メタバースへの消費者の参加は2022年に全体的に加速するだろうという意識が高まっている。ファッションブランドは、暗号通貨が生み出す機会をますます受け入れ、ディセントラランド(Decentraland)のようなブロックチェーン世界に一層深く関与するようになっている。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
ディセントラランド(Decentraland)のような仮想世界の土地が購入されるにつれて、ファッションブランドらはメタバースにショップを築くことに対するアプローチを見直しつつある。
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ファッションブランドは、ロブロックス(Roblox)のようなゲームプラットフォーム上での小規模なアクティベーションを通じて世界を構築するというアイデアに慣れてきており、ブロックチェーンを使った世界の数は増加している。メタバースへの消費者の参加は2022年に全体的に加速するだろうという意識が高まっている。そのため、ファッションブランドは暗号通貨が生み出す機会をますます受け入れ、イーサリアムブロックチェーン上で実行される単層メタバースプラットフォームであるディセントラランドのようなブロックチェーン世界に一層深く関与するようになっている。
3月メタバースファッションウィーク開催
トークン・ドットコム(Tokens.com)とラグジュアリーマーケットプレイスUNXDとの提携により、メタバースファッションウィークが3月にディセントラランドで開催される予定であり、メタバースでのブランド体験の可能性は広がるだろう。このイベントは、あらゆる人々にアクセスを提供して(イベントを)世界に解放しつつ、伝統的なファッションウィークの体験を再現することを目的としている。トークン・ドットコムのCEOでメタバース・グループ(Metaverse Group)の会長でもあるアンドリュー・キーゲル氏によると、「これは、史上もっとも多くの人たちに見られるライブファッションイベントになる可能性がある」とのことだ。
暗号通貨投資会社トークン・ドットコムの子会社であるメタバース・グループは、11月、ディセントラランドにおけるもっとも高額な土地(ファッションストリート地区にある)を240万ドル(約2.7億円)で購入した。「毎日、シャネル(Chanel)やジミーチュー(Jimmy Choo)、ナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)のことを耳にする。世界中のファッションブランドは、メタバースに対するプレゼンスと戦略を生み出す方法を模索している」とキーゲル氏。「これは、インターネットの利用方法についての次のイテレーションだ」。
メタバースに拡大するショッピングエリア
これまでは、分散型コマースプラットフォームのボストン・プロトコール(Boson Protocol)が、ギャラリーを開設し、ディセントラランドに仮想モールを開くためのスペースを70万4000ドル(約8020万円)で購入したことがあった。6月には、デジタル不動産会社、リパブリックレルム(Republic Realm)が東京の実際の原宿地区をモデルにしたメタジュクショッピング地区を、前代未聞の91万3808ドルのMANA(約2.2億円)で購入して設計した(1MANA=240円で計算)。
「メタバースは、Facebookやインスタグラムよりも魅力的だ。Facebookやインスタグラムのようなプラットフォーム上でコンテンツを見せることはできるが、結局、広告収入をすべて得るのは企業だ」とキーゲル氏。「ラスベガスと比較することができる。そこは100年前は砂漠だったが、徐々に街が建設され始めた。そして、いまではエンターテイメントの世界的ハブだ。メタバースも同じことだ」。ディセントラランドのショッピング「エリア」が埋まっていく一方で、ヘリテージブランドがその動きに同調するかどうかという疑問は残る。デジタルファッション企業でWeb3ブランドのドレスエックス(DressX)は、8月にメタジュク地区でローンチした。
ロブロックスのようなゲームプラットフォームは、ファッションブランドのあいだで人気がある。グッチ(Gucci)やトミーヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、フォーエバー21(Forever 21)のようなブランドが関与しているこのプラットフォームには、消費者をブランドの世界に関与させる目的のさまざまなイニシアチブがある。また、ロブロックスは、英国ファッション協会のファッションアワードのようなファッションイベントも主催している。
このようなゲームプラットフォームとは異なり、2020年に一般公開されたディセントラランドはMANA暗号通貨で運営されている。したがって、ほかの暗号プラットフォームと同じようにプラットフォーム全体はユーザーによって実行され、中央的な制御点はない。また、そこではNFTを購入して取引することも可能だ。
メタバースに店舗を開設する以上の関与が必須
ファストファッションの大手のH&Mのようなブランドのなかには、この分野への参入について苦悩しているところもある。H&Mは、1月初旬、仮想世界とのメタバースコインプロジェクトであるシーク(CEEK)と提携してメタバースに参入したという噂を否定した。これは、このプロジェクトが、Web3ネイティブの環境に必要な創造性に欠けており、店舗の単なる複製であると、多くのWeb3クリエイターから批判されたゆえの反応なのかもしれない。
アナ・アンジェリック氏は、ブランド戦略エグゼクティブであり、ファッションビジネスの社会学者だ。同氏は仮想ギャラリースペースのスーパーレア(Super Rare)を取り上げ、メタバースに参加する前の出発点としてプラットフォームとそのユーザーを理解することの必要性を説明している。「スーパーレアを使うと、すでに設定されている広いエコシステム内に自分のスペースを設定できる。人々はすでにそこに居り、コミュニティも形成されている。ディセントラランドへ行ってそこで土地を購入するなら、問うべき質問がある。そこに何を開設するのか? 既存のものに基づいて建てるほうが良いのだが、(何かを開設して)『これは私のショップだ』と言うだけでは機能しない。Web3にある経済的かつ文化的な力学に従った、Web3独自のものでなければならない。分散化されていて、コミュニティ主導で、キュレートされる必要がある」。
ナイキのナイキランド(Nikeland)やロブロックスのグッチズガーデン(Gucci’s Garden)のような実験的な色合いの強いプロジェクトのローンチがあったが、ブランドは、デジタルプラットフォームに開設しても従来の店舗体験が欠けていることに気づいている。目下、暗号通貨に関与しながらメタバースに参入する方法は、いつ参入するかというタイミングと同じほど重要なのである。
[原文:Inside the real estate opportunity for brands in the metaverse]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:小玉明依)