ブランド各社がAmazonの広告ビジネスに引き寄せられる動きが見られるなか、化粧品大手のロレアル(L’Oreal)も、急速に拡大するAmazonの検索ビジネスに注目している。Amazonがインターネットショッピングの入り口として台頭しているのに乗じる動きだ。
ブランド各社がAmazonの広告ビジネスに引き寄せられる動きが見られるなか、化粧品大手のロレアル(L’Oreal)も、急速に拡大するAmazonの検索ビジネスに注目している。Amazonがインターネットショッピングの入り口として台頭しているのに乗じる動きだ。
検索の起点となるAmazon
英国ロレアルのデジタルディレクター、ニック・バックリー氏によると、美容に関する検索は全体の38%がAmazonからはじまる。ただ、ロレアルが求めているのは、検索クエリにおけるこの変化を、売上促進の手段として見るというよりは、顧客トレンドを割り出すなど、Amazonをさらに豊かな着想の源として利用することだ。そのため英国ロレアルは、Amazonに投入する検索予算を増やしている。
英国ロレアルの検索予算全体に占めるAmazonの割合は、まだ1桁だ。しかし検索量は増えており、「検索量とともに販売額も増加するため、検索予算も増えると予想している」と、バックリー氏は述べる。ロレアルの化粧品ブランドが特に焦点を当てている美容用語と検索については「プラットフォーム上の全インベントリー(在庫)を買い上げている」とのことだ。「(スキンケアや高級品などの)ほかの分野でもキーワードを買いはじめているので、おのずと規模は大きくなる」。
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理由は、ロレアル製品をオンラインで検索する場合、Amazonを起点にする人が増えているからだ。ただ、Amazonが起点になるからといって、最終的にAmazonから購入するとは限らない、とバックリー氏は指摘する。むしろ、さらにさまざまなプラットフォームやほかの小売業者などで製品を調査・比較する買い物客が多いという。
「まずはAmazonに行って製品に関する情報を見て、それからすぐにYouTubeに出ていく。YouTubeでは製品の使い方が見られるからだ」と、バックリー氏。「それからGoogleに移動して、その製品をほかの製品と比較する。(Amazonは)eコマースプラットフォームだが、それだけに留まらないと私たちは考えている」。
「友人かつ敵」という存在
ロレアルから見てAmazonが魅力的なのは、ひとつには音声アシスタント、Alexa(アレクサ)による音声検索が理由だ。ロレアルは、今後1年半の検索全体の5分の1は音声検索になると予測している。バックリー氏率いるチームは、大きなサービスを計画しているわけではないが、AppleのSiriやAlexaなどに注目している。
「Alexaが我々にとって実に興味深いのは、検索環境全体が根本的に変わる大きなチャンスだからだ」と、バックリー氏は語る。「それにどう対応するかに関して、いまは多くの時間を使っている。まだすべての答えは出ていないが、調査を続けていく」。
ロレアルによる今後のAmazonへの投資に関しては、広告の割合が現在増えているのは確かだが、コマースもまだ役割は大きいだろう。Amazonの販売側とロレアルの関係は、ナイキなどほかの企業と同様に、「友人かつ敵(フレネミー:frenemy)」というものであり、そのためロレアルの動きは慎重になっている。ロレアルのCEO、ジャン=ポール・アゴン氏が先日の収支報告で、Amazonが化粧品に進出するという噂についてコメントを拒否したのは、ロレアルがAmazonを不安視していることを示唆している。
ロレアルによると、2017年前半、同社のeコマース売上は29.5%増加し、全売上の7%になった。とはいえ、ロレアルが総売上の20%をeコマースにすることを目指していることを考えると、最終的にライバルになる可能性がある小売業者と密接に協力するのは、目的があるとはいえ危険な道だ。
とはいえ、Amazonに「ショップ」を構えれば、ロレアルのプレゼンスは拡大する。Amazonでの直接販売に抵抗するよりもはるかに早く売上目標が達成される、とロレアルは考えているようだ。ロレアルは2016年の年末シーズンに、「メン・エキスパート」シリーズを販売するオンラインストアをAmazonに開設した。これから数カ月でほかのシリーズも開始し、これまでの勢いをさらに加速させることを計画している。
Seb Joseph (原文 / 訳:ガリレオ)