirror)を5億ドル(約570億円)で買収してから18カ月が経過した。だが、コネクテッドフィットネスのブランドである同社は業務拡大に苦闘している。ルルレモンの最新の四半期決算発表によれば、ミラーの売上は、2021年ルルレモンの総収益のうち3%に満たないという。さらに、ルルレモンはミラーの収益見通しを半分に引き下げている。
ミラーの業績低迷を除けば、ルルレモン自体の成長は続いている。2021年の第3四半期に同社は14億5000万ドル(約1653億円)の収益を記録し、これは昨年同時と比較して30%の大幅増だ。小売業者である同社は、この収益増大の原因は、ワクチン導入で店舗への客足が回復したためとしている。同社の今四半期の所得は1億8780万ドル(約214億円)だった。
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デジタルフィットネスにとって困難な年だった
しかしなお、ルルレモンの決算発表はコネクテッドフィットネスがいかに困難な分野になったかを示している。ワクチンが導入されて以来、多くの人々が対面のジムに戻ったのか、自宅用フィットネス機器をそれほど多く使わなくなった。デジタルフィットネス企業は顧客の獲得が難しくなったと感じており、結果的に各社は今後の収益予測を引き下げることになった。実際のところ、パンデミックによる最初の売上増加を維持するために苦闘している家庭用運動器具メーカーはミラーだけではない。11月にはペロトン(Peloton)も収益目標を達成できず、3億7600万ドル(約429億円)の純損失を計上した。
ルルレモンは現在、会計年度2021年におけるミラーの売上が1億2500万ドル(約143億円)から1億3000万ドル(約148億円)になると推定しており、以前の予測値である2億5000万ドル(約285億円)から2億7500万ドル(約314億円)より大幅に引き下げられている。この減少は、同社の機器と定期的なサブスクリプションが2020年に1億7000万ドル(約194億円)を売り上げたあとのものだ。
ルルレモンのCEOを務めるカルバン・マクドナルド氏は、12月9日の決算発表で次のように述べている。「ご承知のように、2021年はデジタルフィットネスにとって困難な年だった。当社が目にした圧力の増大は、業界全体に影響を及ぼしていた」。
クレディ・スイス(Credit Suisse)でアナリストを務めるマイケル・ビネッティ氏は、サイバーマンデーまでにミラーが行った大量のプロモーション、最大30%の割引が問題のある部分だったと、調査ノートで警告した。「ルルレモンはミラーの繰越価値を低く調整することを余儀なくされるリスクがある」と同氏は記している。
それでもなお成長が期待される市場
成長率が低迷しているにもかかわらず、ルルレモンは依然として同社ビジネスのミラーの部分を成長させ、ペロトンやトーナル(Tonal)などの新設企業と競合できる機会を見いだしている。決算発表においてマクドナルド氏は、ミラーのビジネスを長期的に成長させるため同社が注力すると繰り返し述べ、特に店舗内ストアの形式を重視すると語った。しかし、両社がサービスの統合を試みる過程で、社内の緊張が高まっているという報告も存在する。
仮想フィットネスブランドが、アメリカ人を従来型のジムやワークアウトスタジオから引き寄せ続けることによって、ミラーはゆっくりながら着実に成長していく可能性がある。競争が激しい分野ではあるが、フィットネスのパートナーシップに賭ける小売ブランドは増えている。8月にはギャップ(Gap)の所有するアスレタ(Athleta)が、仮想フィットネスの新設企業のオーベ(Obé)と、エクササイズおよびライフサイクルコンテンツについて提携したあとで同社への投資を開始した。
この秋のランリピート(RunRepeat)調査レポートでは、2021年末にはオンラインフィットネスが、パンデミック前の2019年やそれ以前と比較して66.32%成長すると予測されている。コネクテッドフィットネスの部門は2021年から2028年にかけて年ごとに33.10%の成長率が予測されている。
ランリピートでフィットネス調査ディレクターを務めるニック・リゾ氏は、数十年にわたり「ジム業界はフィットネス業界の主要な柱であり続けた」と調査レポートに記している。しかし、この2年間にオンデマンドやライブストリーミングのワークアウトが出現し、ミラーやペロトンのようなデバイスとトラッカーが利用可能になり、消費者がそれらの利便性に慣れたことは、これらの業界に影響を与え続けるだろう。その継続的な不安定性にもかかわらず、「オンラインおよびデジタルフィットネス業界は、フィットネス業界でもっとも急速に成長している部門だ」とリゾ氏は述べている。
シナジーを最大限に引き出す
同時に、ルルレモンはワークアウト用アパレルに関して、新しい競合他社よりも優勢である。ルルレモンは現在、自社のデザインを新しいプライベートラベルラインに盗用した件で、過去にブランドコラボレーションしていたペロトンを提訴している。シミラーウェブ(Similarweb)のトラッキングによると、ペロトンが自社の商品ラインを9月9日に発売して以来、同社の9月と10月のアパレルサイトのトラフィックは前年比でそれぞれ0.8%と2.6%低下した。同じ期間に、ルルレモンのeコマースの訪問者はそれぞれ6.7%と2.9%増加した。
仮想フィットネスの野心を持つルルレモンにとって、ミラーが依然として重要な役割を持っていることは変わらない。マクドナルド氏は昨年、ミラーがルルレモンを補完するブランドであると述べ、今年には利益を上げられるようになるだろうと予測した。同氏は、2つのブランドの顧客ベースが重複していることと、コラボレーションの可能性を、売上の原動力として指摘している。
マクドナルド氏は次のように述べている。「我々がこの分野にもたらす独自の利点のひとつは、ミラーのブランドへの認知をさまざまな方法で築き上げられることだ。これらのシナジーを引き出すことで、運動を習慣にしている1000万人を超えるルルレモンの顧客と関わるための明確な道筋が得られる」。
[原文:Lululemon’s Mirror struggles among crowded connected fitness space]
著者:Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Mirror