「実店舗」に回帰する、EC専門 米・アパレル企業の思惑:顧客フィードバックを求めて

オンライン専門への移行から10年余を経て、レディースファストファッションリテーラー、ルルズ(Lulus)が実店舗への回帰を計画している。

2008年、ルルズ(Lulus)はすべての実店舗を売却し、オンライン専門ブランドに転身した。この戦略が効を奏し、同社は実店舗を維持していたら不可能だったに違いない規模での成長を遂げた(成長率毎年およそ50%)。だが、CEOコリーン・ウィンター氏によれば、そのなかで価値あるツールをひとつ手放してしまったという。それは、目の前の顧客から直接寄せられるフィードバックだ。

そこで、ルルズ(Lulus)は9月第4週、ロサンゼルスに初のポップアップストアを開くことを決めた。ウィンター氏が新たな実店舗戦略の第一歩と位置づけるこの店を通じ、同社は顧客と直接やり取りできる時間を多少なりとも取り戻したいと考えている。

「店舗を売却した際、顧客との直接の接点を失うのは非常に辛かった」と、ウィンター氏。「オンラインでの対話はごく表面的なものになりかねない」。

戦略に欠かせない存在

ウィンター氏によれば、顧客からのフィードバックはルルズ(Lulus)の戦略に欠かせない存在であり、同社の行動のほぼすべてに役立てているという。同社は現在も、出荷・配送からユーザーエクスペリエンス、商品に至るまで、すべてについて寄せられる大小さまざまな数千ものフィードバックを管理している。こうした声はソーシャルメディア、自社サイト上のレヴュー、電話やチャットでのカスタマーサービス、カリフォルニア州各地でインフルエンサーを招き定期的に開催しているイベントなどで収集したもので、ウィンター氏は毎日、自らこれに目を通し、必要に応じた対策を迅速に講じている。

「調査に関するミーティングのない日は1日もない」とウィンター氏は断言する。氏の言う調査とは、同社がeメールで顧客に定期的に送っているアンケートのことで、ときには抽選で金銭的インセンティブも与えている。「たとえば、同じサイズのものを2枚買ったのに、片方は合わなかったという声が寄せられたことがあった。そこで直ちにその顧客の過去1年間の注文をすべて見返し、こちらにエラーがなかったか、丹念に確認した。我々はつねにそれくらい徹底的に対応する。その顧客に連絡を入れ、問題の解決に向けて丁寧にフォローし、ひいてはそれがサイズのバラつきの改善に繋がった」。

全店舗を売却後も、ウィンター氏は即時のフィードバックを求め、自社ブランドや自社が開催したイベントに関するハッシュタグ付き投稿を熱心にチェックしていたが、それらは顧客との直接のやり取りや彼らの動向の観察ほど有用ではなかったという。ポップアップストアが開店すれば、来店者に店舗、場所、商品に関する意見を求めるアンケートをはじめ、フィードバック収集の機会が格段に増えることになるだろうと、ウィンター氏は期待を寄せる。ルルズ(Lulus)はまた、商品デザインや新商品の発表方法にも顧客フィードバックを活かしている

「顧客フィードバックのおかげで、ユーザーエクスペリエンスに関する最大の問題をいくつか解決でき、顧客が具体的に何を求めているのかも知ることができている」と、ルルズ(Lulus)のブランドディレクター、ステファニー・ガイト氏は語る。「たとえば、モデルだけでなく、自分たちと同じような外見の人々が着ている姿を見たい、というリクエストが多数寄せられた。予想以上に時間はかかったが、フォトレビューを導入し、さまざまなサイズを着用している人々の写真が体系別に見られるようにした。多くのお客様から好評をいただいており、それはこの方法が成功している証だと弊社は受け止めている」。

両者の適正なバランス

ただし、顧客フィードバックに基づいてフォローおよび調整する一方、鍵となるブランドアイデンティティを忘れず、フィードバックを文字どおりに受け取らなくても良い時と場合を見極め、両者の適正なバランスを取ることが往々にして困難であることもまた事実だ。

たとえば、同じく顧客フィードバックを社の意思決定に大いに反映しているアクティブウェアブランド、ローン(Rhone)のCEOネイト・チェケッツ氏は、多くの顧客には全体像が見えておらず、そのため彼らのフィードバックが十分に活用できない場合も少なくないと語る。

「消費者は必ずしも商品開発プロセスの理解に長けているわけではない」と、チェケッツ氏。「着用試験中、これは完成品ではないと伝えたとしても、それがなかなか[理解]できない消費者もいる。たとえば、それはあくまでもサンプルなのに、違う色のものはないのか、という声が寄せられることもある。当然、我々は色違いも作っているわけだが。そういった枝葉末節に囚われず、彼らの声に込められた思いに焦点を合わせられるようになるまでには、正直、少々時間がかかった」。

ポップアップが基本戦略

ルルズ(Lulus)の今後の展開について、ウィンター氏はいまのところ常設店に関する具体的な計画はないという。その代わり、ポップアップストアを基本戦略として推し進め、まずは西海岸からはじめ、続いてほかの米地域への進出も考えていく。この判断についてもやはり、顧客の反応が鍵となるという。

「ポップアップの営業を続け、顧客の反応がもっとも良い店舗がどこなのかに注視し、そこが将来的に常設店を建てる場所としてふさわしいか否かを見極めていく」と、ウィンター氏。「それが我々のいまいる地点だ。米市場には成長できる余地がまだまだ残っている」。

DANNY PARISI(原文 / 訳:SI Japan)