JCペニーは1月17日、同デパートの600店舗内にナイキ(Nike)のブランドショップをオープンすると発表した。これらの店舗では、アパレルやシューズ、アクセサリーなどからなる幅広いコレクションが扱われるという。売上低迷の克服をめざす同社は、スマートなショップインショップ戦略に販売促進の望みを託している。
売上低迷の克服をめざす米大手デパートチェーンのJCペニー(JCPenney)は、スマートなショップインショップ戦略に販売促進の望みを託している。
JCペニーは1月17日、同デパートの600店舗内にナイキ(Nike)のブランドショップをオープンすると発表した。これらの店舗では、アパレルやシューズ、アクセサリーなどからなる幅広いコレクションが扱われるという。JCペニーのメンズウェア売り場の一角500平方フィート(約46平方メートル)を占める予定で、一部の店舗では女性や子ども向けのセレクションも扱われるようだ。
セフォラという成功例
この動きは、JCペニーが2006年から化粧品チェーン「セフォラ(Sephora)」との提携で行ってきたことに似ている。つまり、デパート店舗内に小規模ショップをオープンする戦略だ。その目的は、商品を豊富に取り揃え、ショップインショップのブランド体験へのリソースを増やすことにより、別のブランドや小売業者へのフットトラフィックも活発にすることだ。デパート内にあるセフォラのショップは、セフォラのオリジナル店舗と同じような見た目と雰囲気だが、その背景にはJCペニーの別商品も見えているというわけだ。
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セフォラとの提携は、JCペニーに成功をもたらしてきた。JCペニーは2016年、セフォラのショップの年間売上は1平方フィート(約0.1平方メートル)当たり600ドル(約6万8000円)で、その額は同社における平均売上の3倍以上と報告。セフォラは現在、JCペニーの約600店舗に出店しており、新たな「ミニチュア」ショップのコンセプトも6店舗でテスト中だ。
JCペニーの最高経営責任者(CEO)マービン・エリソン氏は、2016年11月に行われた収支報告で、「明確な差別化とセフォラの継続的な成功のおかげで、業界をリードする魅力的な高級ブランドを取り入れ、商品提供の幅を広げられた」と語った。たとえば、あなたがメイシーズ(Macy’s)に足を運んでも、セフォラの商品が安定して提供されているわけではないのだ。
アスレジャー頼みの量販店
JCペニーは、ナイキとの提携でこの成功方程式の再現をめざしているが、それは、アクティブウェアの人気を利用しようとする動きだ。ほかのデパート店も、そうしたトレンドに大きく賭けている。アスレジャー(アスレチック[競技]とレジャー[余暇]を掛け合わせた造語。スポーツジムやヨガスタジオで着るスポーツウェアを普段着として着用するファッションスタイル)は、いまなおアパレル市場を掌握しており、あらゆるデパートがこのトレンドに引き寄せられているのだ。
コールズ(Kohl’s)はアンダーアーマー(Under Armour)と提携を結び、同社の製品を2017年から店舗で販売しはじめた。2016年10月には、ニーマン・マーカスが新たなアクティブラインをローンチし、同デパートの顧客がストリートウェアに使っているお金をつかむべく、「フェンティープーマ・バイ・リアーナ(Fenty Puma by Rihanna)」や「コモンプロジェクツ(Common Projects)」などのブランドをセレクションに加えた。同様にバーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)でも、「キス(Kith)」や「フェンティープーマ」の販売が開始された。
「以前であれば人々は、最新の流行を知るために小売店やデパートに足を運んでいた。それがいまや、流行の影響力はさまざまな方向に無数に散らばっている」と語るのは、エージェンシーのレイザーフィッシュ(Razorfish)でコマースストラテジー部門のバイスプレジデントを務めるスティーブ・ホワイト氏だ。「この状況を乗り切ろうとする量販店は悪戦苦闘している――大型船の舵を取っているようなものだ」。
苦境を打破するために
JCペニーは、メイシーズやノードストローム(Nordstrom)、コールズなどのライバルたちとともに、2016年の年末商戦で悪夢を見た。JCペニーの11月と12月の既存店売上高は0.8%の下落だった。
いまのデパート各社には、正攻法にこだわっている余裕はない。先細る売上に立ち向かうために、デパート各社はいま、実験的店舗はもちろん、ブランド提携にも工夫を凝らしている。ニーマン・マーカスは、デザイナードレスやアクセサリーのレンタルサービスを手がける「レント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)」のショップをサンフランシスコ店舗内にはじめてオープンした。レンタルアイテムの循環サイクルがもたらす高級ファションの購入増加を狙ってのことだ。
ノードストロームは、さまざまなインディーブランドの有望株を同デパートの店舗に招聘するマンスリー企画「Pop-In@Nordstrom」を展開している。キュレーターを務めるのは、ファッションエディターのオリビア・キム氏。直近では、韓国のサングラス・ブランド「ジェントルモンスター(Gentle Monster)」がノードストロームの一部店舗に出店している。
ブランドの再現が重要
こうした販売実験を成功させるには、ブランドを完全な形で組み込む必要があると語るのは、エージェンシーのスパーク(Spark)を創業したマリンダ・サンナ氏だ。
「もし一時的なポップアップストアのように放置するのであれば、それは良い手とは言えない」と、サンナ氏は言う。「ブランドを完全な形で顧客体験に組み込まなければならない」。
JCペニーは、ナイキとの提携を開始する以前に、オレゴン州ポートランドにある店舗で何カ月もの時間を費やして、同ブランドショップの視覚体験をテストしたとされている。JCペニーで最高商品責任者(CMO)を務めるジョン・タイ氏は、セフォラと同じようにフットトラフィックと売上を伸ばすことはもちろん、アスレチックウェアに対する既存の顧客需要を満たすことも同社の目標だと語る。
「JCペニーは、アクティブウェアを求める顧客の目的地だ。ナイキのような、人々の認識を変えるナショナルブランドと提携することで、我々は、人気のアスレジャー商品を顧客に提供できるだけでなく、全体的な売上も向上させることができる」と、タイ氏は語った。
Hilary Milnes (原文 / 訳:ガリレオ)