11月、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学出身の優秀な共同創業者チームにエルマリア博士が加わったスキンケアブランド、アラモアがローンチされた。長寿に関するリサーチが増えるなかで研究されてきた成分に重点を置き、同ブランドはサプリメントと3種類の外用スキンケア製品でデビューを果たした。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
2018年、ハーバード・メディカル・スクールの教授で皮膚科医のサリナ・B・エルマリア博士はカンファレンスでの講演後に、ジョン・F・ケネディ大統領の甥で、慈善家および起業家のスティーブン・ケネディ・スミス氏から、彼が創業した新しいスキンケアブランドに参加してほしいという意外な提案をされた。当初、博士は不信感を抱いたという。
「私は懐疑的なだけでなく、否定的な人間なので」と彼女は言った。皮膚の神経感覚障害に着目した研究をしている彼女は、このブランドへの参加について「自分が適任かどうかわからない、と言い続けた」。
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しかしスミス氏はあきらめなかった。そして11月、ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学出身の優秀な共同創業者チームにエルマリア博士が加わったスキンケアブランド、アラモア(Aramore)がローンチされた。長寿に関するリサーチが増えるなかで研究されてきた成分に重点を置き、同ブランドはサプリメントと3種類の外用スキンケア製品でデビューを果たした。
現在、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の皮膚神経感覚障害センターでディレクターを務めるエルマリア氏は、スミス氏のブランドのビジョンの一部である健康と美の直接的な結びつきに納得したと話す。
「じつに複雑な皮膚疾患を管理する皮膚科医としての私の目標は、全体的な皮膚の健康を向上させることだ」と彼女は言う。「予防医療に関わるあらゆることは、よりよく年を重ねることなのだ」。
ハーバード大やMITなどの科学者を創業チームのメンバーに
スミス氏のスキンケア界への進出は、慈善活動とバイオテクノロジーへの投資によって始まった。その際に彼は特に長生きについて興味を抱くようになった。スキンケアに関して彼は、長寿(ロンジェビティ)を美容業界の「アンチエイジング」の概念とは区別してとらえている。
「自然とは戦いたくない。人間の潜在能力を発揮できるように、自然と連動して我々の生態を最適化したい。永遠に若く見えるようにしようとするよりも、そのほうが私にとってはよい目標だ」と彼は述べた。
スミス氏は、ハーバード大学医学部皮膚科准教授のアンナ・マンディノヴァ博士と出会い、彼女がハーバード大学幹細胞研究所でNAD増強化合物の研究をしていることを知った後、初めてこのブランドを立ち上げた。また科学者からなる創業チームのメンバーには、MITの化学教授であるブラッド・ペンテルート博士、神経科学アクセラレーターのブレインマインド(BrainMind)の共同創業者でカリフォルニア大学バークレー校の分子細胞生物学の博士課程の学生であるダイアナ・サヴィル氏も含まれている。
同ブランドは、スミス氏のコンシューマーヘルス企業ニュー・フロンティア・バイオ(New Frontier Bio)の下でローンチされる最初のブランドとなる。同社の5名の戦略アドバイザー委員会にはモデルナ(Moderna)の共同創業者デリック・ロッシ氏も名を連ね、また同社のCEOは元ベアミネラル(Bareminerals)のCMOクラウディア・ポッチア氏が務める。資金調達は1000万ドル(約13.4億円)を確保し、アンブロジアインベストメント(Ambrosia Investments)と未公開投資会社クランメア(Cranmere)の創業者ヴィンセント・マイ氏のふたりがリードインベスターを務めている。
また戦略諮問委員会には、クリエイティブ・コンサルタント会社の創業者で、エキノックス(Equinox)の元チーフエクスペリエンスオフィサーのブランドン・ラルフ氏も加わっている。同ブランドの製品は間もなく米国のエキノックスの最大店舗10店に導入され、また同製品を使ったフェイシャルも提供される予定である。
脳の健康から皮膚へ
デジタルセラピーのスタートアップ、ペア・セラピューティックス(Pear Therapeutics)も創業しているスミス氏は、一族の議員の親族に触発されて長寿の分野に関心を持つようになった。従兄弟のパトリック・ケネディ氏は元下院議員で、精神保健同等法および依存症衡平法の起草者であり、スミス氏を脳の健康に関する投資や慈善活動に導いたカンファレンス、ワンマインド・フォー・リサーチ(One Mind for Research)の創設者でもある。
「私はまず脳に興味を持った。そしてそこから、脳に作用するであろう化合物を試験できるモデルを探すためにハーバード大学幹細胞研究所を訪れたことが、皮膚につながった」とスミス氏は言う。
アラモアの製品の開発過程では、科学的な研究結果を示す成分を探すために、長寿に関する既存の研究を調査した。サプリメントと外用剤の成分は、ブランドのウェブサイトのページにすべて掲載され、それぞれに研究結果がリンクされている。スミス氏によれば、今後半年以内に、ブランドでは製品自体の臨床データも公開する予定である。
含有成分の潜在的な候補を特定することに注力したサヴィル氏は、サプリメント開発の難しさを説明した。
一般的にサプリメントに関しては「規制がない分野なので、自分が摂取しているサプリの品質を確認するのは非常に難しい」と彼女は述べた。このブランドの55ドル(約7370円)のサプリメントの成分には、NAD+やミルクアザミのような植物由来の成分など、長寿の分野で注目されるエビデンスがあるものが含まれている。創業者らによれば、後者は肝機能を向上させ、それが肌の結果にも現れるという。NAD+は175ドル(約2万3430円)の夜用クリームと150ドル(約2万円)の昼用ローションにも含まれており、185ドル(約2万4770円)の夜用ブースターにはレチノールが含まれている。
科学的な根拠に基づく長寿に関するブランドが増えている
長寿についての研究は、バイオテクノロジーから美容業界へと進出している。ワンスキン(OneSkin)といった他のブランドは、長寿に関する研究者がスキンケアの結果における科学的なエビデンスを活用してローンチしたものだ。
スミス氏は「科学は商品化の先を進んでいる」と話す。「最近では、実際に科学的な根拠があって長寿に基づいたこうしたブランドが増えているのを目にし始めている」。
現時点では、長寿研究は人を生物学的に若返らせる方法を発見していない、とスミス氏は言う。だが彼は楽観的だ。
「私たちが生きているあいだに、老化を逆行させることができるようになる可能性は間違いなくある」と彼は言う。
肌の結果に関しては、同ブランドの創業者たちはそれ以上のものを約束している。
「生物学的な遺伝子時計と、それから美の時計がある。私たちの製品に配合されている成分は、美の時計の針を戻すと私は確信している」とサヴィル氏。製品の臨床試験では、コラーゲン、エラスチン、色素沈着、シワの深さなどを検証する予定だ。
「肌の寿命を延ばす、根本的な細胞メカニズムがそこで実際に起きている」とスミス氏は述べている。
健康志向の消費者と美容志向の消費者にリーチする
科学の世界を超えて、消費者は長寿に関する研究を自分の生活に適用する方法に興味を持ち始めている。「長生き」に関するReddit(レディット)のグループは、2020年に6万4000人だったメンバーが、現在は13万7000人に急増している。
アラモアの創業者たちは、長生きの健康と美容の両方の愛好家が同社の製品に関心を寄せてくれることを期待している。
「興味を持つ消費者にはふたつのタイプがある。健康志向の消費者と美容志向の消費者だ。少しはクロスオーバーしている」とスミス氏。同ブランドが行った市場調査では、「スキンケア消費者は長生きというアイデアに非常に興味を持っていたが、NAD+について聞いたことがある人はほとんどいなかった」。
また、予防に重点を置く「スキンテレクチャル」な若い消費者や、肌の老化の兆候に遭遇している消費者にリーチすることにもブランドは関心を抱いている。
アラモアではサイエンスをブランドのメッセージの前面に押し出しているが、セレブリティとのつながりも進んで受け入れており、先週LAで行われたローンチイベンには女優のマリサ・トメイ氏やジュリー・ボーウェン氏が出席した。
そしてマーケティングのインスピレーションは、ジョン・F・ケネディ大統領自身が示した模範から得たものだ。
「私はいつも叔父から、メッセージを持たなくてはならないこと、そしてそのメッセージに誠実でなくてはならないこと、それを理解してくれる人々を信じなければならないことを学んだ」とスミス氏は言う。政治と同じように、このブランドは、成分とそれを裏付けるエビデンスに関するメッセージを明確かつ簡単に理解できるようにし続けることに注力している。「私たちは、そのことを人々にはっきりと伝えようとするつもりであり、人々がそれに応えてくれることを望んでいる」。
[原文:JFK’s nephew links with Harvard and MIT scientists for longevity skin-care brand Aramore]
LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)