- テレビや映画、ゲームのWikiサイトとして知られるFandomはインスタグラムと協力し、EAの人気アメフトゲームのライブストリームイベントを開催。ラッパーのオフセットとゲーマーのスワッグが参加し、その「友情」を前面に押し出した。
- Fandomが注力したのは、Z世代ゲーマーとのオーセンティック(真正)な関係構築。プロモーション色を抑え、友情を称えるコンテンツ制作を中心とし、ファンとの交流やコミュニケーションを重視した。
- インスタグラムはZ世代へのリーチに苦しんでおり、Fandomとの提携を通じてオーセンティシティを強化し、Z世代へアピールしたい狙い。
テレビや映画、ゲーム関連のさまざまなコンテンツを擁するWikiサイトのホスティングサービスであるFandomはいま、Z世代ゲーマーの目を引きたくてたまらない。
そこで同社はこのほど、インスタグラムと手を組んでEAのアメリカンフットボールゲームシリーズ最新作『マッデンNFL 24(Madden NFL 24)』のライブストリームイベントを開催した。加えて、さらに多くのゲーマーを引き寄せるべく、同様のイベントを近い将来、再び行なう計画も立てている。
ファンダムとインスタグラムによるこのコラボでは、9月19日、熱狂的eスポーツファンのラッパーであるオフセット氏と有力ゲーマーでフェイズ・クラン(FaZe Clan)のメンバーであるスワッグ氏が同ゲームをプレイする様子をライブストリームで配信し、二人の本物の友情にスポットライトを当てた。これはファンダムがインスタグラムと行なった初のゲーミングライブストリームであると同時に、インスタグラム上で勢いを増すZ世代層の巨大ゲーミングコミュニティを称え、活用するための戦略の一環でもある。
狙うはオーセンティシティの獲得
「目的はほかでもない、Z世代を、そして創造的表現やコミュニケーションという日常の小さな活動を通じてインスタグラム上で築かれている、彼らの本物の繋がりや友情を称えることにある」と、ファンダムのチーフレベニューオフィサーであるジェレミー・スタインバーグ氏は今回の取り組みについて話す。「実際の話、インフルエンサーキャンペーンは誰にでもできるが、オーセンティック(真正)だと心底思ってもらえるものを、そしてマーケターのためにそんな繋がりと価値を創造できる然るべき瞬間を生み出せるのも、非常に難しい」。
同社の戦略は今回のライブストリームイベントに留まらず、この後、同配信における重要な瞬間を収集し、インスタグラムへの投稿に適した小サイズのクリップを作ることにあると、スタインバーグ氏は説明する。この姿勢は、インスタグラムがZ世代層内における独自の繋がりを称えるべく、10月8日まで実施していたキャンペーンのそれと同様だ。両社ともに、若年層に訴えかけるべく、オーセンティシティ(真正性)の獲得を目指している。なお、今回の提携における金銭面の詳細は開示されなかった。
Z世代のオーディエンスにリーチするべく、ファンダムは自社で育てたタレントをあえて使わず、インスタグラムに大勢のフォロワーを持ち、Z世代と関わりの深い有能な人材を積極的に探していた。ファンダムとインスタグラムがオフセット氏とスワッグ氏を選んだ決め手は、二人がインスタグラム上で出会い、『マッデンNFL』シリーズへの高い関心を共有している点だった。今回のキャンペーンでは、同ライブストリームをスワッグ氏のYouTubeチャンネル(サブスクライバー数300万人)、ゲームスポット(GameSpot)のチャンネル(サブスクライバー数530万人)、ファンダムのゲーム(Games)チャンネル(サブスクライバー数140万人)でも配信した。また、インスタグラム上でも告知をした。
Z世代は販促の気配を敏感に察知する
ファンダムとゲームスポットはさらに、ライブストリームの1週間前に[続きを読む]
- テレビや映画、ゲームのWikiサイトとして知られるFandomはインスタグラムと協力し、EAの人気アメフトゲームのライブストリームイベントを開催。ラッパーのオフセットとゲーマーのスワッグが参加し、その「友情」を前面に押し出した。
- Fandomが注力したのは、Z世代ゲーマーとのオーセンティック(真正)な関係構築。プロモーション色を抑え、友情を称えるコンテンツ制作を中心とし、ファンとの交流やコミュニケーションを重視した。
- インスタグラムはZ世代へのリーチに苦しんでおり、Fandomとの提携を通じてオーセンティシティを強化し、Z世代へアピールしたい狙い。
テレビや映画、ゲーム関連のさまざまなコンテンツを擁するWikiサイトのホスティングサービスであるFandomはいま、Z世代ゲーマーの目を引きたくてたまらない。
そこで同社はこのほど、インスタグラムと手を組んでEAのアメリカンフットボールゲームシリーズ最新作『マッデンNFL 24(Madden NFL 24)』のライブストリームイベントを開催した。加えて、さらに多くのゲーマーを引き寄せるべく、同様のイベントを近い将来、再び行なう計画も立てている。
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ファンダムとインスタグラムによるこのコラボでは、9月19日、熱狂的eスポーツファンのラッパーであるオフセット氏と有力ゲーマーでフェイズ・クラン(FaZe Clan)のメンバーであるスワッグ氏が同ゲームをプレイする様子をライブストリームで配信し、二人の本物の友情にスポットライトを当てた。これはファンダムがインスタグラムと行なった初のゲーミングライブストリームであると同時に、インスタグラム上で勢いを増すZ世代層の巨大ゲーミングコミュニティを称え、活用するための戦略の一環でもある。
狙うはオーセンティシティの獲得
「目的はほかでもない、Z世代を、そして創造的表現やコミュニケーションという日常の小さな活動を通じてインスタグラム上で築かれている、彼らの本物の繋がりや友情を称えることにある」と、ファンダムのチーフレベニューオフィサーであるジェレミー・スタインバーグ氏は今回の取り組みについて話す。「実際の話、インフルエンサーキャンペーンは誰にでもできるが、オーセンティック(真正)だと心底思ってもらえるものを、そしてマーケターのためにそんな繋がりと価値を創造できる然るべき瞬間を生み出せるのも、非常に難しい」。
同社の戦略は今回のライブストリームイベントに留まらず、この後、同配信における重要な瞬間を収集し、インスタグラムへの投稿に適した小サイズのクリップを作ることにあると、スタインバーグ氏は説明する。この姿勢は、インスタグラムがZ世代層内における独自の繋がりを称えるべく、10月8日まで実施していたキャンペーンのそれと同様だ。両社ともに、若年層に訴えかけるべく、オーセンティシティ(真正性)の獲得を目指している。なお、今回の提携における金銭面の詳細は開示されなかった。
Z世代のオーディエンスにリーチするべく、ファンダムは自社で育てたタレントをあえて使わず、インスタグラムに大勢のフォロワーを持ち、Z世代と関わりの深い有能な人材を積極的に探していた。ファンダムとインスタグラムがオフセット氏とスワッグ氏を選んだ決め手は、二人がインスタグラム上で出会い、『マッデンNFL』シリーズへの高い関心を共有している点だった。今回のキャンペーンでは、同ライブストリームをスワッグ氏のYouTubeチャンネル(サブスクライバー数300万人)、ゲームスポット(GameSpot)のチャンネル(サブスクライバー数530万人)、ファンダムのゲーム(Games)チャンネル(サブスクライバー数140万人)でも配信した。また、インスタグラム上でも告知をした。
Z世代は販促の気配を敏感に察知する
ファンダムとゲームスポットはさらに、ライブストリームの1週間前に一連のティーザー広告を打った。そしてオフセット氏とスワッグ氏の協力を仰ぎ、ゲーミングと音楽双方の熱狂的ファンに的を絞ったオーガニックソーシャルプロモーションをかけ、同ライブストリームを販促した。
スワッグ氏のYouTubeチャンネルが同ライブストリームのホストを務め、配信中、オーディエンスがダイレクトメッセージを通じて質問できるようにしてくれたことで、「ファンとの交流という側面も加えられた」と、インスタグラムの広報は話す。Z世代層へのフォーカスの目的は、ライブストリーム視聴者間における熱狂の創造とオーガニックなシェアの促進であり、インスタグラムにとっては、配信後の再共有可能なコンテンツの獲得だった。
「Z世代オーディエンスは販促の気配を敏感に察知する。だからこそ、我々はファンおよびコミュニティとの関係をオーセンティックなものにする努力に何よりもフォーカスしている」と、スタインバーグ氏は話す。
ファンダムが今回の試みに広告予算をどの程度割いたのかは、スタイバーグ氏が具体的な数字を開示しなかったため、定かでない。ファンダムはビビックス(Vivvix)によれば、パスマティックス(Pathmatics)のペイドソーシャルデータを含め、2023年度、これまでに340万ドル(約4億9300万円)強という、2022年度の約90万ドル(約1億3000万円)を大きく上回る額を投じている。ただ、広告支出は増えているが、それを支える戦略自体は一貫しており、同社の広告の主な出稿先は依然、デスクトップディスプレイおよびモバイルディスプレイとなっている。
TikTokを超えて
詰まるところ、ファンダムとインスタグラムはこの戦略により、専門度とエンゲージ度がいずれも高いニッチなオーディエンスとの接触が可能になる。「インスタグラムはとりわけ、Z世代層の注目と関心の獲得において、間もなく有意な前進を遂げるのではないか」と、インフルエンサータレントエージェンシーであるジンク・タレント(Zink Talent)の創業者サマンサ・ジンク氏は指摘する。
インスタグラムはこれまで、Z世代層への効果的リーチを阻む複数の困難に直面してきており、なかでも「当該世代のオーディエンスのあいだで急騰したTikTok人気はとりわけ大きな壁だった」ともジンク氏は指摘する。
ファンダムと提携したインスタグラムの戦略はタイミングを図ったものであり、「ファンが心待ちにしているアメリカンフットボールの新シーズン開幕と『マッデンNFL 24』発売のタイミングとも合致している」と、ジンク氏は言う。「その両者を前面に押し出し、自社のストーリーにはオーセンティックな繋がりを創造できる点を強調する今回のイベントは、とどのつまり、Z世代が熱望して止まないことにほかならない」。
Julian Cannon(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)