STORE OF THE FUTURE

パンデミックで大きく変化した、店舗スタッフの役割:「追加の業務は増えるばかり」

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米小売大手のターゲット(Target)で3年間働いてきたスティーブ氏の仕事は、今年に入って大きく変わった。

3月以来、社会生活に必要不可欠なエッセンシャルワーカーとみなされるようになったテネシー州在住のスティーブ氏(ファーストネームのみ公表)は、米DIGIDAYの姉妹サイト、モダンリテール(Modern Retail)の取材に対し、最大の変化は清掃作業が念入りになり、頻度が増えたことだと語った。そればかりか、今までにないトレーニングが実施されたり、テックツールが導入されたり、在庫を補充するタイミングが変更されたりしているという。すべては、店舗の円滑な運営を続けるためだ。

「お客様との接触を制限するために、早めに出社して在庫を整理することもある」と、スティーブ氏は明かす。また、ターゲットが子会社の配送サービス、シプト(Shipt)を利用して即日配達サービスを強化しているため、スティーブ氏のような在籍年数の長い従業員もフルフィルメント業務を手伝っているという。「店舗でのピックアップのために、配送業務が大幅に滞る日もある」と、同氏は語った。

業務内容は様変わり

このように従業員がさまざまな業務を求められる傾向は、あらゆる小売業で見られる。パートタイム労働者が決められた仕事をしていれば済む時代は終わったのだ。店舗でのピックアップとオンラインカスタマーサービスの仕事を兼務するなど、販売機能を維持するために店舗スタッフはワークフローの調整を余儀なくされている。

コネティカット州の受託販売店(いわゆる中古品販売店)で働くセルマ氏(ファーストネームのみ公表)はこの夏、店舗がShopify(ショッピファイ)ページを公開したため、商品をオンラインで登録する方法をすぐに習得する必要に迫られた。「我々はこれまで、コーチ(Coach)やルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)といった高級品をeBayで販売してきた」と同氏はいう。だが、この店舗は営業を再開するにあたって、25ドル(約2600円)以上の商品をFacebook Marketplace(フェイスブックマーケットプレイス)や自社のShopifyページに出品する計画を打ち出した。「スタッフは自分たちで写真を撮ってアップロードするだけでなく、あらゆる商品の梱包や発送もおこなっている」。

さらにスタッフは、オンライン販売と日常的なカスタマーサービスの仕事を兼務するだけでなく、「販売委託予約(consignor appointments:販売したい中古品を持ち込むための予約)」という新型コロナウイルスの発生前にはなかった業務にも時間を割いている。セルマ氏の典型的な1日は、買い物客や販売委託者が来るたびにカウンターを清掃し、買い物客が商品を試着するたびに試着室を清掃し、1日の終わりに「ライゾール(除菌スプレー)」をハンガーに吹きかけて消毒し、45個ある衣類ラックを殺菌スプレーで消毒するというものだ。また、顧客が試着したり新たに委託された衣類を別の場所に保管し、店頭に戻すまで72時間隔離する仕事もある。

かつては店頭で衣料品を仕入れて顧客とやり取りすることがほとんどだった同氏の役割は、今や大きく様変わりした。週に2~3日は、ソーシャルディスタンスを保つために、2700平方フィート(約250平方メートル)の店舗ですべての業務を1人でこなしている。

半バーチャル店舗という新たなトレンド

今年に入って、アパレルやファッションの分野を筆頭に、従業員をオンライン販売員として活用する小売業者が増えている。その代表的な例が、アスレジャーブランドのルルレモン(Lululemon)が手がける予約制の仮想接客プログラムで、顧客は離れた場所にいるスタッフから15~30分の個別相談を無料で受けることができる。ルルレモンによれば、このプログラムのおかげで、従業員のレイオフや一時帰休を実施する必要がなくなり、相談が販売につながる確率も高まったという。ただし、スタッフは試着室や店頭で顧客に対応したりカスタマーサービスを提供したりするだけでなく、フィッティングやスタイルのアドバイスを自宅から提供しなければならなくなった。

もうひとつの例は、女性アパレルブランドのチコズ(Chico’s)だ。同社は3月、まだ残っていた従業員の手によってあっという間にデジタルチャネルへの転換を実現した。「幸いにも、彼らにはこのような仕事に適応するためのツールと基盤があった」と、同社オムニチャネルセールス担当シニアバイスプレジデントのローラ・ローラン氏は振り返る。

チコズのスタッフは新たに導入したソフトウェアを利用して、店舗やeコマースでの注文変更について顧客に連絡したり最新情報を提供したりしている。同社は以前から、「スタイル・コネクト(Style Connect)」と呼ばれる個人向けのきめ細かいスタイリングサービスに力を入れてきた。これは予約制の店舗サービスで、顧客に厳選されたアイテムを紹介したりフィッティングのアドバイスを提供したりしている。「私たちは(自社のスタイリングサービスを)店舗の外に広げたいと考えた」と、ローラン氏は話す。

同社はそのために、新しいツールの利用方法を店舗スタッフにトレーニングする必要があった。通常なら、トレーニングはすべて動画を利用するか店舗で実際に行われる。だがこの数カ月間は、ライブバーチャルセッションを利用して、全スタッフがスタイル・コネクトの各種サービスを提供する方法を確実に習得できるようにした。「おかげで、自宅にいるスタッフとコミュニケーションを取って、商品情報や顧客データなどのリソースを提供できるようになった」と、ローラン氏は説明した。

チコズが各地で店舗の営業を再開すると、従業員はさまざまな業務をこなすようになった。店舗によっては、フルフィルメントセンターになったところもあれば、来店を予約制にしたりバーチャルでスタイリングを提案したりしているところもある。スタッフは試着室での体験をバーチャルで再現し、買い物客が友達と一緒に参加できるようなイベントを企画し、運営することを求められた。

こうした取り組みで重要なのは、どのような役割であれスタッフが苦労なくこなせるようにすることだとローラン氏はいう。「オペレーションが得意な人は、ピックアップや梱包に活用できる。テクノロジーに長けた人には、オンラインカスタマーエクスペリエンスの仕事を割り当てている」と、同氏は語った。

求められる多様な労働力

店舗に足を運んだにもかかわらず、最終的にオンラインで商品を購入する人は年々増えている。この状況が、顧客が求めているものと店舗のスタッフが提供できるものとのあいだに「明らかな断絶」をもたらしている。そう指摘するのは、小売業界向けテクノロジーのプロバイダーで、サックス・フィフス・アベニュー(Saks Fifth Ave)やブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)といった小売業者と仕事をしているセールスフロア(Salesfloor)のCEO、オスカー・サックス氏だ。しかし、パンデミックが結果的にこのギャップを埋める役割を果たしているともサックス氏はいう。感染症対策や店舗閉鎖をカバーするために導入された、顧客向けチャットシステムのようなバーチャル店舗ツールや、即日配達や店舗直送といったオプションがそうだ。

こうした新しい環境では、店舗のスタッフが複数の役割をこなしている。また、小売業者もブラウザを使った顧客対応やライブストリーミングといった業務を店舗スタッフに任せているとサックス氏はいう。店舗によっては、フォローアップの電話やテキストメッセージの送信が可能な対話型コマースツールの利用をスタッフに促しているところもある。ただし業務として定着させるためには、店舗の全スタッフがその利用方法に精通していなければならない。「小売業者は、スタッフがオムニチャネルのニーズに適応できるようにする必要がある」と、サックス氏は説明した。

店舗の安全衛生管理やeコマースの運用を短期間で任されるようになったセルマ氏にとって、適応力は欠かせないものだ。「追加の業務は増えるばかりだが、あらゆる人の安全を確保するのに役立っている」と、セルマ氏は語った。

[原文:‘It’s a lot of extra work’: How the pandemic changed the store associate role

GABRIELA BARKHO(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:分島 翔平)