V・シークレットの妹分、PINKは なぜ苦戦しはじめたか? :「時間の問題だった」

大学生をターゲットに下着や部屋着を販売するPINK(ピンク)は2002年の立ち上げ以降、長年にわたってヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)の花形ブランドだった。

ヴィクトリアズ・シークレットの親会社Lブランズ(L Brands)がPINKの売り上げを最後に公表した2018年の時点で、ヴィクトリアズ・シークレットの年間売上高120億ドル(約1.3兆円)のうち、PINKは約30億ドル(約3296億円)をもたらしていた。しかし、もっと重要なのは、PINKが若い顧客をヴィクトリアズ・シークレットに送り込む役割を果たしていることだ。PINKが存在することで、生涯にわたってヴィクトリアズ・シークレットで買い物する顧客が安定供給される。

そして、2018年、PINKは16年間ではじめて売り上げの減少を報告した。2019年、LブランズはPINKの売り上げ成長率を公表せず、下着をはじめとするPINKの特定部門は「力強い成長」を遂げていると総評するにとどまった。ヴィクトリアズ・シークレットにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

少なくとも、PINKの成長はヴィクトリアズ・シークレットの売り上げ減少を相殺するまでには至っていない。2019年11月、ヴィクトリアズ・シークレットは第3四半期の決算報告で、同一店舗の売り上げが前年同期比で8%減少したと報告していた。

ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)は1月末、LブランズのCEOレス・ ウェクスナー氏が辞任とヴィクトリアズ・シークレットの売却を検討していると報じた。複数の物言う投資家グループが役員を多様化するため、広範な変化を求めているためだという。新しいCEOが何かに重点的に取り組めば、ヴィクトリアズ・シークレットは再び売り上げ増加に転じるかもしれない。しかし、新CEOはブランド改革にも取り組み、PINKの顧客が年齢を重ねたとき、ヴィクトリアズ・シークレットの商品を購入するよう仕向けなければならないのだ。

相互関係がむしろ仇に

ヴィクトリアズ・シークレットの元従業員は「主力ブランド(ヴィクトリアズ・シークレット)に比べ、PINKははるかにトレンドを意識できた」と話す。

複数のアナリストによれば、PINKはインクルーシビティを強調する方向へとマーケティングを見直し、ヴィクトリアズ・シークレットより幅広い体形に対応しているという。さらに、マーチャンダイズも見直し、ウェルネスやアスレジャーなどの新しいトレンドを意識しているという。しかし、いまだヴィクトリアズ・シークレットのブランドとして売り込まれていることを考えると、セクシーさを強調するヴィクトリアズ・シークレットにうんざりしている人々を引き付けるのはやはり難しい。

ジェーン・ハリ&アソシエイツ(Jane Hali & Associates)の小売りリサーチアナリスト、ジェシカ・ラミレス氏は「ヴィクトリアズ・シークレットの事業はPINKに悪影響を及ぼしており、PINKが足を引っ張られるのは時間の問題だった」と分析する。

PINKの期待は、ティーンエイジャーとヤングアダルトの顧客が早い段階でヴィクトリアズ・シークレットに親近感を覚え、PINKからヴィクトリアズ・シークレットの主要顧客へと巣立っていくことだった。PINKの顧客がヴィクトリアズ・シークレットに興味を示すよう、Lブランドは文字通り、ふたつのブランドを隣同士に配置した。米国には現在、ヴィクトリアズ・シークレットの店舗が957あるが、そのうち141カ所では、PINKの店舗が併設されている。

競合よりも乗り遅れている

PINKは2000年代初頭から半ばまで、色とりどりの安価なブラジャーや下着に加え、オリジナルのスウェットスーツで知られていた。しかし、ラミレス氏によれば、若い消費者はカジュアルな部屋着よりアスレジャーを好みはじめており、PINKは短期的に痛手を受けたという。PINKのCEOエイミー・ホーク氏は2019年9月の投資家向け説明会で、スポーツウェアへの投資を強化すると明言した。ホーク氏はスポーツウェアについて、2022年までに10億ドル(約1098億円)規模の事業になると考えている。

「ブラジャーのカテゴリーでは、パフォーマンスウェアやスポーツウェアへの大規模な移行が見られる。米国の小売業界では、5~6のカテゴリーで大きな変化が起きているが、おそらくブラジャーもそのひとつだ」と、カンター・コンサルティング(Kantar Consulting)の最高知識責任者ブライアン・ギルデンバーグ氏は話す。「(そうしたなかでPINKは)少し乗り遅れているように見える」。

アスレジャーの市場は拡大しているが、混雑したカテゴリーでもある。PINKは現在、エアリー(Aerie)や下着のスタートアップに加え、ナイキ(Nike)やルルレモン(Lululemon)、アスレタ(Athleta)とも競合している。

「断固とした手段が必要」

PINKはヴィクトリアズ・シークレットに背を向けた大学生の年代にリーチするため、これまでとは異なるプログラムやマーケティングを用意している。たとえば、大学生アンバサダープログラムに申し込めば、プログラム参加者だけの値引きや大学の近くで行われるイベントの通知を受け取ることができる。また、ラミレス氏によれば、PINKのウェブサイトでは、モデルの多様化が進められているという。

ただし、ヴィクトリアズ・シークレットの店舗に付属しているという性質上、PINKが独自のブランドアイデンティティを創造するのはやはり難しい。

カンターのギルデンバーグ氏は「差別化には何らかの断固とした手段が必要になるだろう」と述べている。

Anna Hensel(原文 / 訳:ガリレオ)