ライブストリームショッピングの普及が、ファッションや美容関連の小売業者のあいだで急速に拡大している。キュレーション型オンライン小売業ヴェリショップ(Verishop)は、ライブストリームショッピングを自社で導入し、モバイルアプリにその機能を追加した。このライブ人気を継続していく施策とは?
ライブストリームショッピングの普及が、ファッションや美容関連の小売業者のあいだで急速に拡大している。
キュレーション型オンライン小売業であるヴェリショップ(Verishop)は、6月14日月曜日、ライブストリームショッピングを自社で導入し、モバイルアプリにその機能を追加した。このアプリ上で、ガブリエル・ザモーラなど有名なインフルエンサー44人がライブストリームのホストをつとめた。
買い物客が下のメニューバーに表示される「ライブ」オプションをクリックすれば、現在および今後のライブストリームを見ることができる。プレゼンターが商品の説明をすると画面上に購入用のリンクが表示される。そこをクリックすればチェックアウトページが開くが、ライブストリームは画面のコーナーでそのまま再生され続ける。また、ライブストリームで紹介されたアイテムの全リストには、ライブストリーム中でも、またそのあとでも好きなときにアクセスすることが可能だ。
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「ライブストリーミングで一番大きなことは、お客様が何かを見つける手助けができることだ」と話すのは、ヴェリショップのCEOイムラン・カーン氏だ。「たいていの場合、人は自分が何を探しているのか、具体的にわかっていないが、なんとなくイメージは持っている。ファッションやビューティの商品を探しているとき、消費者がその商品について学んだり、実際の世界で得られる体験をするためにライブストリーミングはすばらしい方法だ」。
ヘアケアブランドのR+Coは、ヴェリショップのライブストリーミングプラットフォームを使って、スタイリストや自社チームの専門家らを起用した商品のデモンストレーションを行う予定だ。R+Coの社長ダン・ランガー氏は、「我々は新しさを発見し、学ぶための方法のひとつとしてライブストリーミングを活用する。またブランドのライブストリーミング戦略が定期的な番組に発展する可能性に期待している」と語る。
動画がすべて。ライブであることが生活の一部
サイトやアプリを使ったライブストリーミングの活用が、Amazonやウルタ・ビューティ(Ulta Beauty)など大手eコマースや小売業者のあいだで増加しているが、セフォラ(Sephora)のようにインスタグラムやFacebookといったソーシャルプラットフォームが提供しているライブショッピング機能に頼っている小売業者もある。
ラグジュアリーな分野では、小売専業のネッタポルテ(Net-a-Porter)がインスタグラムでライブショッピングの配信を行い、一方、モーダ・オペランディ(Moda Operandi)は自社のウェブサイトでライブストリームをホストしている。
今年初めにファッションとビューティのオンライン小売業者ティアレ・ローズ(Tiare Rose)がローンチしたとき、創業者は自社サイトにはライブストリーミングによるショッピング機能を必ず組み込むと考えていた。
「現代的な小売店の姿を思い描いたとき、当然ライブストリーミングもそのなかに入っていた」と、ティアレ・ローズ創業者のキム・カステラーノ氏は言う。「いまでは動画がすべてだし、ライブであることは生活のごく一部なのだ」。同ブランドは、アイダホ州を拠点とする実店舗から週に2度ライブストリームを配信、スタッフやインフルエンサーによる洋服や美容のアドバイスを行っている。
一方、ヴェリショップのモデルはインフルエンサーであるホストに重点を置く。インフルエンサーはアプリ上の自分のアカウントからライブ配信を行い、商品が売れた場合には、その収益の一部(非公開)を受け取ることができる、とカーン氏は説明している。
娯楽と教育を兼ね備えたコンテンツ
小売業のスタートアップのあいだでは、ソーシャルメディアとeコマースの境界がますます曖昧になりつつあるが、それぞれの企業は独自の体験の必要性を理解している。ヴェリショップでは、新しいライブストリーミング機能に加えて、インスタグラムのような写真フィードや、友人と一緒に閲覧できる「ショップパーティ(Shop Party)」機能も備えている。カーン氏によると、現在、ヴェリショップの売上の10%は、ソーシャルコンテンツによってもたらされたものだという。
「ショッパーテインメントと私は呼んでいる。コンテンツにはエンターテインメントな要素と教育的な要素が必要で、インスピレーションを与えるものでなくてはならない」とカーン氏は話す。販売促進におけるソーシャルコンテンツの役割に不可欠なのは、カーン氏いわく、「コンテンツの民主化とインスピレーションの民主化。2、3人の人がどのように見るべきかをあなたに教えてくれる世界から、我々は移行しつつある」。
高級感を演出するキュレーションの重要性
カステラーノ氏にとって、ティアレ・ローズのライブストリームではオンライン小売業者の高尚な側面を維持することも重要だ。「いかにも商品販売しているようにみせたくないので、絶妙なバランスをキープするようにしている。高級感を保ちつつ、商品の価値や情報を与えてコメントを誘いたい」。
高級感のあるブランドイメージを維持するには、「キュレーションがとても重要」と彼女は言う。オンラインショッピングのグリッドシステムから膨大な種類のアイテムをより分けるための「時間も余裕もないので、みんな大規模なプラットフォームではうんざりしている。だから誰かに、ほら、これすごいよ、サステナブルだし、あなたにきっと似合う。これがあなたのために選んだものですよ、と言われたいのだ」。
米国の小売業者におけるライブストリーミングの導入は、パンデミックの影響によって加速したが、多くの地域で規制が解除された現在もその人気は衰えないだろうと予想されている。店舗へ復帰したカステラーノ氏も同じ考えだ。キュレーションや情報への要望から「ライブストリーミングは引き続き重要な役割を果たすだろう。楽しめるものでないとだめ。買ってもらえないかもしれなくても、人々はエンターテインメントとして利用するはずだ」。
[原文:Livestream shopping goes upscale with pure-play e-tailers]
LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)