不確かな夏に向けて、準備を整える広告主たち:「このような時期に姿を消すのは危険だ」

通常なら、第3四半期はメディアが小休止を迎える時期だ。気だるい夏の真っ只中に位置する第3四半期は、1年を締めくくる重要な第4四半期の準備に当てられることが多い。広告主にとって今年の夏は、やるべきことが盛りだくさんの夏だ。彼らはいま、かつてない異様な夏に慣れようとしている。

広告主たちは2020年の当初の計画を破棄し、隔離の日々と長引くソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)に関するガイドラインによってもたらされた、新たな消費者行動に順応しようとしている。また今後、新型コロナウイルスによる制限からの解放は不均等な広がりを見せていくと思われる。活気づく地域もあれば、停滞からの脱出にもたつく地域も出てくるだろう。つまり、フライトプランは消えてしまったということだ。広告主たちはいま、前に進みながらルート変更を行なっているのだ。

新戦略が整っているのは約3割

アドバタイザー・パーセプションズ(Advertiser Perceptions)が151人のマーケターとエージェンシー幹部を対象に行った調査によれば、彼らの大半(52%)がいまも計画の変更に取り組んでいるという。すでに新たな戦略を整えているのは、約3割(29%)だけだった。

今年の夏は企業の再起動にうってつけであるように思える一方で、回収不能の第2四半期を終えて、「消える」余裕がある企業などほとんどない。小売店が動かすべき在庫を抱え、レストランもオープンしつつあるが、「ノーマル」な経済生活を取り戻すまでの道のりは依然として険しい。

アドバタイザー・パーセプションズによれば、広告主の28%が、6月末を前に広告費の増額を行っている一方で、半数以上は第3四半期の広告費の増額をいまだに計画している段階だという。

「マクロ環境が厳しいときは、長期的なつながりを構築するためにも、市場にプレゼンスを持つことが必須だ」と語るのは、ジャガー・ランドローバー英国法人(Jaguar Land Rover U.K.)のマーケティングディレクターを務めるアンソニー・ブラッドベリー氏だ。同氏はジャガーブランドの6月のテレビ復帰を統括している。「このような時期に姿を消すのが、もっとも危険だ」。

44%が身動きが取れない状況

ロックダウン(都市封鎖)期間中、広告の大半を休止していたコカ・コーラ(Coca-Cola)も、マーケティングの再開を計画している。同社の中央・東ヨーロッパ事業部でストラテジックコネクションおよびメディア部門のディレクターを務めるバーバラ・サラ氏は、リアルタイムコンテンツの制作とストリーミング、ディストリビューションがコカ・コーラの広告制作・買付に対して果たす役割は、より大きくなるだろうと、IABヨーロッパ(IAB Europe)が6月に開催したカンファレンス「インタラクト(Interact)」で述べた。これらのリカバリー計画を固定されたものではなく、柔軟なものにするために、いままさにさまざまな調整が行われている。

「広告主はいま、自社のマーケット、クリエイティブ、メディア戦略を、かつてないほどのレベルでシャープに、迅速に調整する必要に迫られている」と語るのは、アドバタイザー・パーセプションズでビジネスインテリジェンス部門のエグゼクティブバイスプレジデントを務めるジャスティン・フロム氏だ。「彼らは解約違約金の免除を継続することで、メディアパートナーにその作業を手伝ってもらっている。予算を別のプロパティに再配分し、予算があり消費者がいるときにキャンペーンのスケジュールを再調整するのを手伝ってもらっているのだ」。

こうしたリカバリーの実現の仕方は、広告主によって大きく異なっている。

新型コロナウイルス関連のメッセージを製品に特化した広告に代えるべきときが来たと、約6割(58%)の広告主が述べている。その一方で、ソーシャルディスタンシングに関するガイドラインや、長引く自宅待機命令がもたらす、新たなクリエイティブを制作することの難しさによって、44%が身動きが取れなくなっている。うち半数は、とりわけ新型コロナウイルスと経済の激変に社会不安が加わったいま、自社のメッセージがどうあるべきなのかを把握できないでいる。

頭角をあらわしはじめたCRM

ライブスポーツの再開に対しても、表示されるものに対してのみ料金を支払うという柔軟性がない場合には、広告主はメディア費を投じることに慎重だ。バイヤーたちは、さらなるキャンセルがもたらすダメージのリスクを軽減するため、偶発事項条項や、ブロードキャスターの損失利益に対する保護の明確化を求めている。こうした動きにより、舞台裏映像やファン主導のコンテンツなど、ライブアクションの一線を越えた、多様性に富んだライツ契約が生まれるかもしれない。

「こうしたタイプの契約に適用できる言語が作られることになるのは間違いない」と、ハーリック・ファインスタイン(Herrick Feinstein)法律事務所でスポーツローグループの共同代表を務めるアーウィン・キシュナー氏は語る。「これらの条項は、この先何年も生き続けることになるはずだ」。

さまざまな産業で売上が落ちているいま、これらの問題はキャッシュフローの制限によってさらに悪化している。電通が5月にクライアント701社を対象に行った調査では、今年下半期に向けてもっとも差し迫った懸念として、企業の過半数(54%)がキャッシュフローと回答している。キャッシュフローの不確かさに後押しされる形で、一部の広告主は顧客の獲得ではなく、維持にフォーカスするようになっている。2020年の後半に向けて、CRMが頭角をあらわしてきているのだ。一例をあげれば、CRMはいままさに自動車マーケターにとっての支えになろうとしている。消費者の多くにとっては、自動車は2番目に高価な買い物だ。つまり、とりわけ失業が増加しているときには、その市場は不安定ということになる。

レクサス(Lexus)のCRMマネージャーを務めるマーク・ベントン氏は「各地のショールームが再開しはじめているので、当社の営業は通常に戻りつつあるといえる。私は現在、顧客が次の車を買うのをサポートすること、買った車は点検を受けられることを彼らに伝えることにフォーカスして、仕事を行なっている」。

「許容できる代案」に対してオープンに

ロックダウンが徐々に解除されるのに合わせて、自身が試行を重ねたメディアプランから逸脱しようという意欲が多くの広告主たちのあいだに芽生えてきている。

アドバタイザー・パーセプションズによれば、広告主の半数以上が延期されたライブプログラミングへの出稿を計画していたが、特にエンターテインメントやライフスタイル、ゲーム動画などのコンテンツにおいては、彼らの75%が「許容できる代案」に対してオープンだという。ソーシャルメディアについても同様で、一部のマーケターはこの試練のときにオーディエンスがより大きな存在の一部であることを実感するようになっているのを目の当たりにしている。

「いま、人々はこれまで以上にソーシャルメディアを利用するようになっている。ソーシャルメディアへの出稿にフォーカスすることで、より多くの顧客にリーチできるかもしれない」と、クロックス(Crocs)でEMEA担当マーケティングディレクターを務めるヤン・ル・ボゼック氏は語る。「こうした変化の一環として、クロックスは自社のインフルエンサーに新たなクリエイティブブリーフを渡した。その目的は、彼らの身の安全を損なうようなことはしないように念押しするだけでなく、当社のコアプロダクトの宣伝にフォーカスするように伝えるためだ」。

タイミングを厳格にコントロール

その一方で、 広告主たちはアドレサブルチャネルへの投資も強化している。アドレサブルチャネルのほうが、資金の出し入れが容易であるだけでなく、最適化も容易なためだ。彼らはいま、消費者行動や製品需要、マーケティング予算などの突然の変化に直面している。そんな彼らに必要なのは、タイミングをより厳格にコントロールすることだ。

PHD USでメディアストラテジー部門のグローバルディレクターを務めるテレナ・パトリック氏は「ブランドが結ぶ長期契約は減っている。いま広告主が求めているのは、絶えず変化するいまの世界に対応できる、可能なかぎり柔軟な姿勢なのだ。かつては半年だったかもしれないが、いまは2~3カ月の契約が標準になりつつある。金額は変わらないかもしれないが、契約を結ぶ頻度は変わっている」と述べている。

Seb Joseph (原文 / 訳:ガリレオ)