デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドなど北欧諸国で、美容ブランドがD2Cや最近では小売チャネルでも成功を収めている。 創業から5年になるインフルエンサー主導の美容ブランド「カイア・コスメティックス(Caia […]
デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドなど北欧諸国で、美容ブランドがD2Cや最近では小売チャネルでも成功を収めている。
創業から5年になるインフルエンサー主導の美容ブランド「カイア・コスメティックス(Caia Cosmetics)」は10月12日、スウェーデンの高級老舗デパート「ノーディスカ・コンパニー(Nordiska Companiet)」で、初となるポップアップストアをオープンした。同国のニュースサイト『Breakit』によると、入店を待つ長蛇の列が店舗の周りにできたという。ストックホルムに本拠を置くカイアは何年ものあいだ、百貨店からのオファーを受けてきたが、適切な場所を求めて固辞してきたのだと、創業者のビアンカ・イングロッソ氏は語る。理想としてきたのは、カスタマイズが可能で、グロシエ(Glossier)のように「エディトリアル」な商品ディスプレイをできる場所だという。2017年に創業したカイアは、昨年4000万ドル(約60億円)の収益を上げた。イングロッソ氏にはインスタグラムで130万人、TikTokでは約40万人のフォロワーがいる。
カイアは、人気のデューイ・ドロップス・セラム・ファンデーション(Dewy Drops Serum Foundation)やザット・デューイ・ルック・セッティング・スプレー(That Dewy Look Setting Spray)など、輝きにフォーカスしたカラーコスメを展開している。価格帯は25~35ドル(約3,800~5,300円)。デューイ・ドロップスは4月に発売され、2カ月で完売した。
Advertisement
「北欧では、最高のメイクアップツールは笑顔だと言われている」とイングロッソ氏。「だから、その笑顔をさらに良くし、自然に見える商品が最も効果的だ」。
「北欧の美容とは、美しさや自然な肌を強調すること」と語るのは、フィンランドのスキンケアブランド「ルメネ(Lumene)」の北米担当ゼネラルマネージャー、ヨハンナ・パービライネン氏だ。「また、数滴をブロンザーとしてなじませたり、ハイライターとしてのせたりと、マルチに使える商品にも注力している。私たちが北欧ならではの輝きについて語るのは、これが上辺だけに付け足した美しさではなく、内面からの美しさのように見えるからだ」。
北欧のファッションも独特で、ガニー(Ganni)、ノルウェージャンレイン(Norwegian Rain)の実用的なアウター、マリメッコ(Marimekko)のニッチなアクセサリーなど、カラフルなアイテムが有名だ。ペルニーレ・タイスベック氏やエミリー・シンドレフ氏などのインフルエンサーも、北欧らしい色づかいをファッション界に定着させるのに一役買った。
カイアのほかブランドとの差別化要因は製品の品質にあると、同社CEOであるヨハンナ・ハムレン氏は語る。「私たちは、世界最高レベルの工場と協業している」と同氏は、イタリアのある製造業者について述べた。「インフルエンサーが立ち上げたブランドの中には、創業者の顔を広告に載せるだけで、質の悪い商品を売っている印象を受けるものもある」。
同氏はさらに続ける。「私たちが作っているような商品は、通常であれば高級ブランドにしか提供されない。しかし私たちにはD2Cチャネルがあるため、商品をより低価格で供給できる。製造業者からは価格を上げるよう求められたが、私たちにはロイヤルティの高いコミュニティーがあるため、今年までは断ってきた」。
カイアでは今年1月、全商品の価格を2ユーロ(約325円)値上げした。「顧客は、私たちが思っていたよりも、価格に敏感ではなかった」とハムレン氏は話す。
同ブランドでは品質に重点を置くとともに、特にTikTok向けの面白いソーシャルコンテンツにも注力してきた。「キャンペーン、商品のストーリー、メイクアップのチュートリアルを視聴する時間をとってもらうには、とても面白いか、見ていて何か感じ入ってもらうものでなくてはならない」とイングロッソ氏は言う。
この夏は、ジャメリアの楽曲『スーパースター』をイングロッソ氏がカバーしたミュージックビデオを、MTVやスポティファイと共に制作してリリースした。この動画はTikTokやインスタグラムで公開され、限定版の商品も発売された。動画は現在までに1,500万回以上再生されている。「カイアの今後の展開に、大いに期待してほしい」。
現在、カイアは欧州での存在感を高めることに重点を置いている。スウェーデンやノルウェーではすでに大きな市場を持っており、ドイツや英国にも進出している。「ブランディングに注力し、(スウェーデンの)顧客と同様の関係を築こうとしている」とイングロッソ氏。「たとえば英国は大規模な市場で、傑出するためには何か違うことをしなくてはならない」。
外へと進出している北欧ブランドは、カイアだけではない。「英国やフランスなど欧州の多くの市場では、スキンケア成分を配合したメイクアップへの需要が大きい」と語るのは、ルメネのグローバル・シニア・ブランドマネージャーのヨハンナ・パヤラ氏だ。「商品の品ぞろえだけでなく、流通の拡大も私たちの優先事項だ」。
他にもデンマークのボディオロジスト(Bodyologist)や、スウェーデンのヴェルソ・スキンケア(Verso Skincare)などの北欧ブランドが人気を集めている。
データ分析プラットフォームのスタティスタ(Statista)によると、北欧では今年、美容・パーソナルケア市場の収益が72億5,000万ドル(約1兆円)に達すると予測され、その23.9%がオンラインによって生み出されるという。2028年までの年間成長率は平均2.57%が見込まれる。米国では、美容・パーソナルケア市場は970億ドル(約14兆円)に達している。
[原文:Is Stockholm beauty the next Stockholm fashion?]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)