インフルエンサーマーケティングが台頭しつつある。そうしたムーブメントを受け、効果測定や安全性の問題を解決するよう要求する企業が増えてきた。6月中旬には2社が、インフルエンサーマーケティング用の効果測定サービスを提供すると発表している。
ブランドがソーシャル界のスターやクリエイターと提携して動画や写真、テキストコンテンツを制作・配信するインフルエンサーマーケティングが台頭しつつある。そうしたムーブメントを受け、効果測定や安全性の問題を解決するよう要求する企業が増えてきた。
効果測定サービス2社の試み
6月中旬には2社が、インフルエンサーマーケティング用の効果測定サービスを提供すると発表。そのうちの1社アハロジー(Ahalogy)は、サードパーティーによる検証済みのインフルエンサーマーケティングプログラムを開発した。同社によるとこのプログラムでは、ソーシャルメディアのフォロワーなどの指標を超えて、「トラフィッククオリティ」テスト(つまり、ボットを排除したトラフィック測定)や、検証済みのエンゲージメント指標で合格基準に達しているインフルエンサーを選ぶことができる。また、どんな形で有料メディアのインプレッションがもたらされているかをダブルチェックするという。
アハロジーは、ソーシャルや広告からインフルエンサーのWebサイトへクリックスルーしたあとのユーザーの活動測定については、広告測定を手がけるモート(Moat)と提携しているので、コストパービジット(CPV)キャンペーンの数字は検証されているはずだ。アハロジーのCEO、ボブ・ギルブレス氏によると、基本的には、「インフルエンス(影響力)」が、ほかのデジタルメディアで用いられている指標と比較可能になるという。
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セレブ専門メディアサイト、フーセイ(WhoSay)のプレジデントであるロブ・グレゴリー氏は、次のように語る。「インフルエンサーマーケティングでは、標準化競争が繰り広げられている。[インフルエンサーマーケティングが]何らかの規則や規制を大いに必要としていると認められるときが来た」。YouTubeやハリウッドで活躍するハイレベルなタレントと協力しているフーセイは、「すべてに健全性をもたらす」標準化された指標を開発中だ。
サイロ(Sylo)も、同分野に進出しようとしている1社だ。2016年に炭酸飲料のマウンテンデュー(Mountain Dew)と協力して、インフルエンサーチーム「マウンテンデュー・グリーンラベル(Mountain Dew Green Label)」を結成した同社は、インフルエンサーがYouTubeやインスタグラム、Facebook、Twitterに投稿するすべてのコンテンツの独自スコアを算定する「採点システム」を開発した。エンゲージメントや消費、リーチを重視するアルゴリズムだ。サイロの共同創設者エリック・シュワブ氏は、りんごとオレンジを比較するのではなく、りんごとりんごを比較できるようにするという発想だ、と語る。同氏によると、顧客企業は、インフルエンサーによるコンテンツへのタグ付けの仕方やマーケターの検索方法が的外れだと気づきつつあるという。
ROIをめぐる大きな不安
こうした発言の背後には、ブランド各社が、デジタルメディアがどういうひどい状態になっていたかということに、ますます注意を払うようになったことがある――しかも、事態が起こってから何年も経ってからだ。マーケターはここのところ、怪しいサプライチェーンや複雑で理解しにくいエコシステムなど、すべてに渡ってデジタルメディアを非難してきた。
デジタルメディアスーパーバイザーのベッツィ・ルーケンス氏によると、エージェンシーのジオメトリー・グローバル(Geometry Global)は、データや洞察を、何を購入するかの指針にしているという。以前は、リストを見て、取引しようとしている相手が正しい数字を報告し、ROIが適切であることを願うだけだったが、いまはもっと複雑化している。
一方で、別のメディアバイヤーは匿名を条件に、サードパーティーによる検証が必要だとは思わない、と語った。「誰もがROIをめぐって抱いている、こうした大きな不安感につけ込んでいるので、こういうタイプの企業は爆発的に増加するだろう」。カギは、インフルエンサーマーケティングを有料広告のように扱うことだ、と同氏は言う。「我々はソーシャル指標を、別の測定セットと対立するものとして利用し、検証している」。
ソーシャルメディアの透明性
混乱しているのは明らかだ。インフルエンサーマーケティングは爆発的に増加してきたので、予算に占める割合が増加している。インフルエンサーマーケティング企業メディアキックス(Mediakix)の調査では、インスタグラムでのインフルエンサーマーケティングは、2018年までに20億ドル(約2200億円)規模に達する可能性があるという。一方で、DIGIDAYの調査では、ブランドがインフルエンサーを利用し続ける一方で、測定やROIの問題が理由で、インフルエンサーの輝きが失せつつあることが明らかになっている。
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食品・飲料会社ペプシコ(PepsiCo)のブランドマーケティングおよびメディア戦略担当責任者オビオマ・エニア氏は、「インフルエンサーマーケティングは、我々のコンテンツ配信戦略においてますます大きな割合を占めている。こうしたクリエイターをブランドのパートナーと見なし、彼らを尊敬する若いミレニアル世代とのつながりを深めるのに役立つと考えているからだ」と語る。
同氏は、トラッキングとソーシャルメディアに関する強力な指標のおかげで、ソーシャルメディアの透明性が高まっていると指摘し、「成功」の意味については現実的・具体的であることが重要だ、と付け加える。「マーケターにとって、ベンチマークや閲覧回数などの従来型のオンライン指標に頼るのは容易なことだが、実際に取られた行動を通じたエンゲージメントをより示唆しているかもしれない、ほかのものについても考慮に入れなければならない」。
「ハイレベルなフィールドで競争を」
複数のエージェンシー幹部が、インフルエンサーがどうやって嘘のインプレッション数や、チェック不可能なウェブサイトトラフィックを主張するかについて語っている。また、ブランドが支払うべき金額を追跡しようとする際に、フォロワー数が依然として目安になっているので、たちの悪いフォロワー買収が横行している。ボットアカウントや、インスタグラムの「ポッド(pod)」のようなエンゲージメントの改ざん、といったアクティビティの偽造もよく行われている。そのなかには、インスタグラム自体が厳しい措置を取りはじめたものもある。
「実際のところ、我々はガラクタを相手に競争している。ハイレベルなフィールドで競争をしたい」と、アハロジーのCEO、ギルブレス氏は言う。
Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)