「 DTC 市場は、過剰資本だ」:ワービーパーカーを見出した投資家 A・ヒプー氏

シードステージとアーリーステージのベンチャーキャピタル、レアラー・ヒプー(Lerer Hippeau)でプリンシパルを務めるアンドレア・ヒプー氏は、DTCブランドが同氏に売り込みをするには、Amazonや卸売の提携企業における販売戦略を説明する必要があると語る。

ヒプー氏は3月21日に行われたDIGIDAY Retail Forum(リテールフォーラム)で、いま「DTC販売を行う」とだけ言われても興味は持てないと指摘し、次のように語った。「DTCは野球でいえば5イニング目にさしかかったところだ。いま重要なのはオムニチャネルだろう。消費者は購入を決定するまでに4つ、5つのプラットフォームで商品を確認する時代だ」。

レアラー・ヒプーはワービーパーカー(Warby Parker)やキャスパー(Casper)といった企業に最初期に投資を行ったベンチャーキャピタルのひとつだ。以前はDTC商品を販売する企業は数百社で、Facebookで宣伝することで比較的安価に大量のカスタマーを獲得できていた。

だがヒプー氏によると現在では、「Facebookやインスタグラム(Instagram)は、カスタマー獲得において、うまみのある場所ではなくなった」と指摘する。代わりにブランド各社は、ピンタレスト(Pinterest)やレディット(Reddit)、クオラ(Quora)といったプラットフォームに力を注ぐべきだという。

米DIGIDAYはヒプー氏に、Amazonで販売する際に完全に影響力を維持するにはどうすれば良いか、そして小売のための適切な提携企業を見つけるためにはどうすべきかを尋ねた。以下のインタビューは内容を明瞭にするため若干の編集を加えている。

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――コンシューマーブランドに対するベンチャーキャピタルの投資がこれまでにない規模になっている。こうした大量の投資を行いつつ、身動きがとれる状態を保つためにどのような取り組みをしているかを教えてほしい

コンシューマーブランド市場では、企業が過剰資本を抱える問題が生じている。とりわけカスタマーの獲得において問題になりがちだ。ソーシャルメディアへの投資でカスタマーを獲得していると、それが持続可能なカスタマー獲得チャネルだと簡単に信じてしまいがちだ。だが、実際のところ、その勘違いで、いとも簡単に競争に敗れる可能性がある。

企業が急速に成長しすぎると、本当に持続可能なチャネルが何か、わからないままになってしまう。ソーシャルメディアに大量に投資できてしまうので、「もしかしたらピンタレストのほうが我々にとって良いプラットフォームかもしれない」とか、「ストアを作るほうが良いかもしれない」といった気づきのチャンスを逃してしまうからだ。

――Amazonにおける賢い戦略とはなんだろうか。ブランド側でAmazonに押し切られることなく影響力を維持しつづけるためにはどうすれば良いか

プレミアム商品を自社サイトで販売すべきだ。我が社のオフィスがあるソーホー地区ではシュプリーム(Supreme)に毎日行列ができている。不思議に思えるがつまるところ、限定品にはそうした魅力があるのだ。このような商品は自社販売すべきだろう。また、ギフトも自社サイトにとどめておくべきだ。Amazonでは中間層の価格帯の商品を増やすと良いかもしれない。つまり素晴らしい商品でありつつも、特別ではない商品だ。

――ブランドからの売り込みがあったときに、Amazonに関して十分な戦略があるかを探るための具体的な質問があれば教えてほしい

アーリーステージでその点を考えている起業家が実に少なくて驚かされる。当社が求めているのはAmazonにおける戦略を考え、Amazon以外のチャネルに移行するための十分な計画を持っているような人間だ。ほかのチャネルで事業を持続可能にするための商品ロードマップを持つべきだ。

――ターゲットやノードストロームをはじめ、大手小売企業と提携するブランドが増えている。実際に販売を開始しても、その効果を持続させるにはどうすれば良いか

ターゲット(Target)やノードストローム(Nordstrom)といった小売企業は良い仕事をしている。キャスパーの枕は、ほかの枕と並べて販売すべきでないことを分かっているし、店舗内で各ブランド独自の体験を提供している。

我々が懸念しているのは、大手小売企業との提携にどれくらい時間がかかるか、どれくらいのスピード感で仕事ができるのかという点だ。たとえばターゲットと提携して店舗に商品が並ぶまでに必要なリソースを考えたときに、そのリソースで自社店舗を2店オープンさせるのとどちらが良いのかは考えるべきだろう。

――ブランドから見て、小売企業が十分な速さで動いてくれるかを早い段階で知る方法はあるだろうか

小規模なブランドはまたとないチャンスを喜ぶあまり、ターゲットに対して「どれくらい時間がかかるか? どのようなプロセスで行うのか?」といった疑問をぶつけるのを躊躇しがちだ。

ほかにも、適切なタイミングでないと思えば、恐れず「ノー」と言うべきだ。  アーリーステージの企業は、「もしここでノーと言ったらもう2度とこんなチャンスは訪れない」と、考えてしまいがちだ。だが、リソースが限られているなかで、力量を超えて「イエス」と答えて悪い結果をまねくより、「ノー」と返答して実際にうまくできると確信が得られてから、その小売企業を再度訪ねるほうが良いと思う。もし本当に優れたブランドや企業を築けていれば、小売企業は今日だろうと、明日だろうと、1年後だろうとまた誘いをかけてくれるだろう。

Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)