アメリカにおける最近の健康ブームを牽引する「Whole30(ホール・サーティー)」プログラム。「典型的なダイエット法というより、食生活の改善方法に関する教育的なプログラム」だと支持を得ている。そのインスタグラム活用法は、草の根レベルでコミュニティと関わり合い、ブランドの前進に役立てるというものだった。
1月に友人からはじめて「Whole30(ホール・サーティー)」プログラムについて聞いたとき、レイチェル・ジェンセン氏はすぐ一笑に付した。なにしろ、生まれてからずっと、一時的ブームに終わるようなダイエット法には反対だった。だが、わずか半年ほど経ったころには、試してみようと決意し、インスタグラムのフィードをスクロールしていた。
「一番のきっかけは、エンゲージメントの高いインスタグラムのコミュニティだった。典型的なダイエット法というより、食生活の改善方法に関する教育的なプログラムだと気づいた」と、ジェンセン氏は語る。
ジェンセン氏だけではない。Whole30プログラムは、最近の健康ブームの冠たるものとして登場した。30日間で食生活を「リセット」する厳格なプログラムで、乳製品、穀物、豆類、アルコール、砂糖、加工食品を断つことを誓う。心臓の弱い人や衝動に駆られやすい人には向かない。ジムで聞いたことがなくても、インスタグラムで「#whole30」が含まれたさまざまなハッシュタグが付いた投稿を見たことがあるはずだ。このプログラムに従うことは、ソーシャルメディアで経過を配信することでもある。
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型破りなアプローチ
Whole30は、ソルトレークシティの栄養学者、メリッサ・ハートウィグ氏とダラス・ハートウィグ氏が2009年にはじめたプログラム。両者による、はじめての著書『The Whole30: トータルヘルスとフードフリーダムへの30日間ガイド(The 30-Day Guide to Total Health and Food Freedom)』が2012年に発売されて盛り上がり出した。以来、デジタルマーケティングに対する型破りなアプローチで、たくさんのダイエット法やフィットネスプログラムがひしめく市場に着実に進出してきた。
従来のチャネルの代わりに、Whole30は、ユーザー生成コンテンツ(以下UGC)や、インフルエンサーを利用した草の根のアプローチ、ソーシャルメディア(特にインスタグラム)を通じたブランド構築に真正面から力を注いできた。
「従来型の宣伝を行ったり、マーケティング戦略を立てたりしたことはない。半年前までA/Bテストや有料投稿も行っていなかった。何もかもオーガニックで、ソーシャルメディア、特にインスタグラムは、ブランドの前進に本当に役立った」と、Whole30の共同創設者であるメリッサ・ハートウィグ氏は語る。
インスタグラムの利用法
インスタグラムがもっとも重要なプラットフォームなのは疑いない。Whole30プログラムは、「@whole30」「@whole30recipes」「@whole30approved」という3つのアカウントで計130万人のフォロワーがおり、2015年8月時点の100万枚から増加して240万枚超の写真に「#whole30」のハッシュタグが付いている。whole30ブランドが持っているこれらのアカウントはよく計算されており、ユーザーをアクセスしたい場所に簡単に誘導できるようになっていると、ハートウィグ氏は語る。また、投稿でさまざまなアカウントに横断的にタグが付けられているのも、ほかのプロフィールのエンゲージメント向上に役立っている。
「Whole30はコンテンツに関して、オーディエンスを理解し、そのニーズに応えるという点で非常にいい仕事をしてきた。オーディエンスと強く結びつき、支援を得ており、投稿に寄せられるコメントは大いに励みになるものだ」と、エージェンシーのドラムロール(Drumroll)のコピーライターであるメロディー・ロウ氏は指摘する。同氏自身、このプログラムを3回行ったことがある。
Whole30のもうひとつの戦術は、草の根レベルでコミュニティと関わり合い、Whole30に則った食事や料理法を共有するフォーラムをフォロワーに提供するだけでなく、フォロワーへの対応も積極的に行っていることだ。たとえば、Whole30ブランドのアカウント「@whole30recipes」は、UGCを寄せ集めたもので、コミュニティメンバーから寄せられた独自レシピや改良レシピを週替りで投稿している。実際、ユーザーがそうしたものを求めていることにブランドが気づいて、このチャンネルは開設された。ハートウィグ氏が個人的にコメントするなど、フォロワーと定期的に関わりを持っている。
「Whole30の投稿には、下着姿のセクシーな20代の若者は出てこない。現実世界の人々がダイエットでの勝利を共有している。ユーザー同氏で交流するだけでなく、我々とも関わり合いたいと思っている。我々のチャンネルの背後にいるのは、名前も顔もないブランドではなく、本物の人間だ」とハートウィグ氏は言う。
フォロワーの物語に着目
マーケティングコミュニケーションエージェンシーのHZDGで編集ディレクターを務めるホリー・トーマス氏によると、この戦略がうまくいっているのは、「大物」インフルエンサーだけでなく、誰もがブランドと交流できるからだという。多くのブランドは、ブランドのメッセージが薄まるのを恐れて、最初のうちは自分たちの物語にしがみつくが、Whole30はすぐに、フォロワーの物語にハイライトを当てはじめた。
「Whole30プログラムをはじめて行ったときの私の投稿もリグラム(再投稿)された。彼らは、興味深い情報を共有している者なら誰でもスポットライトを当てようと努めていた。だからブランドが愛され、皆のためにあると感じられるのだと思う」と、トーマス氏は語る。
Whole30のプランとレシピは、ウェブサイトで無料提供されている。ウェブサイトは、少数の製品やサービスを紹介するアフィリエイトリンクや、食事計画作成サービスとの提携関係、有料ニュースレターのサブスクリプションを通じてマネタイズされている。ハートウィグ氏によると、ウェブサイトには外部のブランデッド広告を掲載していないが、提携プログラムがあり、ブランドの強化にも役立っているという。
お墨付きビジネスも展開
Whole30ブランドは、ほかのブランドに商標を利用させ、ライセンス料をもらって製品のマーケティングを行っている。これは、たとえば、炭酸水ブランド「ラクロワ(Lacroix)」や、乳成分を含まないパレオ食(原始人食)用コーヒーフレッシュ「ナットポッズ(Nutpods)」のような、ダイエットに適した製品へのいわばお墨付きだ。ハートウィグ氏は、自分自身を新進の起業家と見なし、ナットポッズや、2人の高校生が創設した新興の骨スープ・メーカー、ケトル&ファイア(Kettle & Fire)など、健康関係の新興企業数社に個人的に出資している。前進すること、それがWhole30ブランドの成長の仕方だと同氏は考えている。
「大事なのは、お金やリーチではなく、Whole30コミュニティに奉仕することだ」と、ハートウィグ氏は言う。
まだこんなことを言うのは時期尚早だが、これは、前進する効果的な戦略かもしれない。食料品のデリバリーサービスを手がけるインスタカート(Instacart)が発表した検索データによると、「Whole 30」の検索件数は2016年に292%、「chicken bone broth(鶏骨スープ)」や「grass-fed ground beef(牧草で育てられた牛のミンチ)」のような人気のパレオ食では、それぞれ268%と381%増加したという。インスタカートの予測によると、2017年には「Whole 30による承認済み(Whole 30 Approved)」ラベルの取得を求めるブランドが増え、ファットワークス・オイルズ(Fatworks Oils)やネイキッド・ベーコン(Naked Bacon)のようなブランドと同じ道を歩んでいると予測している。
「スタートしたとき、ターゲットにしていたオーディエンスは、比較的若く、すでに体調が良くて、健康を意識しているコミュニティだった。いまは次の段階に進めたいと考えている。成長ペースがもっとも速いのは、40~60歳の年齢層だ」と、ハートウィグ氏は言う。
TANYA DUA(原文 / 訳:ガリレオ)
Image form Whole30 Facebookpage