これまでエージェンシーに頼っていたクリエイティブ制作やプログラマティック広告運用業務などを全て内製化する事は、恩恵だけでなく、特に人材の確保に困難を伴う現状があった。そんな中インハウスチームとエージェンシーが協働するハイブリッド型への取り組みが今注目されつつある。
そこで、DIGIDAY[日本版]では2019年11月中旬、無料メールマガジン購読者を対象に、「マーケティング業務の内製化」をテーマにしたアンケートを実施。ブランドやパブリッシャーなどから集まった総計93名の回答を分析した結果、「マーケティング業務の内製化」を進めることで、結果的に意思決定スピードが向上している印象が得られた。
マーケティング機能のインハウス化は、日本でも確実に根付きつつあるようだ。
広告代理店などの外部パートナー企業を利用せずに、マーケティング機能を自社で賄うインハウス化。そのメリットは、コスト削減だけでなく意思決定の迅速化を実現できるところにある。その一方、デメリットとなるのが、さらに一企業では得られない広範なマーケティングノウハウやナレッジを得る機会を失うことだ。
DIGIDAY[日本版]では2019年11月中旬、無料メールマガジン購読者を対象に、「マーケティング業務の内製化」をテーマにしたアンケートを実施。業種問わずマーケティング業務関係者と憶測される総計93名の回答を分析した結果、マーケティング機能のインハウス化というトレンドは、日本でも浸透しつつあることがわかった。
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今回の調査結果では、社内で管理しているマーケティング機能の割合としてもっとも票を集めたのは、「ほぼ内製化しているが、一部外部を利用」がトップで42%。次いで「内製化の部分と外部の利用は半分程度」29%、「100%内製化」14%と続いた。
少数意見として「100%外部利用」を挙げる回答者もいたが、今回の回答者の8割以上がすでに半分以上のマーケティング業務を内製化していた。米DIGIDAYが2019年秋にブランドのマーケター67人を対象に実施した調査でも、ほぼ同じような分布となっている。
また、すでに内製化している具体例として、「ソーシャルメディア運用」が24%といちばん多く、「クリエイティブ制作」が22%、「運用型広告(ディスプレイ・動画等)」が22%、以下「検索エンジン最適化(SEO)」「検索連動広告(SEM)」と続いた(複数回答)。
日本では意思決定の迅速化を重視
印象的な結果を見せたのが、「マーケティング業務の内製化における最も大きな恩恵」についての設問だ。DIGIDAY[日本版]の調査でもっとも回答が集まったのは「意思決定のスピードアップ」31%となっている。米DIGIDAYが2020年に向けた最優先の課題調査内で実施した、マーケティング業務の内製化における項目では、「マーケティングコストの削減」を肯定する回答者は68%にのぼり、意思決定の迅速化を大幅に上回っていた。
「マーケティング業務の内製化を実施・検討するにあたって、大切にしているポリシー」について自由回答で訊いた設問では、内製化への優先度の考え方やナレッジ蓄積へのスタンスが感じられた。以下、それらのコメントを書き出しておく。なお、一部読みやすさを重視して、編集してある。
大事なもの、中長期的に見て、社内で解決すべきもの、ノウハウ習得に時間がかかるものから内製化する。
明確なゴール設定を行い、コンテキストを作成し、チーム内で忖度はせず、目標達成に効果的かどうかで、行動を決めている。
施策の作業実行のスピード・改善回数を重視している。
課題は人材の雇用と体制構築
また、日本においても、マーケティング専門人材の獲得と維持は、大きな課題となっているようだ。「マーケティング業務の内製化における課題」についての設問(複数回答)では「人材の雇用」に25%の回答が集まった。それに、「必要な技術を構築・購入するのにかかる時間」23%、「信頼できる効果指標やデータ検証を行う仕組みの開発」22%と続いた。どれも人材育成や組織改善に大きく関わる項目だ。
以下、関連のコメントを紹介する。
対象マーケットの需要動向、スキルセットとリーダーシップを持った人材の育成・採用が課題。
ある程度、内製で経験を積むことで、委託企業とのコミュニケーションの質が向上したり、ベンダー選定の目利き力も上がってくる。
社内にノウハウを貯めるのであれば、それが属人化しないような工夫が必要。もしくは知識やスキルをためた担当者が長く働ける環境づくりが長い目で見て大事。
専門領域の内製化は特に困難
「マーケティング機能の内製化で困難なものについて教えてください」という設問(複数回答)では、「戦略設定」74%がトップとなった。それに「検索エンジン最適化(SEO)」67%が続いた。一方で、比較的難易度の高くない機能としては、「予約型広告」に意見が集まった。
戦略設定は上流工程に位置するため、ビジネスモデルの根幹に関わることであり、そもそも外部に委託する業務ではないだろう。しかし、社内外の情報をかき集め、取捨選択しつつ、方針を決定する必要があるため、難易度も高い。そのため、「猫の手も借りたい」という状況なのかもしれない。
一方、「予約型広告」はデジタルメディアであれば、直であたって、さほど難しい作業も必要なく、実行することも可能だ。反応の推移を見て、PDCAを回すような必要も基本的にない。そのため比較的ハードルの低い印象なのだろう。
以下が関連するコメントだ。
作業は外注してよいが戦略立案、施策検討は内部ですべきである。
戦略立案や企画などの上流工程からマーケティング業務のオペレーション構築まで、幹になる部分は内製を崩さない。各施策の戦術レベルはむしろ積極的に外部の力を活用することで社内ナレッジの陳腐化を防ぐ。
全部は内製化しない。外部パートナーからの最新専門情報などの流入がないとキャッチアップが困難になるので、一定程度は外部にも委託しながら進めていく。
内製化にこだわり過ぎて、ヒューマンリソース配分を見落とさない。
Written by 吉田 圭二