ロレアルパリ(L’Oréal Paris)は。それぞれが違う民族の出身となる5人YouTubeのスターを揃え、ビューティスクワッド(Beauty Squad)を結成した。ロレアルパリU.Kのゼネラルマネジャーであるエイドリアン・コスカス氏に、英DIGIDAYがその詳細について訊いた。
コスメ業界全体に美容ブロガーが台頭してきている。今日のマーケターは「有名人がおすすめ!」というお決まりの手法以外にも、インスタグラムで人気の「コントゥールメイクの女王」などを起用しているのだ。
しかし、費用も高く、秩序が整っていない、この新しい領域で、うまく関係性を維持していくにはどうしたらいいのだろうか。
昨年、ロレアル パリ(L’Oréal Paris)は5人編成のビューティスクワッド(Beauty Squad:スクワッドは、本来軍隊用語で「分隊」を意味するが、ネットスラングで「仲良しグループ」も意味する)を結成した。メンバーはいずれもYouTubeのスター。それぞれが違う民族の出身だ。彼女たちは現在パリファッションウィークなどのイベントに参加して、新商品のお披露目を行っている。
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エミリー・キャナム、コーシャル・モダ、パトリシア・ブライト、ルース・クリリー、ビクトリア・マグラスの5人組は、ともに美容ブランドのロレアル パリが、オンライン上で新規顧客を獲得するのを後押ししてきた。また、商品開発とそのメッセージ発信をより包括的に実施したいという同社の考え方を形作っている。
ロレアル パリU.Kのゼネラルマネジャーであるエイドリアン・コスカス氏は、英DIGIDAYにその詳細について語ってくれた。内容を読みやすくするため編集、要約している。
――2017年のインフルエンサーについてどう思う? 彼女たちはトゥルーマッチのような主要キャンペーンへの起用が明らかに増えているようだが。
ロレアル パリは歴史的に有名人や女優を広告塔として起用してきた。しかし、インフルエンサーには消費者の声という、ほかとは異なる価値がある。彼女たちが居てくれることで、より良質なキャンペーンやコンテンツ、そして商品を生み出すことができる。その過程で生のフィードバックをもらうこともできる。彼女たちのおかげで、いままでにリーチできなかったコミュニティにも手が届くようになり、ロレアル パリにより包括的な一面が加わった。
――ビューティスクワッドのフィードバックはどのように作用するのか?
3月初め、我々は実際にビューティスクワッドとロレアル パリの研究所へ赴いた。カラーについて「ああでもないこうでもない」とさんざん話し合ったあと、彼女たちは自分が見てみたいと思う色味について、いくつものアイデアを出してくれた。
我々の関係はこれからも続いていくので、今後もこういった議論は増えてくると確信している。コンテンツについていえば、先日新たにコンシーラーを発売する際、彼女たちからヒントを得て、初心者にもわかりやすい使用法の説明動画を制作した。また、彼女たちが日常取り入れている美容習慣(普段製品をどんな順番で使っているか)をブランドレベルで再現した。
――契約上の義務はどのように管理している? 従来の広告塔と違い、貴社のビューティスクワッドには、オーディエンスの信頼を得るための公平性が必要なのでは?
彼女たちの多くが美容マニアで、世界ナンバーワンの美容ブランドで働くことに胸を躍らせている。これはウィンウィンの関係だ。しかし、我々は当初からこれが独占契約でないことは、はっきりと伝えている。彼女たちがいつどんなブランドについて語っても、それは本人たちの自由だ。私たちはこういったエディトリアルな考え方を維持していきたい。議論はまず「この商品が好きか?」からはじまる。詳細を詰めるのはそのあとだ。もし彼女たちが製品を気に入っていないのなら、議論する意味がない。
――ビューティスクワッドのフォロワー数を合算すると550万人以上に。マクロとマイクロ、どちらのインフルエンサーが優位かといった議論があるなかで、なぜこれを適切な数字だと考えたのか?
大手ブランドとしては、相当数のリーチが必要だ。我々は当初からゾエラ(Zoella)のような超一流レベルにはなれないとわかっていたので、絶対数を増やして、多様性に富んだグループを作ればいいと考えた。しかし、ビューティスクワッドのほかにも、あらゆる層のインフルエンサーとの取り組みは継続している。そして、いままでにない個性やキャラクターを探して続けている。
――では、多様な層全体を通して、成功の度合いをどのように測るのか?
コンテンツをブーツ(Boots)のようなサイトでの販売向上とリンクさせるのもひとつの方法だ。しかし、もうひとつの方法は、消費者がブランドについてどのように語っているかを測るもの。この分野ではエンゲージメントとオンライン上のネット感情のふたつが主要な業績評価指標(KPI)になる。
――それが単なるギミックではないことをどのように保証する?
宣伝を行うのは、もっとも簡単なことで、順番的には最後にもってくるべきものだ。まずは製品ありきでなければならない。すべての民族や地域に合った製品がなければ、多様性のメッセージを発信することなどできない。提供しているものについて深い理解があれば、それについて主張することができる。まずは提供しているものについて理解しなければならないのだ。
――では、制作チームを含め、このミッションにかかわるビジネス全体をどのように活性化させているのか?
社内の人間を納得させるまで何度も説得して、何度も戦う必要がある。もしも濃い目の色合いを考案した場合、社内の誰もが対象数が少ないことや需要不足を指摘する。そのままでは製品を作ることができない。私たちは工場や研究所のスタッフと5回も会議を重ね、「これがこういった色を使う人の数だ。ここがスタートになるのだ」と、いわざるを得なかった。
「ロレラルらしくない」といわれることもあるが、そんなことはない。トゥルーマッチが過去5カ月間、イギリスでのファンデーション販売数トップになるなど、我々は上々の結果を残している。ブランド認知にも変化があり、それだけの価値があったということだ。
――多様性を取り入れないことは企業にとってどのような危機を招く?
そういった企業はエンゲージできていない消費者がいるというリスクを背負っている。いまの世の中でそういったことは好ましくない。今日我々が見るものすべてにおいて、違いを尊重すること、批判的にならないことが主要なテーマになっているからだ。