ソニー・ミュージック(Sony Music)は、半年前に設立した社内エージェンシーによる自社クリエイティブで勝負に出ている。プロジェクトごとで情報共有されずに独自に業務を行っていた、これまでのサイロ化されたマーケティング業務を統合しようとしているのだ。
ソニー・ミュージック(Sony Music)は、半年前に設立した社内エージェンシーによる自社クリエイティブで勝負に出ている。プロジェクトごとで情報共有されずに独自に業務を行っていた、これまでのサイロ化されたマーケティング業務を統合しようとしているのだ。
ロンドンをベースとする、フォース・フロア・クリエイティブ(4th Floor Creative)は、60人のスタッフを抱えるエージェンシーであり、英国ソニー・ミュージックの自社プロダクションスタジオ、デジタル部門、テレビ・映画におけるブランドパートナーシップ、そしてデータアナリティクスを統合する。これらはすべて、以前まではなかなか協働できない、独立した部署となっていたと語ってくれたのは、フォース・フロア・クリエイティブのデジタルディレクターであるアダム・カーデュー氏だ。デジタルを担当する彼のチームは、15人のスタッフを抱えている。
ソニー・ミュージックは外部エージェンシーは使わず、無数の部署を通じて業務を配分していた。ほかのブランドたちは外部のエージェンシーから社内のクリエイティブへと業務を移行しつつある。このトレンドは顕著だ。ANA(全米広告主協会)の推算によると、アメリカでは社内エージェンシーを持つブランドの数は大きく伸ばしている。何らかの内部ストラクチャーを持っているブランドは、現在78%にのぼる。2013年は58%であった。
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部門を横断して協働
ソニーのエージェンシーがローンチして以来、コロムビア(Columbia)、RCA、ミニストリー・オブ・サウンド(Ministry of Sound)といったレーベルパートナーたちと連携して、公式ミュージックビデオを制作してきた。そのアーティストには、トム・グレナン、パロマ・フェイス、リトル・ミックス、ジョージ・エズラなどが名を連ねる。また、新しいアルバムと調和のとれたマーケティング素材やキャンペーンも制作する。そして、ソーシャルやウェブ上でのキャンペーンも、そこに加わる。
「部門を横断してより調和の取れた形で協働することで、アーティストのキャンペーンをより大きくすることができ、オーディエンスもより大きくなる」と、カーデュー氏は語る。ソニー・ミュージックの英国アーティストをメインに捉えた業務だが、アメリカのアーティストも対象になる。
彼らの最新のフォーカスは、自社でオーディオスタジオを持ち、そこでエージェンシーがアーティストを使って録音できるようにすることだ。それによって、ボイスオーバーやポッドキャストといったプロダクトが作れると、カーデュー氏は説明する。英国で人気のガールズバンドであるリトル・ミックスは、Alexa(アレクサ)上で使えるスキルをコラボレーション制作して10月にローンチした。インハウスのスタジオがあれば、バンドをスタジオに呼んでそこで録音を行い、何週間分にもなる量の音声素材を一度に獲得できる。それを11月16日にリリースされた彼女らの新アルバム『LM5』のリリースに先駆けて、プロモーション活用するのだ。
統合で見えてきた利点
なぜリトル・ミックスのAmazon Alexa用スキルを開発することになったかというと、Alexa上でもっともリクエストされるアーティストのひと組が彼女らだということが分かったからだ。異なるソースからの情報を社内のひとつのエージェンシーでまとめることになったからこそ、見えてきた情報だと、彼らは言う。
オーディオスタジオは、すでにフル稼働を開始しており、いくつかのプロジェクトが進行中だという。「アーティストたちがオーディエンスとつながる方法が増えた。ストリーミング時代にオーディエンスとつながることができる」と、彼は言う。
Ilyse Liffreing(原文 / 訳:塚本 紺)