ファッションブランドのロクサンダは、分割払いサービスのクリアペイとインスティテュート・オブ・デジタルファッションとのコラボレーションにより、2月21日月曜日に美術館テート・モダンで開催されたロンドン・ファッションウィーク・ショーでデジタル作品を発表した。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
ファッションブランドのロクサンダ(Roksanda)は、分割払いサービスのクリアペイ(Clearpay)とインスティテュート・オブ・デジタルファッション(The Institute of Digital Fashion)とのコラボレーションにより、2月21日月曜日に美術館テート・モダン(Tate Modern)で開催されたロンドン・ファッションウィーク・ショーでデジタル作品を発表した。その物理的なファッションショーのフィナーレのルックは決して生産されることはなく、NFTとしてのみ購入することができる。
セルビア出身でイーストロンドンを拠点とするデザイナー、ロクサンダ・イリンチック氏によるフェミニンでカラフルなブランド、ロクサンダは、ミシェル・オバマ氏やケンブリッジ公爵夫人キャサリン妃、ファッション業界のベテランであるサマンサ・キャメロン氏が愛用している。オーディエンスは年齢層が高く、デジタルファッションよりもアートやイヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)にインスパイアされた色の組み合わせに興味があるため、NFTのローンチは若いZ世代を惹きつけることが目標だった。
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ロンドン・ファッションウィークはNFTローンチとしては意外な場所だ。マティ・ボヴァン氏のようなデザイナーによるアバンギャルドなファッションや、リキソー(Rixo)のようなヴィンテージ風の楽しいワンピースなどで知られているため、デジタルアイテムはいとも簡単に場違いな存在になってしまう可能性がある。初めてのNFTのローンチに続き、月曜日のショーでは、イリンチック氏が英国ファッション協会(British Fashion Council)およびビジネス・オブ・ファッション(Business of Fashion)とのパネルに参加し、ファッションにおけるNFTのテーマについて討論を行った。
ふたつの機能を持つARガーメント
このプロジェクトでロクサンダと提携したデジタルファッションの開発を専門とする団体インスティテュート・オブ・デジタルファッションによれば、インスタグラムのフィルターとして利用できるこのARガーメントにはふたつの機能がある。「我々はロクサンダのアトリエと共同で、NFTにおける創造の自由の物理的限界を押し広げるクリエイティブな可能性と機能性に基づいて今回のNFTプロジェクトを構成した」と、同団体の共同設立者リアン・エリオット・ヤング氏は述べている。「ロクサンダの生地には動きがあり、ワンピースの上でモーションアート作品になる。我々は1週間以上を費やし、現実世界とネット上でロクサンダのアトリエとともに一針一針つくりあげていった」。
これはARトライオンで着用することも、あるいはアート作品として展示し、細部まで凝った職人技を鑑賞することもできる。AR体験のためのQRコードは街中のビルボードやポスターに掲示される。
またこのガーメントは、機能ごとに異なる3段階の希少性が用意されており、購入することも可能だ。各25ポンド(約3900円)で購入できる500点のNFTのうち1点を購入すると、3Dのガーメントのレンダリングと2Dの静的なコレクターズアイテムを入手できる。二番目の段階としては各250ポンド(約3万9000円)で販売される250点のNFTで構成されており、1点を購入すると3Dガーメントのアニメーションレンダリングと3Dオブジェクト・ショーケースがついてくる。トップレベルのNFTは10点のみで、3Dガーメントのアニメーションレンダリング、3Dオブジェクトショーケース、およびメタバース間で着用可能なアイテムのオプションを提供するClo3Dのワーキングファイルがついて価格は5000ポンド(約77万円)である。
今回のローンチでは、NFTが初めてイーサリアム(ETH)などの暗号通貨ではなくポンドでラグジュアリーブランドのウェブサイト上から購入できるケースとなった。また、クリアペイを通じて購入可能な初のNFTの例でもある。NFTはポリゴン(Polygon)ブロックチェーンに収容され、月曜日の午前9時から購入できるようになった。
新たなビジネスチャンスに向けて
ロクサンダのCEOジェイミー・ギル氏は、新たなビジネスチャンスを模索し、ブランドの「世界」を作ることが目標だとかつて述べていた。2019年にロンドン中心部のキングス・クロスの開発で、ロクサンダデザインのペントハウスアパートメントをローンチしたのは、デザイナーが建築のバックグラウンド持っていることを考えれば当然の出発点だった。しかしNFTやデジタルガーメントを導入するなど、そのターゲットオーディエンスは明らかにブランドの成長・拡大とともに変化している。
「今シーズン、クリアペイはファッションを民主化するという計画とともに、ラグジュアリーメゾンとNFTを作りたいと我々にアプローチしてきた。2021年にそのアイデアを検討してきて、今、我々の忠実な顧客に対して新しい何かを提供するだけでなく、Z世代のオーディエンスとも十分に関わることができるのを本当に嬉しく思っている」とギル氏は述べた。
NFTをベースにしたコラボレーションについて、クリアペイの共同設立者でCEOのニック・モルナー氏は、「ブランドがこの分野に参入するのを手助けできる専門知識を持った強力なパートナーは、確かに需要が高いだろう。最終的には確かな方法でメタバースにアプローチすることになるが、(今回の)ケースでは、アクセシビリティとクリエイティビティを意識してアプローチした」と語っている。
[原文:Inside Roksanda’s unique strategy for its first NFT: ‘The IRL dress is never going into production’]
ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)