今、ファッション業界で投資家から比較的注目を集める分野が高級ファッションのリセール業界だ。そもそも中古高級ブランド品の売買市場はパンデミックの影響を受けておらず、そこへ百貨店の凋落も重なり、リセール企業への注目は高まっている。活発な資金調達も始まっているリセール市場は、今後どのような動きを見せるのか。
今、ファッション業界で投資家から比較的注目を集める分野があるとすれば、それは高級ファッションのリセール業界だろう。
4月以降、高級ブランドをリセールするリバッグ(Rebag)やファッションファイル(Fashionphile)、ヴェスティエールコレクティブ(Vestiaire Collective)、ラグジュアリークローゼット(The Luxury Closet)への投資額は合計で1億3400万ドル(約141億円)に達した。これはほかの苦戦を続ける小売分野と比べるとはるかにいい数字だ。市場調査会社グローバルデータ(GlobalData)は6月のレポートのなかで、リセール市場の今年の市場規模は70億ドル(約7400億円)で、これが2024年には360億ドル(約3兆8000億円)にまで伸びると予測している。
リセールへのニーズの高まり
8月26日にも、ファッションファイルが投資ファンドのニュースプリング(NewSpring)を筆頭に3850万ドル(約40億円)の資金調達を発表している。また昨年は、百貨店チェーンのニーマン・マーカス(Neiman Marcus)が破産申請前にファッションファイルに少額の投資を行っている。ファッションファイルの代表は米DIGIDAYの姉妹メディアであるグロッシー(Glossy)に対し、今回の投資は主に米国および世界各地におけるフルフィルメントの新施設の立ち上げに使う予定だと語っている。
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ファッションファイルは4月にショールームをすべて閉鎖し、オンライン販売に切り替えている。その過程で運輸大手のUPSとも提携しており、服を買い取ってもらいたいカスタマーの自宅に無料で訪問するサービスを提供している。現在のファッションファイルは完全にオンライン企業へと変貌しており、4月に過去最高の売上を達成している。
ニュースプリングのプリンシパル、ハート・カラハン氏は「リセール市場は急速に成長している。これは需要の高まりに加えて、EC自体のトレンド、持続可能性への関心の高まりが牽引材料となっている」と分析する。「新型コロナウイルスのパンデミックや不況への懸念は、リセール市場にとっては追い風だ。中古高級ブランド品の売買のニーズはさらに増えるだろう」。
パンデミックによるリセール需要の高まりには、いくつかの理由がある。投資調査会社CFRAリサーチ(CFRA Research)のシニアエクイティリサーチアナリストを務めるカミラ・ヤヌシェフスキー氏は、消費自体の低下に加えて、再販の持続可能性が有するZ世代への訴求力を要因として挙げている。リセールEC企業のスレッドアップ(ThredUp)は、パンデミックによって古着を売る人が増え、業界に供給と新規カスタマーが増加したと指摘している。
百貨店凋落の隙間を埋める
4月には、ヴェスティエールコレクティブがコーリャキャピタル(Korelya Capital)、ボルティア7(Vaultier7)、クアインベスト(Cuir Invest)などのベンチャーキャピタルから6300万ドル(約67億円)の資金調達をおこなっており、2009年の創業以来、合計で2億ドル(約210億円)以上の資金を調達している。同社の広報担当によれば、調達した資金は中国を除くアジア市場、特に日本と韓国を中心として国際展開に使う予定だという。同社の売上高は、今年6月に前年同月比で119%、7月に144%の伸びを記録している。
ビューティブランドであるフーダビューティ(Huda Beauty)の投資部門、フーダビューティ・インベストメンツ(Huda Beauty Investments)は、8月26日にドバイを拠点とするリセールプラットフォームのラグジュアリークローゼットへの資金提供を発表した。同社は正確な投資額を明かしていない。だがフーダビューティの共同創業者、モナ・カッタン氏が取締役に就任することもあり、フーダが同社の主要株主になるには十分な額と考えられる。ラグジュアリークローゼットは中東で最大のリセールプラットフォームであり、米国事業も売上の30%を占める。同社は昨年1億2000万ドル(約130億円)を超える高級品を販売しており、フーダ以前にも1800万ドル(約19億円)の資金調達を受けているという。
ヤヌシェフスキー氏は、CFRAリサーチが数カ月前から明らかにしていた百貨店の暗い見通しが現在も続いており、それがリセールプラットフォームの台頭につながっていると指摘する。同氏は「パンデミックのさなかにあって、中古品市場は非常に好調だった」と語る。「そして予測されていた通り、多くの小売大手が大幅赤字を計上した。消費者が今重視しているのはオンライン販売、割引、そしてブランドからの直接購入だ。オンラインと割引はまさにリセールが提供するメリットとなっている。高級品を扱う小売店ではオンラインや割引モデルの採用が遅れている。百貨店の凋落はこれまで長いこと続いてきたが、それによって生まれた隙間を再販企業が埋めている状態だ」。
無視できない一次市場の状況
百貨店によるブランドへの注文キャンセルも相次ぎ、それにより発生した過剰在庫を解消する方法の一つとして、ブランドがリセールプラットフォームへと商品を流すケースも増えている。
だが、リセール市場にとっても一次市場がうまく回ることが重要であり、一次市場の不況がリセールのブームに影を投げかける可能性は残されている。
[原文:Investors have poured more than $134 million into luxury resale since April]
DANNY PARISI(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)