ロレアル、グッチグループ、そして最近ではレブロンと、大手美容企業でキャリアを積んできたジリアン・ゴーマン・ラウンド氏。2020年12月、彼女はオーガニックブランドのケアーワイス CEOに就任。美容業界では数少ない女性CEOのひとりであるワイス氏が語った、新しいラグジュアリーの形とは?
ロレアル(L’Oréal)、グッチ(Gucci)グループ、そして最近ではレブロン(Revlon)と、大手美容企業でキャリアを積んできたジリアン・ゴーマン・ラウンド氏。パンデミックのさなかの2020年12月、彼女はオーガニックで詰め替え可能な化粧品ブランドのケアーワイス(Kjaer Weis)CEOに就任。かつての上司であるレブロンCEOデビー・ペレルマン氏と同様に、ゴーマン・ラウンド氏は今日の美容業界では数少ない女性CEOのひとりである。
オーガニックなフォーミュラ、ハイパフォーマンス、サステナブルで詰め替えが可能ーーケアーワイスが他社と差別化を図るポイントの多くは、いまや業界全体に定着しつつある。そのため、同ブランドの認知度が向上する機は熟していると、ゴーマン・ラウンド氏は考えている。これはまさにその通りで、創業者でありメイクアップアーティストのキルスティン・ケアー・ワイス氏は11年の歳月をかけて自身の主張を完璧なものにしてきた。最近、健康志向のSPAC(特別買収目的会社)を発表したウォルデンキャスト(Waldencast)が、このブランドの過半数の株式を取得したことも有利に働いている。
「10年前にブランドを立ち上げたキルスティンは、オーガニック認証を取得した高機能な製品でありながら、なおかつ詰め替え可能でサステナブルである製品を開発できた最初のクリエイターだった。いまではこの分野が活発になっているように思う。だが私たちの基本的な理念である認定オーガニックの分野で、ケアーワイスは本当に無類の存在といえる」とゴーマン・ラウンド氏はGlossyビューティポッドキャストで語った。
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パンデミックのあいだ、ケアーワイスはデジタルや小売店のパートナーとともにそうした視点を共有できている。これまでのところD2C事業は前年比300%増で事業の50%を占めており、残りの50%を占める卸売部門の売上も前年比で倍増している。
「事業の50%をD2Cにシフトしたのは、卸売部門の事業がうまくいっていないためではない。上げ潮が船をみな持ち上げるということわざにあるように、機が熟しているからだ」。
さっそくポッドキャストからいくつか注目すべき点を編集し、紹介する。
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ケアーワイスの理念を広めるために
「私たちにとって極めて重要なのは、ブランドストーリーを伝えることであり、そしてそれを適切なチャネル、つまり私たちの顧客に本当に適したチャネルを通じて非常に一貫性のある方法で行うことだ。マーケティング担当者やブランドリーダーの立場になると同じストーリーを伝えることに飽きてしまうことがよくある。あまりにも何度も耳にしているせいで、みんなも同じくらい何度も聞いているだろうと思ってしまうからだが、実際にはそうではない」。
「画面をスクロールする生活を送っている消費者にそれが本当に何なのかを理解してもらうには、ブランドの一貫性を見てもらう必要がある。もちろん、そのストーリーはあなた自身が語ってもよいし、あなたのために語ってくれるインフルエンサーや業界内の人を起用してもかまわない。私たちがマーケティングの面で最大限重視しているのは、必ず一貫したストーリーを伝えることでブランドの認知度を高めていくこと。現在はペイドメディア、ソーシャルメディア、適切なインフルエンサーの活用など、ブランドとしてこれまでできなかったことに取り組んでいる」
より幅広い流通を
「パンデミック後もこのままの体制で生産性を非常に高めていきたい。新しい流通に反対するわけではないが、ブランドの基本に立ち返ることが真に思慮深いことだと考えている。新しい流通を実際に開くときは、パートナーシップの観点からも、消費者の増加や機会の増加という観点からも、それが理にかなっているものかどうかを確かめなくてはならない」。
「新たな流通を本当に発展させるには、ビジネスとして体制を整える必要もある。小さな会社がよくやりがちな間違いに、実際にはまだ準備ができていない流通を開拓してしまうというのがあるのではないか。私たちは新しい流通の準備ができているが、それを実行に移していく前に、まずパートナーとケアーワイスの双方に有利になるかどうかをじっくり検討したい。それは全員にとって正しいものでなくてはならないし、とくに現在の状況では目先の利益に飛びついてもうまくいかない」。
ラグジュアリーのあり方の変化
「新のラグジュアリーが本当に重要だと思う。それは他愛のない雑談の際や仕事中によく言っている[思慮深くあれ]ということに関係がある。ラグジュアリーな製品とは、目的のある製品、本当に正しいと感じる製品、問題を解決して喜びをもたらす製品のことだ。そうした製品を開発するには、私たちがやっているように、最高の原材料を使用し、サプライチェーンやパッケージングなど、管理できるあらゆる面において可能な限り環境に配慮しているかどうかをきちんと確認する責任がある。私もそうだし、ほとんどの消費者もその方向に向かっていると思うが、本当に自分が気に入るもの、ちゃんと機能するものを使いたいし、思った以上によかったものを知ることがラグジュアリーなのだ。贅沢というのはそういうこと。ラグジュアリーとは、常にすべてを所有していることではない。ラグジュアリーとは頼りになる大好きな製品、1日の重要な一部だと感じられるような製品を手にすることだ」。
[原文:Kjaer Weis CEO Gillian Gorman Round: ‘Luxury is not having everything all of the time’]
PRIYA RAO(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)