日本の業界関係者たちは、2022年にどんな課題を感じ、2023年にどんな可能性を見出しているのか? この年末年始企画「IN/OUT 2023」では、 DIGIDAY[日本版]とゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブ、次世代リーダーたちに伺った。
明るい未来、という表現はやや陳腐だが、2022年はコロナ禍を踏まえて次のフェーズに進む「新たな1年」になると、誰もが考えていたのではないだろうか。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻をはじめ、世界的な景気低迷とそれに伴う広告・メディア支出の混乱など、波乱に満ちた1年となった。DIGIDAY[日本版]恒例の年末年始企画「IN/OUT 2023」では、 DIGIDAY[日本版]とゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブや次世代リーダーに、2022年をどのように受け止め、2023年にどのような可能性を見出し、新たな一年を切り開いていこうとしているのか伺った。
パナソニック コネクト株式会社にて、執行役員常務 CMOを務める山口有希子氏の回答は以下のとおりだ。
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――2022年を象徴するトピック、キーワードを教えてください。
パーパス経営
サステイナビリティ、ESG、SDGsが重要になるなか、企業が社会の中で果たす役割や存在意義を明確にし、そのことに真剣に向き合う必要性がより重要になったと感じています。そのなかで、マーケティングが「パーパス経営」の実践に果たす役割はとても大きいと思っています。 綺麗な言葉でパーパスを語るのではなく、「実」のあるパーパス経営を実践すること、それに繋げる活動をすること、つまり、マーケティング活動も「オーセンティック」であることがとても重要だと思います。
JICDAQ(デジタル広告品質認証機構)本格稼働
デジタル広告業界のなかで、「企業が社会のなかで果たすべき役割」を考えた時、アドフラウドやブランドセーフティ等の問題を解決することは、とても重要です。
その対策のひとつとして、JAA, JIAA、JAAAが連携して設立したJICDAQが本格的に稼働を始めました。現在登録事業者が160社を超え、登録アドバタイザーも100社を超えました。日本での取り組みは欧米に比べ遅れていたことを考えると、大きな進歩です。ただ、コンプライアンスが遵守され、透明性が確保された健全な業界にするためには、より多くの企業やマーケターがこの問題についての理解を深め、解決に向けての努力することが重要だと思っています。
――2022年にもっとも大きなハードルとなった事象は何でしたか?
パンデミックや地政学の影響による部材不足、サプライチェーンの問題は重要な経営課題でした。状況により、いかに迅速に対応出来るかという、組織全体の「連携力」や「フレキシビリティ」が問われた年だったと思います。
また、2022年4月には、パナソニックが持株会社制に移行するのに伴い、新事業会社として「パナソニック コネクト株式会社」を設立しました。マーケティング部門は、新会社ローンチIMCプロジェクトをリードする役割として、さまざまな社内外の関係者と連携し、本当に数多くのプロジェクトを推進しました。時間が限られているなかで、確実にカタチにすることが必要とされるプロジェクトばかり。大きな方針のもとにさまざまなメンバーが「連携」し、組織サイロを超え「フレキシブル」に対応することが求められる場面ばかりでした。そういうチャレンジを経験できたことは、組織力を強化する意味でも、とても重要なことだったと思っています。
――2023年に必ず取り組むべきだと考えていることは何ですか?
「Customer Obsessed Company」になるためのチャレンジ
「Customer Obsession」。最近、B2Bマーケティングについて、海外の方々と議論するなかでよく耳にする言葉です。
お客様を中心に考える、お客様に強くこだわる、つねにお客様を考える。それが大切というのは、当たり前のように多くの方々が言いますが、本当にそれが実践出来ているのかといわれると、まだまだチャレンジすべき領域が多いと認識しています。
現在、N1インタビューも含め、お客様と本質的に向き合い、お客様を理解するためのプロジェクトを一部のビジネスで進めています。2023年には、その活動を他の事業にも拡げ、よりよいCustomer Experienceを創り、ビジネスの成長に貢献したいと思っています。
また、改めて「Customer Obsessed Company」と言われる世界のトップ企業が具体的にどういうことを実施しながら、組織カルチャーを変革しているのかをもっと勉強して、私たちのマーケティング活動にも活かしていきたいと思います。