ラコステとアディダス、ウィグル人「強制労働」の排除を約束 : サプライチェーンの精査を表明

中国によるウイグル人の拘禁を、世界的ファッション大手のサプライチェーンに関連づける研究報告が続くなか、強制労働に関連づけられた工場との関係を断つようブランドに求める新たなキャンペーンが勢いを増してきた。このキャンペーンは、欧州議会議員のラファエル・グリュックスマン氏が立ち上げたもので、オーストラリア政府が出資するシンクタンク、オーストラリア戦略政策研究所(以下、ASPI)が2020年3月に発表した報告書において、強制労働から直接・間接的に利益を得ていると名指しされた83の企業を対象としている。

それを受けて、ラコステ(Lacoste)は米国時間6月27日、アディダス(Adidas)に続く2番目の企業として、ウイグル人の強制労働に関する新たな報告書において関わりを指摘された「サプライヤーや下請け業者との活動を全面停止することに合意する」と表明した。

ウイグル人は、テュルク系言語を話すムスリムの人々で、主に中国の新疆ウイグル自治区に居住するが、彼らは同自治区で大量に拘禁されており、その数は100万~200万人と推定される。最近では、ウイグル人女性が不妊手術や中絶、避妊を強制されていると報じられており亡命ウイグル人のグループはこのような行為が国際連合の定義するジェノサイド(大量虐殺)に該当すると主張している。

これまでの調査は、新疆で生産された綿と企業との関わりを明らかにするものだったが、今回のASPIの報告書は主に、拘禁されたウイグル人たちが中国各地に移動させられ、これらの主要な多国籍企業のサプライチェーンを構成する工場で働かされているとする内容だ。ASPIの報告書では、Appleやメルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)といった世界有数の大企業のほかに、多数の世界的ファッションブランドの名前が挙がっている。たとえば、ラコステ、アディダス、アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)、カルバン・クライン(Calvin Klein)、カーターズ(Carter’s)、チェルッティ1881(Cerruti 1881)、フィラ(Fila)、ギャップ(Gap)、H&M、ジャック&ジョーンズ(Jack & Jones)、LLビーン(L. L. Bean)、ナイキ(Nike)、ザ・ノース・フェイス(The North Face)、ラルフローレン(Ralph Lauren)、プーマ(Puma)、スケッチャーズ(Skechers)、トミーヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、ユニクロ(UNIQLO)、ヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)、ザラ(ZARA)、エルメネジルドゼニア(Ermenegildo Zegna)などだ。

アディダスの対応

近年、ファッションブランドがアクティビズムに関与することが増えている。特にこの5月に始まったBlack Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター[黒人の命も大切だ])のムーブメントでは、ナイキをはじめとしてブランドが次々と支持を表明した。しかし一方で、中国政府が「自主的」な滞在だと主張する新疆の再教育キャンプについては、ブランドは露骨に沈黙している。2019年のNBAの一件で明らかになったように、各種イシューに関して中国政府のスタンスを支持しない海外ブランドは、中国国内でのビジネス展開でペナルティを受けることが知られている。

「現在、多くの世界的ブランドが、中国の新疆ウイグル自治区でビジネスをするということは、事実上そこで行われている人権侵害を支持するのに等しいと理解して撤退している一方、強制労働の問題は新疆だけにとどまらないことが我々の報告書で明らかになった」と、ASPIのシニアアナリストであるケルシー・マンロー氏は述べている。「中国各地の製造業者は、国家が支援する労働力移転プログラムのもと、多くの場合、強制労働とみられる状況下で、少なくとも数万、おそらくは数十万単位のウイグル人労働者を使っている」。

グリュックスマン氏のインスタグラムによると、同氏はアディダスと接触し、キャンペーンが提示した条件に合意するとの署名入り書簡を6月19日に同社から受け取ったという。ASPIの報告書では、アディダスを含むいくつかの大手ファッションブランドは、安徽省にあるHuafu Top Dyed Melange Yarn Co. Ltd.(華孚色紡/華孚時尚有限公司)の以前からの顧客であり、そこには2017年4月から2018年6月のあいだにウイグル人労働者が移されてきたとされている。グリュックスマン氏にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

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アディダスの広報担当者は、米DIGIDAYの姉妹サイトであるグロッシー(Glossy)に対してメールで次のように述べている。「アディダスの労働環境基準は、いかなる強制労働および囚人労働も厳しく禁じており、この基準は当社サプライチェーンのすべての企業に適用される」。また先ごろウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)の調査記事において、多くの多国籍ブランドが新疆で生産された綿をサプライチェーンに組み込んでいると報じられた件について、アディダスは「新疆で生産された綿糸を調達しないようサプライヤーに明確に指示している」という。ASPIの報告書には、アディダスとアバクロンビー&フィッチはすでに華孚をサプライヤーから外したと記されている。ほかに華孚の長期顧客として名が挙がっているのは、ラコステ、プーマ、ザラ、H&M、ヴィクトリアズ・シークレットだ。

ラコステやナイキの対応

ラコステのサプライヤーとしては、ほかにもYoungor Textile Holdings Co. Ltd.(雅戈爾色紡科技公司)の名前が挙がっている。同サプライヤーもまたウイグル人の移転労働者を安徽省の工場に受け入れ、新疆に子会社と工場を所有すると報告書には記されている。報告書によると「新疆にある雅戈爾の関連企業は、カルバン・クライン、ギャップ、ジャック&ジョーンズ、ラコステ、LLビーン、マークス&スペンサー(Marks & Spencer)、ポロラルフローレン、トミーヒルフィガー、ユニクロに納入していると述べて」おり、また雅戈爾の親会社の公式サイトには、チェルッティ1881およびゼニアとパートナーシップを結んでいると記されている。

グリュックスマン氏のキャンペーンの発表によると、ラコステは、ウイグル人強制労働者の使用に関わったサプライヤーや下請け業者との活動を全面停止し、一連の取り組みをすべて公表し、同社の中国における製造網全体にデューディリジェンスを実施する意向だという。この件に関してラコステにコメントを求めたが回答は得られなかった。

またグリュックスマン氏は自身のインスタグラムで、ナイキともこの問題について話し合ったと述べている。ナイキは、ウイグル人の移転労働者の受け入れ先とされたHaoyuanpeng Garment Group(浩縁朋制衣集団公司)、Qingdao Jifa Huajin Garment Co. Ltd(青島即発華錦服装有限公司)など、複数の工場の顧客として報告書に名前が挙がっている。インスタグラムへの投稿でグリュックスマン氏は、泰光の工場をめぐるナイキ代理人との「議論は激しいやり取りになった」こと、そして「ナイキが文書による回答を約束した」ことを明かしている。

ASPIの報告書が公開されたのを受けて、ナイキは3月に声明を発表し、中国でデューディリジェンスを実施中だと述べた。同社は次のように説明している。「泰光は、青島工場におけるXUAR(新疆ウイグル自治区)からの従業員の新規雇用を2019年に停止し、残るXUARからの従業員も全員すでに帰還したことを確認している。泰光はまた、XUAR出身者を含めたすべての従業員が、契約をいつでも問題なく終了する自由を常に有していることを確認しており、過去に多くの従業員がそのような選択をしている」。

「そんな単純な話ではない」

しかし、ASPIの調査結果は、それが事実とは考えにくいことを示している。「新疆を離れたこれらの工場で働くウイグル人労働者の多くは、収容所にいるのと同様の状況に置かれていることを我々は突き止めた。彼らは常時監視され、見張りをつけられ、移動の自由を制限され、政治的な教化教育を施されている」とマンロー氏は話す。「したがって、中国で製造していても、新疆に関わらなければ強制労働のリスクとは無縁だと考えているブランドは、考えを改めるべきだ」。

ブランドのなかには、監査をサプライヤーの証言に頼っているところもある。ヴィクトリアズ・シークレットの親会社Lブランズ(L Brands)は、グロッシーに寄せた声明で次のように述べている。「(当社は)すべてのサプライヤーに対し、新疆ウイグル自治区で生産された綿の使用や、その他あらゆる強制労働を禁じた当社の反強制労働ポリシーを受理し、読了し、理解したことを再度証明するよう要請している」。

新疆における大量拘禁の問題を扱っている人権擁護活動家にとって、中国で製造を行う企業はサプライチェーンを監査するだけでは不十分だ。

「強制労働の使用をやめればいいというものではない」と、人権擁護活動家のズルフマー・アイザック氏は話す。自身も両親がキャンプに収容されたことをきっかけに、この問題に声を上げている。「そんな単純な話ではない。中国そのものをサプライチェーンから排除すべきだ。中国内のサプライチェーンでウイグル人の強制労働が行われているからというだけでなく、香港の現在の状況もある。中国はそもそも適切なビジネスパートナーではない」。

H&Mの広報担当者は、グロッシーに次のようなメールを寄せた。「H&Mグループは、サプライチェーンにおける強制労働とあらゆる差別を厳しく禁じている。(中略)当社が中国で提携するすべての衣類製造工場に調査を実施した結果、報告されている労働者の移転プログラムや雇用計画を通じて新疆の労働者を雇用している工場はないと結論づけられる」。

BCIのガイドライン

プーマの広報担当者もグロッシーにメールで声明を寄せ、同社の監査プログラムでは、ティア1およびティア2サプライヤーに強制労働や新疆との関わりは見つからなかったと述べている。「原材料のサプライヤー(ティア3)に関しては、糸を調達しているサプライヤーの1社が新疆ウイグル自治区と関わりをもっていたが、プーマがそのサプライヤーから調達しているのは、浙江省にある紡績工場と、ベトナムのホーチミン市郊外にある紡績工場の糸だけだ」と声明には記されている。

ジャック&ジョーンズの広報担当者は、新疆での製造を禁じた親会社ベストセラー(Bestseller)の調達ポリシーを提示したうえで、同社は「デューディリジェンス」を実施中であり、また倫理的な手段に基づく綿の調達を支援するBCI(ベターコットンイニシアチブ)のメンバーだと述べた。

ほかには、プーマとH&MもBCIのガイドラインに従っていると述べている。

ギャップは、新疆の問題に関する公式声明において、新疆からの調達は行っておらず、「当社のグローバルサプライチェーンが間接的に影響を受ける可能性について理解を深めるための措置を講じて」いること、また、非自主的労働を禁じる「厳格なポリシー」を定めていることを明かしている。

なお、BCIは新疆からの綿の調達を禁じてはいないが、BCIのライセンスを受けた卸売業者における強制労働を禁止している。前出の華孚もBCIのメンバー企業だが、これについてBCIは、公式サイトに掲載した声明のなかで、華孚は「新疆のアクス市にある同社施設に対して社会的コンプライアンスの独立監査を依頼した」うえで、「監査結果をBCIおよび自社の顧客に共有」しており、そこに強制労働を示す証拠は見つからなかったと述べている。ただしBCIは、報告書に名前の挙がった華孚の安徽省の施設については言及していない。

この件に関して、アバクロンビー&フィッチ、フィラ、ラルフローレン、トミーヒルフィガー、ユニクロ、カルバン・クライン、LLビーン、カーターズ、チェルッティ1881、ナイキ、ザ・ノース・フェイス、スケッチャーズ、ザラ、ゼニアからの回答は得られていない。

更新情報(2020年7月7日米国東部時間午後2時56分):アバクロンビー&フィッチの広報担当者が声明を寄せ、報告書に同社のサプライヤーとして名前の挙がった別の2つの工場、すなわちShandong Zoucheng Guosheng(山東鄒城国盛)および青島即発華錦服装有限公司から「当社が調達している事実はないと考える」と述べた。また広報担当者によると、同社は「サプライヤーのネットワークを厳重に監視しており」、供給業者向けの行動規範において強制労働を禁じているという。

[原文:Lacoste and Adidas pledge to cut forced Uighur labor from supply chain

(翻訳:ガリレオ、編集:長田 真)