ペイドコンテンツにブランドをタグ付けることで、広告主がダイレクトにその投稿の拡散ブーストができるという機能をFacebookは開始した。一見すると広告主たちによるインフルエンサーマーケティングをさらにしやすくしているように思える。しかし、余計な費用がかかるのではないかと、エグゼクティブたちは心配している。
ブランドとインフルエンサーたちはFacebook上での支出をさらに増やす必要がある。
ペイドコンテンツにブランドをタグ付けることで、広告主であるブランドがダイレクトにその投稿の拡散ブーストができるという機能をFacebookは開始した。以前のようにまず、ブランドがインフルエンサーの投稿をシェアしないといけない、ということもなくなった。この機能はすでに、スポンサーを持っているソーシャル上のセレブたちを対象としている。どのクリエイターが自分のブランドをタグ付けできるかはブランドが設定できる。インフルエンサーによる投稿がどれくらいの成果をもたらしているかを測るため、CPM、全費用、リーチ、エンゲージメントといったデータを見ることもできる。
一見すると広告主たちによるインフルエンサーマーケティングをさらにしやすくしているように思える。しかし、ブランドの拡散ブーストなしではインフルエンサーたちのポストの露出が減るようにアルゴリズムが変更されるのではないかと、エグゼクティブたちは心配している。
Advertisement
足並みをそろえるFacebook
ブランドがポストをブーストするとなると、Facebookでのインフルエンサーマーケティングが非常に高価になってしまうと、エージェンシーのエグゼクティブたちは語る。
「ほとんどのブランドは、Facebook上のインフルエンサーたちが有するフォロワーを使うことで、オーガニックなリーチを得ようとしている。しかし、ブランドがインフルエンサーによる投稿をサポートしようとすると、コストがかかるようになってしまった。これはオーガニックリーチがもはや意味を持たないことを示している。インフルエンサーマーケティングは異なる性質のものになるだろう」と語るのは、エージェンシーであるMRYの元CEOであり、現在はインフルエンサーマーケティング企業クラウドタップ(Crowdtap)のCEOを務めるマット・ブリットン氏だ。

投稿の下に「ビジネスパートナーがこの投稿をブーストすることを許可する」というチェック項目が表示されている
また今回のアップデートで、Facebookではインフルエンサーが持つオーディエンスの規模が重要でなくなるだろうと、ブリットン氏は考えている。それによって、いわゆるマイクロインフルエンサーを何人も雇うのではなく、全国的なセレブを雇う方向性にブランドは向かうことになるはずだ。「セレブであれば、どこであれ知られている。だからブランドたちは、テレビ広告をするのと同じ要領でFacebookでもインフルエンサーマーケティングをすることができる。Facebookはインフルエンサーマーケティングを根絶してしまった」と彼は語る。
Facebookのこの動きは不可思議なものではない。基本的には、Facebookはほかの広告戦略とインフルエンサーマーケティングの足並みを揃えようとしているのだ。広告主たちの「オーガニックな」投稿を、お金を払うことでブーストさせるという流れだ。これによってインフルエンサーマーケティングに課題が生まれようとしている。
インフルエンサーの転機
エージェンシー、ジャニュアリーデジタル(January Digital)の戦略サービスシニアディレクターであるメーガン・ジョーンズ氏も、今回のアップデートによって、ソーシャル上のスターたちの有する「インフルエンス(影響力)」の意義が小さくなると考えている。そして、Facebook上におけるインフルエンサーマーケティングは広告主にとって、高価なものになるだろう。しかし同時に、広告主たちにコントロールを取り戻してあげている側面もある。メディア上でただ発信してもらうだけではなく、そこで発信されるコンテンツに対応して費用をコントロールすることができるからだ。
「Facebookのインフルエンサーたちは、ただフォロワー数を追いかけるビジネスモデルを考え直さないといけない。自分たちの投稿にブランドがどれくらい投資してくれるだろうか、と考える必要が出てきたのだ。もしかしたら自分をプロモートするために費用を負担する必要も出てくるかもしれない」。
インフルエンサーたちはどう考えているのか。インスタグラム上のクリエイターであるサラ・ペレッツ氏は、この機能のためにブランドもインフルエンサーも両方、支出をあてないといけなくなると考えている。しかし支出を少し増やすことで、ほかの友人やほかのFacebookページにリーチする能力を持ったことになると指摘する。「この機能によって、オーディエンスターゲティングが有する特定性と、インフルエンサーが有するリーチのふたつを組み合わすことができるようになった。インフルエンサーたちは自分たちのキャンペーンで追加機能として使うことを考慮すべきものだ。特にFacebookにおけるインフルエンサーマーケティングに馴染みのない会社とのキャンペーンの場合はそうだ」と、彼女は語る。
これはあくまで通過点
エージェンシーのアテンション(Attention)のコンテンツパートナーシップ部門アソシエイトディレクターであるチェルシー・ナフテルバーグ氏はこのアップデートによって、特にインフルエンサーマーケティングは変わらないだろうと考えている。というのもインフルエンサーの投稿の際に、Facebookだけをプラットフォームとして薦めることがほとんどないからだ。Facebookは複数のメディアを組み合わせたなかのひとつとして薦めている。その場合は、ペイドプロモーションのための予算が組まれることが多い。
今回のアップデートによって仕事のフローがシンプルになると彼女は言う。これまでであれば、クライアントの予算を使ってブーストをする場合、まずインフルエンサーのページに彼女のスタッフを広告主側として加えてもらわないといけなかった。もしくはチームがインフルエンサーにやり方を教えて、のちほど費用を補填するという方法をとらないといけなかった。どちらにしても作業が多く複雑であったと彼女は言う。しかし、このアップデートのおかげで、チームがキャンペーンを運営することができるようになった。
「アップデートには毎回、良くない点と良い点を見つけることができる。しかし結局のところ、私たちはひとつの業界が成長して進化する様を見ているのだ。来年にはFacebookとインスタグラムが偽のフォロワーや偽のアクティビティに、より良く対処できるようになったら良いと思う」と、ナフテルバーグ氏は言った。
Yuyu Chen(原文 / 訳:塚本 紺)