大手百貨店JCペニー(JCPenney)は、ウェブサイトやアプリの改修、店舗のアップグレード、新しい在庫管理システムの構築を行うため、2025年度までに10億ドル(約1480億円)を注ぎ込む計画だと発表した。現在、経営不振の百貨店各社が、数年に渡る売上減少を経て大規模な再建計画を公表しており、同社もそれにならった形だ。
8月31日に新戦略を発表したJCペニーは、既存のキャッシュフローを使って投資資金を調達すると、CEOのマーク・ローゼン氏はメディア関係者に明かした。「現在、財務的に極めて強固な状態にあり、この投資資金を調達するため、あるいはその支払いのために追加の負債を負うことはない」と同氏は述べた。
同社の経営再建努力は、百貨店にとって極めて重要な時期に行われた。百貨店の多くは、顧客が自由裁量の支出を減らし、生活必需品にお金を回すようになったため、売上を上げるのに苦労している。実際、メイシーズ(Macy’s)、コールズ(Kohl’s)、ノードストローム(Nordstrom)の3社とも、直近の四半期決算で純売上の落ち込みを報告した。2023年1月期通期では、JCペニーの純売上は前年比で3.4%減の76億ドル(約1兆1200億円)だった。百貨店全体の売上は2023年の最初の7カ月間で前年同期比1.5%減だったことが、センサス(Census)のデータに示されている。
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
大手百貨店JCペニー(JCPenney)は、ウェブサイトやアプリの改修、店舗のアップグレード、新しい在庫管理システムの構築を行うため、2025年度までに10億ドル(約1480億円)を注ぎ込む計画だと発表した。現在、経営不振の百貨店各社が、数年に渡る売上減少を経て大規模な再建計画を公表しており、同社もそれにならった形だ。
8月31日に新戦略を発表したJCペニーは、既存のキャッシュフローを使って投資資金を調達すると、CEOのマーク・ローゼン氏はメディア関係者に明かした。「現在、財務的に極めて強固な状態にあり、この投資資金を調達するため、あるいはその支払いのために追加の負債を負うことはない」と同氏は述べた。
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同社の経営再建努力は、百貨店にとって極めて重要な時期に行われた。百貨店の多くは、顧客が自由裁量の支出を減らし、生活必需品にお金を回すようになったため、売上を上げるのに苦労している。実際、メイシーズ(Macy’s)、コールズ(Kohl’s)、ノードストローム(Nordstrom)の3社とも、直近の四半期決算で純売上の落ち込みを報告した。2023年1月期通期では、JCペニーの純売上は前年比で3.4%減の76億ドル(約1兆1200億円)だった。百貨店全体の売上は2023年の最初の7カ月間で前年同期比1.5%減だったことが、センサス(Census)のデータに示されている。
ローゼン氏率いるJCペニー再建
JCペニーは1990年代にもっとも早く商品をオンラインで販売した企業のひとつだったが、経営陣が何度も交代するなか、小売業界の情勢の変化に対応するのに苦戦した。2020年には50億ドル(約7400億円)の負債を抱え、5月に破産を申請した。同年、サイモンプロパティーグループ(Simon Property Group)とブルックフィールドプロパティーパートナーズ(Brookfield Property Partners)がJCペニーを8億ドル(約1180億円)で買収し、破産から救済された。
ローゼン氏は、リーバイストラウスアメリカ(Levi Strauss Americas)のエグゼクティブバイスプレジデントおよびプレジデントを務めた後、2021年にJCペニーの実権を握った。ローゼン氏は当時、「ビジネスを次の時代へと推進し、顧客と新しい形でつながりたい」という声明を発表した。
JCペニーは、この新計画が長期的な成長を促し、顧客維持率を改善することに期待している。手はじめに、モバイルアプリとウェブサイトをアップグレードして商品の高品質な画像と説明を盛り込み、顧客が「商品をより簡単に検索して見つけられるようにする」と同氏は語った。
ペンキの塗り替え、新しい照明の設置、チェックアウトの集中化により、650以上の店舗をアップグレードする予定だ。2020年と2021年にかけて、175店舗を閉店したが、これは「より持続可能で収益性のある成長に向けた店舗の最適化戦略」だとしている。
また、「在庫との統合を進める」ために新しいPOSシステムを構築し、店舗内のWi-Fiネットワークを高速化すると述べている。100以上の店舗はすでに改装を終えている。
さらに、サプライチェーンにAI(人工知能)などの新技術を組み入れ、「適切な商品を、適切な顧客に、適切なタイミングで入手できるようにする」とローゼン氏は述べる。JCペニーによると、新しい在庫管理システムにより、注文に迅速に対応し、配達までの時間を短縮できるという。
コンサルティング会社コンフルエンサーコマース(Confluencer Commerce)の創設者ブライアン・ギルデンバーグ氏は、JCペニーの計画には「興味深い側面」があると米モダンリテールに語った。特に、品揃えにおいてインクルーシブなサイズを重視していることを同氏は称賛している。しかし、「店舗体験の刷新についてJCペニーが述べていることの多くは、5年前でさえ必須条件であり、今では語るまでもないことだ」とも述べている。
事業規模を適正化を模索する百貨店各社
百貨店は何年にもわたって、事業規模を適正化する方法を模索してきた。メイシーズは2020年、3カ年戦略「ポラリス(Polaris)」を発表した。CEOのジェフ・ジェネット氏は、この戦略が「メイシーズを持続可能で収益性の高い成長に戻す」ためだと述べている。この計画には、品揃えの拡大、デジタルチャネルの推進、ロイヤルティプログラムの改善が含まれている。
しかし、これらの努力は店舗での売上を成長させ続けるには十分でなく、メイシーズの売上はパンデミック前より低い水準にとどまっている。同社は現在、成長の原動力として自社ブランドに賭けている。直近ではオンサーティーフォース(On 34th)を8月に立ち上げ、2025年の末までにさらに3つのプライベートブランドを立ち上げる予定だ。
ノードストロームも2021年、品揃えの充実、ノードストロームラック(Nordstrom Rack)のリーチ拡大、およびデジタルビジネスの強化で売上全体の50%を占めるようにするという再建戦略の概要を発表した。ノードストロームもメイシーズと同様、第2四半期の純売上は2019年の水準を下回っていることを報告している。
ギルデンバーグ氏は、百貨店部門について、「現在もっとも問題を抱えている実店舗フォーマット」だと考えていると話す。「かつて百貨店が担っていた、買い物客向けにファッションを調達しキュレーションするという役割を、誰もがインターネット上でできる世界になった今、百貨店の役割は何なのかを見つけだすことは難しい」と同氏は説明した。
さらに、「JCペニーには、JCペニー自身には関係のない根本的な問題がある。それは、店舗が入っているモールが、トラフィックのシェアにおいて、ほかのあらゆるものに負けつつあるということだ」と同氏は付け加えた。
強いカテゴリーが存在しない
別の課題として、JCペニーには特別に強いカテゴリーが存在しないことにも同氏は言及している。たとえばノードストロームなら、「靴の小売業者として非常に優れている」ということだ。
JCペニーが特に注力しているカテゴリーのひとつが美容品だ。9月には、JCペニービューティー(JCPenney Beauty)のコンセプトを2023年の春までに10店舗から600店舗に拡大すると発表した。プレスリリースによると、JCペニービューティーは2021年にパイロット版を開始して以来、170以上のブランドを採用してきた。
また、スタッフォード(Stafford)やオキドキ(Okie Dokie)などプライベートブランド事業の成長にも取り組んでいる。8月下旬には、セレブリティスタイリストのジェイソン・ボルデン氏と新たにパートナーシップを結び、プライベートブランドのジェイフェラー(J.Ferrar)とウォージントン(Worthington)のコレクションを再構築することを発表した。コスト意識の高い顧客は、コスト削減のためにプライベートブランドを選ぶようになっていることから、このカテゴリーを成長させることは重要だとガートナー(Gartner)のディレクターアナリストを務めるカッシー・ソチャ氏は米モダンリテールに語った。
百貨店が苦戦している現状にもかかわらず、ソチャ氏は、「テクノロジーや顧客体験に投資し、フィジカルとデジタルの両方で優れた体験を推進する小売企業には、成功の道が開けている」と米モダンリテールに語った。「顧客が今のニーズを満たしてくれる小売企業を求めていることを理解し、優れたハイブリッドな購買体験を生み出す小売企業が成功するだろう」。
[原文:JCPenney is the latest department store to announce a major turnaround plan]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via JCPenney