経済的な逆風が美容業界に影響を与えているが、そのなかで依然として好調な分野のひとつが香水だ。香水メーカー「インター・パルファン（InterParfums）」を例に挙げてみると、モンブラン（Montblanc）やジミーチュウ（Jimmy Choo）など20以上のファッションブランドや高級品ブランドのライセンスを持つ。最新の決算短信によると、2023年の第一四半期は売上が24％増加し、売上高が10億ドル（約1,418億円）を超え、同社の40社の歴史のなかで過去最高となった。

その成長の原動力について、インター・パルファンのCEO兼共同設立者であるジャン・マダル氏がGlossyビューティ・ポッドキャストの最新エピソードで語った。パンデミックが始まって以降に香水の売上が世界的に急増していることや、香水は高級ブランドにとって新規顧客を呼び込む手段だと述べる。そして、セレブリティの美容ブランドがほぼ毎週といっていいペースで市場に登場するなかで、インター・パルファンのライセンス事業はあくまでもファッションブランドのパートナーだと明言する。移ろいやすいセレブリティの香水のライセンス事業に、同社がなぜ興味を持っていないかについて、マダル氏は説いた。

Advertisement

以下はポッドキャストで語られた内容を読みやすさのために要約し、編集を加えたものである。

Subscribe: Apple Podcasts • Stitcher • Google Play • Spotify

香水の「クレイジー」な成長

「正直なところ、私たちはクレイジーな世界にいるし、香水にとってもクレイジーな時期といえる。過去2年間で、香水の事業は非常に注目を集めた。これまで20～30年間ほど、このセグメントの成長は年2～3％増と非常に小さなものだった。過去2年で状況は変わり、COVID-19の期間中に人々はeコマースで香水を買うようになった。eコマースで香水を買うというのは、香りを嗅ぐことができないため、非常に複雑だ。『これはいい香りだ』とか『このような香りだ』と話す人を、信頼しなくてはならない。香りではなく言葉で、感情を作り出さなくてはならないのだ」。

セレブリティの香水に興味は無い

「結果をみると、10～20回ローンチして成功するのは1回。これはサイクルだ。ジャスティン・ビーバーの香水があったが、今日どこで売られているだろうか？　まったく見当たらない。おそらくもっとも長く続いたのは、エリザベス・テイラーの香水『ホワイト・ダイヤモンズ』ではないだろうか。セレブリティの香水の栄枯盛衰を分析してみると、香水が売れれば売れるほど、その後の売れ行きは悪くなる。ブルーミングデールズ（Bloomingdale’s）で売り出して、最後はウォルマート（Walmart）で売る、といったように。これは、インター・パルファンの事業モデルではない。私たちはゆっくりと進むことを好んでおり、この戦略で多くの機会を失ったことも間違いない。非常に多くのセレブリティが売り込みに来たが、断ってきた。それがその当時の、そしていまも、当社のポリシーだからだ」。

身近な贅沢としての香水

「香水はファッションブランドにとって、新しいメッセージを伝え、新しい顧客を獲得するための最適なツールだ。たとえば私たちはグラフ（Graff、ジュエリーブランド）の香水のパートナーだが、彼らはダイヤモンドを何百万ドルもの金額で販売しており、2万ドル（約286万円）に満たないものは何も売っていない。500ドル（約7万円）というのは香水としては高額ではあるものの、特別感ある高級な世界に足を踏み入れることができるのだ」。

［原文：InterParfums CEO Jean Madar on surpassing $1 billion in sales during a ‘crazy moment for fragrance’］

LIZ FLORA（翻訳：田崎亮子／編集：山岸祐加子）