130年の歴史を誇るジーンズブランドのリー(Lee)が今年度のデジタル予算を倍増させている。2018年度は全体予算額の4割がデジタル予算だったのに対し、2019年度は8割を占めているという。要因となっているのが、同社が進めるインフルエンサーに関する新たな取り組みだ。
130年の歴史を誇るジーンズブランドのリー(Lee)が今年度のデジタル予算を倍増させている。2018年度は全体予算額の4割がデジタル予算だったのに対し、2019年度は8割を占めているという。
要因となっているのが、同社が進めるインフルエンサーに関する新たな取り組みだ。リーはインフルエンサーを、オンラインだけでなく印刷媒体でもブランドアンバサダーとして全面に押し出している。
リーとコントー・ブランド(Kontoor Brands)のシニアブランドマネージャーを務めるヘザー・キャルドウェル氏は「当社は新たな取り組みとしてインフルエンサーをソーシャルメディアに限定せず、はるかに広い範囲で活用している」と語る。
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デジタル予算は、ハースト(Hearst)やメレディス(Meredith)、Amazonといったペイドソーシャルのチャネルにおけるデジタル購入に使われる。カンター(Kantar)によると、2018年度のリーのメディアへの支出は1120万ドル(約11.9億円)だった。2017年度の2040万ドル(約21.7億円)から減少していたが、2019年は第1四半期で1530万ドル(約16.3億円)の支出となっている。キャルドウェル氏によると、リーはまだ「変化の途中にある」ため、クリエイティブエージェンシーがなく、現在スターコム(Starcom)が同ブランドのメディアを扱っているという。
インフルエンサーを活用
リーが提携しているインフルエンサーには、ボビー・トーマス氏(NBCの朝番組Todayのスタイルエディター)やケイティー・スタリノ氏(ブログ「The 12ish Style」を執筆)、マーク・バラス氏(音楽家)、アリー・ラブ氏(ラブ・スクアッド[Love Squad]の創設者でありCEO)、ザナ・ロバーツ・ラッシ氏(ミルク・メイクアップ[Milk Makeup]の創設者でありE!のレッドカーペット担当)、ロブ・パネル氏(ラクロスのプロ選手)などが名を連ねる。リーのクリエイティブ担当とエージェンシーのウィリーフォックス(Wilyfoxx)が作成した新たなキャンペーンでは、インフルエンサーらがジーンズの新しいスタイルを披露する。
リーは2017年にインフルエンサーとの提携を開始し、昨年には一部のインフルエンサーと一部商品について戦略的パートナー関係を結んでいる。ビンテージ・モダン製品シリーズの宣伝でインフルエンサーのダイラナ・スアレス氏と提携したのがその一例だ。
「ここ1年半、インフルエンサーとの提携で大きな成功を収めてきた」と、キャルドウェル氏は語る。「いまのマーケティングではインフルエンサーはとても重要な位置を占めており、より大規模に、より上手く活用する方法があるのではないかと考えた」。
残り2割の予算の使い方
こうしてインフルエンサーの活用方法を検討した結果、より積極的かつ全体的な活用を行うという結論に至ったという。「これまではソーシャルメディアで活用してきた。一般的な方法といえるだろう」と、キャルドウェル氏は振り返る。
「だが、今後はソーシャルだけでなく、紙媒体やPR、さまざまな活動やイベントにまで手を広げていく」。
予算の残り2割は紙媒体や店舗内の看板など、従来のマーケティングコストに割り当てられる。マーケティングに紙媒体を残したことについてキャルドウェル氏は「リーにとって紙媒体は非常に大きな価値を持っている」と語る。「リーの買い物客、とりわけ女性客は紙の雑誌を好んで読んでいるおり、紙媒体はリーのマーケティング戦略において常に大きな利益をもたらしてきた」。
「もはや手遅れ」という指摘も
コンサルティング企業メタフォース(Metaforce.co)の共同創設者でブランドコンサルタントのアレン・アダムソン氏は、インフルエンサーだけではリーのブランドを押し上げるには至らないだろうと予測している。「リーを再び主流ブランドとして復活させるには大規模広告キャンペーンだけでは不十分だろう。リーは長年リーバイス(Levi’s)の後塵を拝してきたが、そのリーバイスですら苦戦しているのが、いまの断片化したジーンズ市場だ」。
アダムソン氏はさらに次のように指摘する。「リーは自分たちの立ち位置を示し、ほかのブランドといかに違うかという観点を模索してきた。インフルエンサーはリーの衰退を多少は押し止めるかもしれないが、インフルエンサーをめぐる戦いに勝てる見込みは少ない。いまやあらゆるファッションブランドがインフルエンサーを活用しており、生半可な取り組みでは勝ち抜くのは不可能だ。結局のところ方向性としては正しいものの、リーにそれを推進するだけの力が残されているだろうか? もはや手遅れではないだろうか」。
Kristina Monllos(原文 / 訳:SI Japan)