インスタグラムは12月14日(米国時間)、新しい「保存機能」を発表した。ユーザーが気に入った投稿をブックマークしておいて、あとから見直せるようにする機能だ。これによりブラウジングツールからキュレーションツールへ進化したインスタは、正面切ってPinterest(ピンタレスト)の領域に踏み込むことになった。
インスタグラムは2016年12月14日(米国時間)、新しい「保存機能」を発表した。ユーザーが気に入った投稿をブックマークしておいて、あとから見直せるようにする機能だ。発表されてから数時間後、さっそくアウディは、この機能を使った面白いハックを提供している。
アウディは、9つに分割した「Audi R8」の画像を自社のインスタグラムのページにランダムに投稿し、ユーザーに各ピースをブックマークしたうえ、それらを正しく並べ替えてパズルを完成させるよう促したのだ。パズルを完成した人は、自身のインスタグラムのプロフィールにある「保存済み」タブで、完全なAudi R8の画像をシームレスに見られるようになる。パズルはこれまでに3200回以上完成されている。
広告代理店マフタイジク・ホファー(Muhtayzik Hoffer)の創設者でエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターのジョン・マテジスク氏はこう語る。「我々は常に、クリエイティブになれるアップデートを探している。これは、子ども時代に戻ってパズルのピースを並べ替えてもらうという、我々がずっと暖めてきたアイデアを実現するのに、またとない完璧なチャンスだった」。
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Pinterestを追撃

インスタグラムの「保存済み」を利用したアウディのパズル
アウディは新機能を最初に利用したブランドのひとつになったが、今後はアウディに続いて、多くのブランドがこの保存機能を使ったさまざまな試みを行うだろう。インスタグラムを単なるブラウジングツールからキュレーションツールへと変化させた保存機能によって、インスタグラムは正面切ってPinterest(ピンタレスト)の領域に踏み込むことになった。
デジタスLBi(DigitasLBi)でソーシャル戦略担当シニア・バイスプレジデントを務めるジル・シャーマン氏は、インスタグラムのこの動きについて、表面的には重大なものには見えないかもしれないが、Pinterestでもっとも人気のある機能のひとつをターゲットにしているのは明らかだと述べる。
「人々は何かを発見したり、インスピレーションを得たりするためにインスタグラムへ行く。だから、この機能を実装することは論理的に正しい」と、シャーマン氏は述べる。「(スクロールされるため)30秒ほどしかなかったブランド投稿の寿命が、3カ月に延命される可能性がある。いや、もっと長くなるかもしれない」。
ブランド投稿の延命
さらに重要なのは、特にインスタグラムが先頃発表したほかの一連のアップデートと連動して、この機能がちょっとしたハック以上の大きな長期的影響をブランドに与えることだ。
インスタグラムは2016年11月、ストーリー内にリンクを設置できる機能を追加した。ブランドやビジネスがこれを利用すれば、コンテンツのPRをしたり、eコマースでの販売を行ったりできる。インスタグラムはさらに、いくつかのパートナーを選び、買い物ができる写真タグのテストも進めている。こうしたeコマース関連のテストが成功して実際のビジネスへと成熟すれば、保存機能を簡単に収益化につなげることができるだろう。ユーザーに製品情報を保存させ、あとから購入させることが可能になるのだ。
ソーシャルメディアエージェンシー、ランドリー・サービス(Laundry Service)の最高マーケティング責任者(CMO)を務めるマイク・ミクホ氏はこう語る。「短期的な意味では、ブランドはまだ、人々が保存しているものにアクセスできないが、それが将来的に何を意味しうるかを考えなければならない。これは明らかに、インスタグラムがeコマース機能をより重点的に導入する動きを示すものであり、ブランドが視点をデータから商取引に移すという明確な意味合いを持っている」。
この機能が示す意味
ソーシャルメディア、レイザーフィッシュ(Razorfish)のシニアディレクターを務めるマット・ハインドル氏は、リードタイム(発注から納品までの時間)が長い製品をもつブランドには、この機能が特に役立つと考えている。たとえば、ブライダルやウェディング関連、住宅リフォームなど、消費者がブラウジングしながら事前にバーチャルなイメージボードを作成する分野に向いている。住宅リフォーム・生活家電チェーンのロウズ(Lowe’s)のようなブランドなら、ペンキのブランドや室内装飾のインフルエンサーからの画像を保存している人をターゲットにできるだろう。
だが、ブランドにとっての最大の勝機は、インスタグラムが集めたデータを利用して、広告のターゲット化をはじめるときにやって来そうだ。こうしたアップデートの情報が公式ブログの「Instagram for Business」タブ内に納められていることを考えれば、これはあり得ない話ではない。ブログ投稿にも次のように書かれている。「気に入った新製品や印象的な広告など、ビジネスで覚えておきたいことに出会ったインスタグラマーのみなさん、プロフィールから直接お気に入りを追跡できるようになりました」。
ジャイアント・スプーン(Giant Spoon)のソーシャル担当アソシエイトディレクターを務めるウィル・トンプソン氏は、「今後はこれが、有料ターゲティング広告を目的としたもうひとつのデータポイントとして使えるようになることは間違いない」と述べる。「投稿を保存するようにしむける、たくさんの働きかけが行われるだろう。アルゴリズムにも影響し、ブランドのコンテンツがフィード内に表示される可能性も高まってくるだろう」。
Tanya Dua(原文 / 訳:ガリレオ)