ロレアル インディアは傘下ブランドにおいて、ナイカ(Nykaa)やAmazon、フリップカート(Flipkart)などのeテイラー(ネット小売会社)への移行を促進。同社のコンシューマーブランドで、ソーシャル広告のリッチコンテンツに多額の投資をしている。
店頭での伝統的なエクスペリエンスに依存していた多くのマス美容ブランドたちは、パンデミック前からすでにeコマースへの移行をはじめていた。かつては先進的であった取り組みも、この1年を経て必須のものとなった。
たとえばロレアル インディアは、メイベリン(Maybelline)やロレアル パリ(L’Oréal Paris)などの傘下ブランドにおいて、ナイカ(Nykaa)やAmazon、フリップカート(Flipkart)などのeテイラー(ネット小売会社)への移行を促進。同社のコンシューマーブランドで、ソーシャル広告のリッチコンテンツに多額の投資をしている。
「特に過去数年間にわたってデジタルとeコマースは、我々のインド市場の拡大の最前線であった。そのため、あらゆることをデジタルファーストの考え方で行っている。最高の美容テクノロジーをもたらすことが、ここでの目的だ」と、ロレアル インディアの最高デジタル責任者、アニル・チラ氏は語る。「eコマースはパンデミック以前から台頭していた。パンデミックはこの現象を加速させたに過ぎない」。同氏によると、パンデミック期に初めてオンラインで美容製品を購入した顧客は5人に1人であるという。
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そのため、設立から26年という比較的「新規参入者」のロレアル インディアは、ブランド認知度をデジタルの最重要課題と位置付けていると、チラ氏は語る。「インドの規模を考えると、まだ期間は短い。我々にとってデジタルは、(競合企業の)流通網や強みよりも優位に立ち、飛躍するための重要な推進力だ」。売上の約半分は、Tier2都市(人口100~400万人未満)とTier3都市(人口50~100万人未満)からのものだという。「デジタルとeコマースは、消費者がブランドをより速く見つけ、ブランドにアクセスすることを助けている。これこそが我々の優先事項なのだ」。
eコマースのシームレスな統合
eコマースのシームレスな統合において、特に広告には注目している。ロレアル インディアのブランド(メイベリンなど)は、さまざまなプラットフォームで広告を展開しており、洗練されたランディングページからはナイカ、フリップカート、Amazonなどインド国内で化粧品を購入できる主力プラットフォームへとリンク。ランディングページには動画コンテンツやAR(拡張現実)を用いたお試し機能、価格リストなどを備え、価格変更時には情報も自動的に更新される。
「メイベリンやロレアルなど伝統的な国際ブランドは、すでにトレンドとなっていた広告と、コマースの両方において、関心をデジタルへと向けている」。このように語るのは、ロレアル インディアのランディングページを制作したデジタル広告エージェンシー、ショパリスト(Shopalyst)のCEO、ギリシュ・ラマチャンドラ氏だ。同社は世界中で約400のブランドと提携している。最近では、複数のブランドを扱うeテイラーとリンクして、D2Cブランドのようなエクスペリエンスを構築する業務を、独自のeコマースサイトを持たないマスブランドから請け負うことが多いという。「デジタル化が進んでいなかった多くの伝統的なブランドが、ここ数カ月でデジタルへの移行に関心を示している」。同社はランディングページのほかにも、複数のプラットフォームに対応した広告ビルダーやデータ追跡などを提供している。
「インドはまだビューティーの新興市場であるため、多くの消費者は慣れていない」と、チラ氏。「彼らは学習過程にあるため、ハウツーの動画コンテンツが非常に重要になる」。メイベリンは、美容チュートリアルなど関連性の高いコンテンツに向けたYouTube広告を制作した。
ARのお試し機能にも注力
ロレアル インディアは、ARのお試し機能にも力を入れている。ロレアルグループは2018年に、モディフェイス(ModiFace)を買収。パンデミックが始まって以降は、テクノロジーをますます強化した。
「コロナ前、化粧品はカウンターに出向いて感触を確かめ、試しにつけてみて、適切な色合いや濃度を見つけたものだった」と、チラ氏は語る。
「最近ますます実感するのは、消費者がデジタルやバーチャルでの体験を試すことに対し、非常にオープンになったということ。これは我々の強みでもある」。ロレアルブランドのARお試し機能は、メイクアップカテゴリー全体のなかでもコンバージョン率が非常に高いのだという。
[原文:Inside L’Oréal India’s digital-first model]
LIZ FLORA(翻訳:田崎亮子/編集:長田真)