FUTURE OF WORK

ギグエコノミー 、PR・マーケの世界にも浸透しはじめる:「急成長している」

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ウーバー(Uber)からフリーランス向けプラットフォームであるアップワーク(Upwork)まで、ギグエコノミーはさまざまな業界で広がりを見せている。最近では、美容やファッション業界でも、企業とマーケティングやPRのフリーランスをマッチングするプラットフォームが、利用されはじめている。

2020年5月に、米国と豪州でローンチされたエンドツーエンドのマーケットプレイス、パブリシスト(Publicist)は、ブランドがPRやマーケティング分野のフリーランスとつながることを可能にしている。登録しているフリーランスへの支払いは、月払いまたはプロジェクトベースのいずれかで行われ、パブリシストはそのうち20%を手数料として徴収する。

パブリシストのWebサイト、および今後登場するモバイルアプリに掲載される人材は、経験年数、スキル、推薦、過去に担当したクライアントや居住地といった情報をもとに審査される。審査を通過した登録者の約4分の1は、プロフィール掲載を認められており、ブランドはエスティーローダー(Estée Lauder)やロレアル(L’Oreal)、ネッタポルテ(Net-a-Porter)、グロッシア(Glossier)などの大手企業の元幹部を見つけることができる。

フリーランス化が加速

パブリシストの創業者で最高経営責任者(CEO)のララ・バンデンバーグ氏は、「メディア企業や代理店、ブランドが多くのマーケティングチームを縮小したことで、業界におけるフリーランス化が加速している。数年前は、ブランドのチームの80%がフルタイムの従業員で、20%がフリーランスだったが、その割合は今後2〜3年で半々近くになるだろう」と話す。

実際、ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)が、各企業の最高幹部クラスを対象に行った調査では、終身雇用のフルタイム労働者が、近い将来「大きく減少する」可能性が「かなり高い」と回答した米国企業は、全体の半数にのぼっている。また3分の2は、今後一時雇用の人材に頼ることが増加すると考えているという。さらに、フォーチュン500(Fortune 500)に入っている企業のほとんどが、少なくともひとつはフリーランス向けのプラットフォームを使用していることも、明らかになっている。

パブリシストのダッシュボード

パブリシストのダッシュボード

ネッタポルテの共同創業者で、高級ブランドのコンサルタントを務めるエマ・ペイトン氏は、パブリシストを利用している人物のひとりだ。同氏は、このプラットフォームを通じて、あるブランドの5カ月におよぶプロジェクトを担当することになった。

「市場で、どのような能力が求められているのかを知るのに、とても良い機会になった」と、ペイトン氏は語る。ネッタポルテ、およびエージェンシー時代に得た「複数のツールを使用する幅広いスキルセット、そして全体的な視点は、フリーランスとして仕事を進めるうえで大いに役立っている」という。

サービスの中身

ブランドは、プロジェクト単位でこのプラットフォームを利用することができる。プロジェクトを設定する際は、仕事の内容や必要条件に加え、日程や報酬をリストアップできる。一方、人材のプロフィールには、経歴と、過去に仕事をしたクライアントのリストが掲載されており、ブランドはこれらを検索することができる。

ブランドで幹部を務めたことがある経験豊富な人材に加え、パブリシストでは「フルタイムや正社員としてのキャリアを考えていないであろう、Z世代の登録者も多く見受けられる」と、バンデンバーグ氏はいう。「ひとつのブランドのために、30年働きたいと思う時代は終わった」。

いまのところ、このプラットフォームに登録している人材の80%は個人のフリーランサーで、20%はエージェンシー企業だ。新規応募者のほとんどが紹介でこのプラットフォームに来ており、バンデンバーグ氏は、今後さらに多くのエージェンシー企業を招致する予定だという。なお現在、プラットフォームに掲載されているマーケティングやPRの専門家は3000人以上、企業は450社にのぼる。

コロナ禍が後押し

こうした業界のフリーランス化は、コロナ禍の影響によって急速に進んだと考えて良いだろう。

バンデンバーグ氏も、「パンデミックが、この状況を数年加速させた」と話す。「我々のプラットフォオームには、ロレアルやディアジオ(Diageo)のような企業で、30年間働いてきたような人材がいる。彼らはパンデミックを経験し、はじめてフリーランスとして働くことになり、私たちのプラットフォームを、まるでヘリコプターの離着陸場のように利用している」。

またこのプラットフォームは、コロナ禍でリモートワークが広まったことも相まって、これまで地理的条件に縛られていたフリーランスたちに、新たな機会を提供している。

「パンデミック以前であれば、ブランドが外部に仕事を依頼する際、『地域性』は重要な要素のひとつだった。たとえば、ロサンゼルス発のブランドなら、ロサンゼルスのエージェンシーを選ぶ、といった具合だ」とバンデンバーグ氏は話す。しかしパンデミックが起こり、多くのブランドがリモートワークに移行し、「人々は相手がどこにいるかを気にしなくなってきている」という。「こうした傾向、つまりリモートワークはこれからも続くだろう」。

見逃せない問題も

しかしこうした潮流は、ブランドにとってもフリーランス人材にとっても見逃せない問題を孕んでいると、PRエージェンシーであるポークPR(Poke PR)の創業者、エミリー・パー氏は話す。たとえば、スタートアップ段階のブランドにおいては、「新商品の発売や何らかの発表といった単発の露出だけでなく、報道や記事、インタビューなどで継続的に取り上げられるなど、『話題になり続けること』が重要だ」。また、フリーランス側からすると「常に次の仕事を見つけるための努力を求められることになる」。

ペイトン氏はさらに、ブランドにとってはインハウスでの取り組みと、プロジェクト単位の外部サポートの両方が「重要」と強調する。「毎日その場にいて、チームを超えて仕事をしている人間ほど、ブランドのことを知っている人はいない。さまざまな部門を一気通貫させることができるのは、こうした人材だ」とペイトン氏は語る。

「コンサルタントやフリーランスが提供できるのは、『外部の視点』からクライアントをサポートすることだ。どちらか一方に偏るのではなく、両方を組み合わせることが大切だ。どちらかを選ばなければいけない、ということではない」。

[原文:‘It’s obviously a hustle’: The remote gig economy comes for PR and marketing

LIZ FLORA(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:村上莞)