レディー・ガガのコスメブランド、ハウスラボラトリーズ(Haus Laboratories)が、コンテンツスタジオを開設。当初、レディー・ガガやハウスラボラトリーのチームが、コンテンツやクリエイティブ制作の実験に用いる場として設けられたこのコンテンツスタジオだが、インキュベータープログラムを展開するという。
レディー・ガガが立ち上げたコスメブランド、ハウスラボラトリーズ(Haus Laboratories)が、独自のコンテンツスタジオをロサンゼルスに開設した。
当初は、レディー・ガガやハウスラボラトリーズのチームが、コンテンツやクリエイティブ制作の実験に用いる場として想定されていたこのコンテンツスタジオだが、クリエイティブコミュニティを支援する、インキュベータープログラムを展開するという。ハウスラボラトリーズは、D2Cサイトを2020年10月にオープンし、スウェーデンのフィンテック企業、クラーナ(Klarna)の決済システムを導入するなど、同社と提携。ザ・スタジオ・バイ・クラーナ x ハウスラボラトリーズは、ローカルなハウスラボラトリーズのハブ、そして新進気鋭のクリエイターのための設備として、その役割を担っていく。クリエイター・コレクティブと呼ばれる、クリエイター3名からなるチームは招待制で、半年ごとに入れ替わり、スタジオを使えることに加え、ハウスラボラトリーズのメンターシッププログラムと、クラーナからの1万ドル(約110万円)の支援金を受けることが可能だ。
「ブランドが成長するなかで感じたのは、我々のコミュニティの人たちが来て、ルールにとらわれずに自由に創作できる、愛と自由に満ちた場が大切だということだ」とレディー・ガガは語る。「クリエイターが技に磨きをかけるために必要なツールを提供し、コミュニティのクリエイターの能力を向上させたい」。
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プログラムの中身
インフルエンサーとつながり、社内でソーシャルコンテンツを制作する場として、コンテンツスタジオは立ち上げる試みは一般的になりつつある。たとえばインフルエンサーブランドのモーフィー(Morphe)は、複数の実店舗にスタジオを設け、オールドスパイス(Old Spice)は同ブランド初の理髪店に、スタジオ機能を構えている。ただ、ハウスラボラトリーズはこれらのブランドと異なり、製品の販売経路が同社のD2CサイトとAmazonに限られている。
ハウスラボラトリーズの事業開発責任者、ライアン・カン氏によると、ビジネス、ソーシャルメディア、メークアップアート、クリエイティブディレクションに関するメンターシッププログラムは、必要に応じて(あるいは希望に応じて)クリエイターと提携する形で行われるという。
クリエイター3名で編成されるチームは、半年ごとに入れ替わり、現在候補に挙がっているのはタヴァリス・ジェファーソン氏(@VariJStylez、インスタグラムフォロワー数18万6000人)とハヤ・アビド氏(@Biddy、インスタグラムフォロワー数は3万4600人)。もう1名については未定だ。
クラーナの評価額は欧州ナンバー1
一方、クラーナにとっても、こうした形のパートナーシップを結ぶのははじめてのことだ。同社は今年、米国を最大のマーケットにしようと試みている。ハウスラボラトリーズのような注目を集めるブランド(あるいはレディー・ガガのような人物)とタッグを組むことは、後払いサービスのアプリを使う若い消費者に訴求する上で効果的だ。調査企業のピッチブック(Pitchbook)によると、クラーナは3月に10億ドル(約1100億円)の資金を調達し、企業価値は310億ドル(約3400億円)にもおよび、欧州企業のなかで、いまもっとも評価額の高い企業となっている。
「我々は若者のカルチャーに入り込むことで、これを支援し、発展に貢献したいと考えている」と同社の戦略責任者、ナタリア・ブレジンスキー氏は語る。「ただ単にフィンテックやeコマースの分野でビッグプレーヤーになりたいのではない。世の中のトランスフォーメーションやカルチャー、クリエイティビティの発展を、支えたいと考えている」。
競合との差別化を図る
ハウスラボラトリーズは今後、スタジオをインフルエンサーとの関係構築以外にも活用し、同ブランドがこれまで制作してきたものよりも、「クリエイティブで個性的な」コンテンツ作りを行っていきたいと、CEOのベン・ジョーンズ氏は意気込む。同氏は、クリエイティブディレクションやコンテンツに関する、既存のルールを「放棄する」ことを計画しているというが、詳細は明かさなかった。
課題もある。ハウスラボラトリーズのような、インフルエンサーの美容ブランドの勢いは、今後も続くだろう。しかし一方で、すでに市場は飽和状態にあるという見方もある。今後、こうしたブランドの売上は、それぞれのインフルエンサーについているファンが、どれだけ顧客になってくれるかどうかにかかっている。
「今後我々のブランドが進化していくうえで、ある程度の差別化は必要だ。少なくともコンテンツに関しては、今年の後半に、何らかの形で変化が見られだろう」とジョーンズ氏。「インフルエンサーブランドのソーシャルチャネルを複数見ていればわかることだが、インスタグラムのグリッド投稿など、どこも同じような手法で運営されている。我々は何かを追従するのではなく、イノベーティブでありたい」。
[原文:Lady Gaga’s Haus Labs creates in-house studio and influencer collective]
EMMA SANDLER(翻訳:田崎亮子/編集:村上莞)