ミュージシャンのリゾ(Lizzo)との提携を発表したダヴ(Dove)だが、その発表は世界中がジョージ・フロイド氏の殺害に関する、デレク・ショーヴィン裁判の結果を待っている最中に行われることになった。もちろん、発表のタイミングがこのような深刻なニュースと重なるとは、ダヴも予想できたはずはない。
ミュージシャンのLizzo(リゾ)との提携を発表したダヴ(Dove)だが、その発表は世界中がジョージ・フロイド氏の殺害に関する、デレク・ショーヴィン裁判の結果を待っている最中に行われることになった。もちろん、発表のタイミングがこのような深刻なニュースと重なるとは、ダヴも予想できたはずはない。現代社会においては、黒人にまつわる喜びのニュースがあっても、黒人(に対する差別や悲劇に対する)哀悼の大きさが、それを覆い圧倒してしまうことが非常に多い。デレク・ショーヴィン裁判の判決ニュースもまた、本来はポジティブな発表であったダヴとLizzoの提携のうえに、そのような影を落としていた。
米国時間の2021年4月20日の午後、Lizzoはダヴとライブストリームイベントを行い、2004年にダヴがスタートした自己肯定感プロジェクト(Self Esteem Project)への参加について話した。プレス、ソーシャルメディアへの投稿、その他各種出演を含むこのパートナーシップを通じて、Lizzoとダヴは「ソーシャルメディアを次の世代のための、よりポジティブで力を与える(エンパワーメントを与える)場所に変える」ことを望んでいるとブランドは伝えた。
しかし、同イベントの司会者であり、同プロジェクトに教育者として参加する有名メークアップ・アーティスト、ドレー・ブラウン氏は、会話をはじめる前、(デレク・ショーヴィン裁判のニュースが)重くのしかかっている空気があることに言及した。これに回答する形で、Lizzoは「私は長いあいだミネアポリスに住んでいた。いまこの瞬間にも、たくさんの愛する人が(ミネアポリスに)いる。私の鼓動は高まっている。同じように感じている人たちは、是非一緒に癒しの深呼吸をして欲しい」と述べ、息を深く吸い込んだ。「私自身も、それが本当に必要だと思っているから」。
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ブラウン氏は続けて以下のように述べ、次のトピックへと移った。「黒人の喜び、黒人の祝福は重要だ。私自身を祝福すること、私が黒人であること、私の身体を祝福すること、そして変化をもたらすポジティブな会話をすること、それが今私がやりたいことだ」。
発表イベントの中身
ダヴとLizzoのパートナーシップは、親とその子供たちに対し、「セルフィー・トーク(selfie talk:セルフィーについての対話)」の機会を提供することを、目的の中心に据えた。親と子どもが、ソーシャルメディアをいかに心の健康に悪影響を与えない形で使用するかについて、会話する機会を提供しようとしたのだ。
また、同イベントでLizzoは、自身のボディ・ポジティブにたどり着いた経緯、より健康的なソーシャルメディアの実践、そして名声を持つことについて語った。「私がこの身体で生き続け、この身体で生き延び、幸せになって人生を楽しむのであれば、私自身を好きになる方法を見つける必要がある」とLizzoは語る。「私は長いあいだボディ・ネガティブだった。だが、現在私はそのボディ・ポジティブという、真逆のスタンスをとっている。ボディ・ポジティブは、現状の悩みを打破してくれる」。
イベントが開催された日の早い時間帯、Lizzoはインスタグラムに自身の編集されていないヌード写真を投稿し、パートナーシップを発表した。キャプションでは「私は@doveや#DoveSelfEsteemProjectとのパートナーシップにワクワクしている。このプロジェクトは、ソーシャルメディアが及ぼす悪影響をなくす一助になり得るし、美のスタンダードをめぐる会話の中身を変えていくだろう。皆、真剣になりましょう」と書いた。
ちなみに、Lizzoはインスタグラムに1020万人、TikTokに1470万人のフォロワーを抱えている。今回の提携以前のLizzoと美容ブランドとのパートナーシップには、2019年にローンチされたアーバンディケイ(Urban Decay)のプリティ・ディファレント(Pretty Different)キャンペーンなどがある。
「何か非常に危険なものがある」
また、今回の自己肯定感プロジェクトで実施された調査によると、80%の少女が、13歳までに自分の写真を編集してソーシャルメディアにアップロードしたことがあるという。
「恐ろしいことに、12歳か13歳の私も、同じような感覚を抱いていた」と現在34歳になったLizzoは過去を振り返る。「目が覚めて、誰かほかの人になりたいと思ったことを覚えている。体を変え、色を変え、髪質を変え、身体の形を変え、肌の色を変えたかった。しかし、写真の修正方法は存在しなかったし、フィルターなどはなかった。だが、いまでは少女たちの不安につけ込んで稼ごうとするツールがあると考えると恐ろしい。それは単に、収益を生むだけでなく、子供たちの不安をより大きくしてしまう。見た目に関する不安という怪物に、餌を与えているのだ」。
あらゆる年齢層の人々が、非現実的な方法で自分を「改善」しようとする、終わりなきサイクルに、ますます囚われるようになっているとLizzoは述べる。「そこには、何か非常に危険なものがある」。
[原文:Lizzo partners with Dove to ‘transform social media’]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:塚本 紺、編集:村上莞)