他メディア同様、ポッドキャスト業界も有料サービスへ(とはいえ、込み入った課題も…)

今後数年間で、ポッドキャストには大きな消費者収益の流れが追加されそうだ。ここで問題となるのは、個々のクリエーターやスタジオよりも、オーディオ・プラットフォームがすべての儲けを持っていってしまうかどうか、だ。

4月23日、ベンチャーから支援を受けるポッドキャスト・アプリ、ルミナリー(Luminary)が公にローンチされた。ルミナリーでは限定の広告無しのコンテンツが1000時間以上、サブスクライバーに提供される。サブスクリプション費用は月額7.99ドル(約880円)だ。ワンダリー(Wondery)やザ・リンガー(The Ringer)といったポッドキャスト・ネットワークからの新番組がコンテンツに含まれる。ポッドキャストは自分の好きなコンテンツを見つけるのが難しいのが問題だが、それを解決するために、上記のコンテンツに加えて広告付きの番組も混ぜて、オススメを推奨してくれるアプリとなっている。

ルミナリーは2018年春以降、2回のラウンドでベンチャー・キャピタルから1億ドル(約110億円)を調達した。ステッチャー・プレミアム(Stitcher Premium)に並んで、ポッドキャストを扱うふたつの大手サブスクリプションサービスとなった。ポッドキャスト・エコシステムの参加者とは敵ではなく友達になることを狙っている。ルミナリーの担当者はオファーを出したクリエーターたち160人のうち54人と関係性を築き上げたという。クリエーターにはガイラズ(Guy Raz)、トレバー・ノア、アダム・デーヴィッドソン、そしてレナ・ダナムたちが名を連ねている。

サブスクへの移行の背景

ポッドキャストを行うクリエーターたちはサブスクリプション収益をビジネスに加えることに長く苦戦してきた。これは限定のオーディオ・コンテンツを配信することには困難がつきまとうからだ。しかしサポーティングキャスト(Supporting Cast)も含めて、さまざまなサービスのローンチが続いたことで2019年はそれが変わる年かもしれない。ほかにも、サブスクリプションにフォーカスを置くパブリッシャーたちも自分たちで状況をコントロールしようとしている。3月にはアスレチック(Athletic)が、独自のポッドキャスト・ネットワークを構築し、アスレチックのモバイル・アプリに搭載したと発表した。

ポッドキャストは現状では主に、広告を中心にしたメディアとなっている。小さな規模からのスタートではあったものの、長年広告マーケットは健全な成長を続けている。IABによると、2020年には収益が6億5900万ドル(約726億円)に達すると予想されている。これはデジタル動画といったフォーマットの金額と比べると四捨五入すれば消えてしまうような金額だ。それでも、リンガー(Ringer)のようなメディア企業のビジネスを持続させるには十分となっている。リンガーは1018年ポットキャストからの収益で1500万ドル(約16億円)を稼いだと報道されている。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のようなサブスクリプションにフォーカスを添えたパブリッシャーですら、ポッドキャスト広告に頼っている。

プラットフォームの数が増え、彼らがコンテンツをまとめて提供したがることによって、クリエーターが消費者とのダイレクトな関係性をスケールするチャンスは制限されるかもしれない。消費者はオーディオ・コンテンツのクリエイターたちにお金を支払うというアイディアには慣れている。パトレオン(Patreon)では、ポッドキャストが2番目に大きなクリエーター・カテゴリーだ。そして、その数は過去3年間で4倍以上に増えた。プレミアム・オーディオコンテンツをまとめて提供するサービスも注目を集めている。ローンチから2年ほど経つスティッチャー・プレミアム(Stitcher Premium)はサブスクリプション登録者数が10万人に達しようとしている。情報源によると、金額は月4.99ドル(約550円)か年間34.99ドル(約3850円)だ。

ユーザーの立場としては

「ポッドキャスト業界がふたつの収益源を持つビジネスへと進化する時が来たと、私は考えている。プレミアム・コンテンツは消費者から直接サポートされる必要があるという意見を述べる声やプラットフォームが増えれば増えるほど良い」と、ワンダリーのCEOであるハーナン・ロペス氏は言う。

しかし、そのような意見が一般的になると、消費者たちはお金を払うのであればひとつの番組ではなく、多くの番組を揃えたライブラリーへのアクセスを期待するようになるかもしれない。クリエイターやパブリッシャーはその環境に対応しなくてはいけなくなるだろう。「(個々のコンテンツへのサブスクリプションもコンテンツのパッケージも)両方が共存することになるだろう。しかし、時間が経つにつれて、パッケージのほうが消費者にとって効率が良いため、頻繁に発生することになるだろう」と、ロペス氏は言う。

アメリカ人の推定70%がポッドキャストというフォーマットを認知している。ついにポッドキャストもメインストリームへと移行したと言えるだろう。しかしエディソン・リサーチ(Edison Research)によると、1週間に1度のペースで聞いているのは、アメリカの12歳以下の人口の4分の1以下だ。

興味津々のプラットフォーマー

とはいえ、大手プラットフォームはポッドキャストへの興味を高めている。今年はじめには、Spotify(スポティファイ)がギムレット・メディア(Gimlet Media)を買収した。ギムレット・メディアは「ホームカミング(Homecoming)」や「スタートアップ(Startup)」といった番組を生み出したポッドキャスト・スタートアップだ。また、アマチュアのクリエーターをターゲットにしたポッドキャスト・ホスト用のサービスであるアンカー(Anchor)の買収も合わせて、金額は3億4000万ドル(約375億円)となっている。昨年秋にはアイハートメディア(iHeartMedia)も、人気ポッドキャスト・プロデューサーであるハウスタッフワークス(HowStuffWorks)の親会社であるスタッフ・メディア(Stuff Media)を買収した。

ハイクオリティなオーディオ・コンテンツを調達するサービスにとってはポッドキャストへの興味が集まっていることは良い知らせだ。直近の四半期収支報告では、独占の番組を14個ライセンス契約を結び、さらに2019年には独占ポッドキャスト・コンテンツへの投資を増やす計画だと、Spotifyは報告している。これは番組ライセンスとその他の買収という形態、両方においてだ。

一方で情報源によると、ベンチャーキャピタルの資金で潤っているルミナリーはクリエーターたちからの懐疑心に直面し、コンテンツに対して過剰な支払いをしていると言われている。匿名を条件に語ってくれた、ある情報提供者によると、ひとつのコンテンツに月、70万ドル(約7710万円)から150万ドル(約1.6億円)を出しているとのことだ。これはルミナリーが持つサブスクリプション獲得のターゲットを達成した場合だ。

「ポッドキャストの良いプロデュースができる側としては、多くの人たちがたくさんのお金を払う準備があるという点はポジティブな面だ。しかしインデペンデントのクリエーターたちが締め出されてしまうという危険がある」と、この人物は語った。

Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)