インフルエンサー 活用、成功の鍵は「育成」にあり?

インフルエンサー「育成」の理由を探っていこう。

コリー・マルキソット氏が、2月に美容ブランドのe.l.f.コスメティックス(e.l.f. Cosmetics)のCMOに就任したとき、同氏をもっとも驚かせた構想のひとつが「ビューティースケイプ(Beautyscape)」プログラムだった。マイクロインフルエンサーの育成プログラムとして立案されたもので、マルキソット氏はそれまで、ビューティースケイプについて聞いたことがなかった。ましてや、このプログラムが打ち出されてから2019年で4年目になることなど、知るよしもなかった。

「e.l.f.コスメティックスに来て、ブリーフィングを受けたときに、ビューティースケイプがそれまで見たことがない独特で例外的なアクティベーションであることに気付いた」と、マルキソット氏はいう。

そうしたことから、20年の経験を持つ美容のベテランとして、マルキソット氏はビューティースケイプの知名度を高めることに乗り出した。プログラム誕生から4年目を迎え、e.l.f.コスメティックスがバッスル(Bustle)とメディア提携したところ、参加者は2018年の約600人から2019年には1400人に増えた。最終的に、25人のマイクロインフルエンサーが、バハマで11月に4日間にわたって行われたビューティースケイプに参加し、ウェヘア(Ouai Hair)のジェン・アトキン氏やチルハウス(Chillhouse)の創業者でCEOのシンディ・ラミレス氏といった講演者の話を聞いた。費用はすべてe.l.f.コスメティックスが負担した。e.l.f.コスメティックスは、ビューティースケイプへの投資総額を公表しないが、(ビューティースケイプも含まれる)マーケティングおよびeコマースへの支出は、2018年には予算の6%を占め、2020年には約14%に増加すると述べた。5人のインフルエンサーが、優勝チームの一員として各自1万ドル(約100万円)を獲得し、2020年に発表されるカプセルコレクションでe.l.f.コスメティックスと協働する。ふさわしいことに、米小売大手ターゲット(Target)が、その商品ラインナップを独占的に扱う小売業者となる。

新しいタレントとの新しい関係

マイクロインフルエンサー育成でe.l.f.コスメティックスが行った目立った試みは、セフォラ(Sephora)の2月に始まったアンバサダープログラム「セフォラ・スクワッド(Sephora Squad)」に倣っている。セフォラの場合は、1万6000件以上の申し込みがあり、24人の専属インフルエンサーを得た。さらに多くのこうしたプログラムが、市場に出現しつつある。ジェームズ・チャールズ氏とYouTubeは、2020年に初公開されるコンペティションシリーズで、次の大物美容インフルエンサーを探すと発表した。もちろん、こうした取り組みすべての目標は、才能ある新進の人材との新しい関係を育むことにあるが、インフルエンサー契約に掛かる費用の上昇を回避するというメリットもある。

「これらのプログラムは、マーケティング・アクティベーションの一部の取引的な性質に反応して出現しているのだと思う。ブランドがインフルエンサーから1件の投稿を買い、その後は二度と協働しない状態に至っている。あまり誠実ではないし、コミュニティと無関係だ」と語るのは、セフォラ・スクワッドの立ち上げを手伝ったフォール(Fohr)の創設者で、CEOのジェームズ・ノード氏だ。

だが、これは悪いことではないかもしれない。

インフルエンサーのキャリアへ投資

フォロワーが5万人以下のマイクロインフルエンサーは明らかに、美容系ユーチューバーのジェフリー・スター氏のような大物インフルエンサーよりも安上がりで、インスタグラム(Instagram)への投稿が1件当たりおよそ200~500ドル(約2万〜5万円)で済む。e.l.f.コスメティックスのビューティースケイプやセフォラ・スクワッドのような機会により、こうしたマイクロインフルエンサーは、全体的に露出度を高め、正当性を示せるだけでなく、再び生じる収益の問題も解決できる。

セフォラ・スクワッドは、その両方をこなしてきた。メンバー24人の、マイクロインフルエンサー全体のリーチを見ると、春の時点の約25万人から100万人にフォロワー数が増加したと、ノード氏は語る。興味深いことに、セフォラ・スクワッドのふたりのインフルエンサー、エリック・カンポス氏とクリスティーナ・ベガ氏は、たまたまビューティースケイプにも参加しており、露出度が高まっていることを示していた。

「インフルエンサーに美しい旅をさせ、大量の写真を撮ってコンテンツを制作するのが目的ではなかった。これらのインフルエンサーとそのキャリアに投資していることを示したかった」と、マルキソット氏はいう。

ブランドにもたらされる良い結果

早期のインフルエンサー育成はこれまで、ほかのブランドに良い結果をもたらしてきた。マックコスメティックス(MAC Cosmetics)は、2017年に5つのコレクションの取り組む際、以前同ブランドのメーキャップアーティストをしていた美容系ユーチューバー、パトリック・スター氏が築きつつあった名声を利用することができた。また、アナスタシアビバリーヒルズ(Anastasia Beverly Hills)やジェン・アトキン氏のウェヘアのような新興ブランドは、ペイイットフォワード(親切の輪の引き継ぎ、拡散)の手段として、新しいインフルエンサーに定期的にスポットライトを当てた。一方、ノード氏は、セフォラと協力して、セフォラ・スクワッドを立ち上げるのに先立ち、2018年11月に独自の試験プロジェクト「フレッシュマン・クラス(Freshman Class)」を開始した。このプロジェクトの実施期間中、フォールは2万5000ドル(約273万円)を投資し、新進インフルエンサーにエンゲージした。フォールはフレッシュマン・クラスをニューヨークに派遣し、セミナーの機会を設けて、絶えず変化するインフルエンサー事業について指導した。

「マイクロインフルエンサーによって優れた業績を上げているブランドは、アーンドメディアの成長の面でより優れている傾向がある」と、トライブ・ダイナミックス(Tribe Dynamics)の共同創業者でプレジデントのコナー・ベグリー氏は語る。

その根拠は、トライブ・ダイナミックスのデータによると、市場にいるインフルエンサーの79%はマイクロインフルエンサーで、彼らは皆、互いに密接につながっているからだ。美容ブランドがそのひとりをリグラム(インスタグラムでのリポスト)すれば、ほかのインフルエンサーがそれを見て、その企業について話す可能性が高くなる。その良い例が、ブランドのファンと自然にやりとりをはじめたイル・マキアージュ(Il Makiage)だ。同ブランドでは、620人のインフルエンサーとの協働に基づいてアーンドメディアバリュー(Earned media value:EMV)で前年比540%の変化が見られた(インフルエンサーによる変化は前年比191%)。

「毎年、6%のマイクロインフルエンサーが10万の大台を突破するだろう」とベグリー氏は述べ、2019年の投資が長期的な利益を上げることを説明した。「現在500人のマイクロインフルエンサーと協働していれば、そのうち30人が来年、その大台を超え、10万人のフォロワーを獲得したら、約24%はフォロワー数が30万人に突入するだろう」。

より大きな美容市場の変化

e.l.f.コスメティックスは、先述したように、ビューティースケイプへの投資総額を公表していない。だが、(ビューティースケイプも含まれる)マーケティングおよびeコマースへの支出は、2018年には予算の6%を占め、2020年には約14%に増加するという。バッスル側は、e.l.f.コスメティックスとの提携は、従来型の宣伝契約ではまったくなく、デジタルプロパティのPRでもあったと説明した。バッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group)のCRO、ジェイソン・ワーゲンハイム氏によると、デジタルチャネルで11月21日にはじまる、いくつかのエピソードからなるシリーズのための活動を記録するために、撮影班を派遣するなど、ビューティースケイプに関する取り組みに「7~9万ドル(700〜900万円)」を支出したという。

明らかに、e.l.f.コスメティックスにとって希望が持てるのは、バッスルとターゲットは1度限りの契約ではなく、より大きな美容市場の変化を示している点だ。

「我々はみな、より賢明になりつつある。競い合うのではなく、同じプログラムの下でパートナーをひとつにまとめようとしている」と、ワーゲンハイム氏はいう。「バッスルとともに『ジェリー・ポップ(Jelly Pop)』(e.l.f.コスメティックスのスイカの香りのコスメコレクション)のキャンペーンを行ってもサイロ化されず、インフルエンサーがまったく違うことをしているのに、ターゲットの店舗にはほかの商品がある」。

セフォラ・スクワッドも、マイクロインフルエンサーがフェスティバルコンセプト「セフォリア(Sephoria)」や、新興美容ブランド向けのインキュベータープログラム「セフォラ・アクセラレイト(Sephora Accelerate)」に参加していたので、そういう意味で役に立った。

マイクロインフルエンサーの利点

家族的側面を超えて、マイクロインフルエンサーの方が、同じ美容ブランドについて自然な形で繰り返し話すのもうまい。

「ブランドが何度も消費者の正面に出る必要があり、大物インフルエンサーでそれをすると非常に費用が掛かるとわかっている。だから、基本的にマイクロインフルエンサーがリターゲティングを行うことに、戦略的な意味がある」と、フォールは述べている。

だが、ビューティースケイプで講演したアトキン氏は、ほかの何かが効果をもたらしていると考えている。

「人々は、現実にいる人々が勝ったり成功したりするのを見るのが大好きだ。『アメリカン・アイドル(American Idol)』や『ザ・ ヴォイス(The Voice)』にはじまり、いまはインスタグラムでリアルタイムでそういうことが行われている。それがもっと大がかりに美容の世界でそれが起きつつあるということは、起きる運命にあったということだ」と、同氏は述べた。

Priya Rao(原文 / 訳:ガリレオ)