インフルエンサーでリアリティ番組のスターであるグレース・チョウ氏は2020年4月、ポップスターであるボーイフレンドのショウ・ルオ氏の浮気の数々をSNSで暴露。アジア中でセンセーションを巻き起こした。その後、ルオ氏と別れたチョウ氏は、休憩ののちに、ビューティ分野における起業家となるべく、次の一歩を踏み出した。
インフルエンサーでリアリティ番組のスターであるグレース・チョウ氏は2020年4月、ポップスターであるボーイフレンドのショウ・ルオ氏の浮気の数々をソーシャルメディアで暴露。アジア中でオンライン上のセンセーションを巻き起こした。その後、ショウ・ルオ氏と別れたチョウ氏は、休憩をとったのちに、ビューティ分野における起業家となるべく、次の一歩を踏み出した。
チョウ氏は2021年1月20日、中国のeコマースプラットフォーム、Tモール(天猫)でビューティプロダクトの新シリーズである「コード・ミント(Code Mint)」をローンチし、中国におけるデジタルネイティブのインディ・ビューティ・スタートアップのブームに加わった。彼女はウェイボ(微博)上の約1100万人のフォロワーを活用して、ウェイボライブストリームを主催し、同ブランドの宣伝を行った。その結果、1日の終わりまでにプロダクトは売り切れとなった。ローンチの成功は、中国におけるデジタルネイティブのインディ・ビューティの人気の高まりと、オンライン販売を推進するインフルエンサー、セレブリティ、ライブストリーミングの力を反映している。
中国の美容品購入者は「国内の化粧品ブランドやプロダクトを試すことに、よりオープンになっている」と、チョウ氏はeメールで回答した。「そのため、すでに確立されている大手美容企業と競争する機会を新しいブランドたちが得ている」と述べた。
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中国のインフルエンサー業界の古株
チョウ氏は北京を拠点としており、複数のソーシャルチャンネル全体で1900万人以上のフォロワーを持っている。彼女の高級なライフスタイルと、ポップスターであるルオ氏との9年間の恋愛関係のおかげで、過去10年間にオンライン上で大きな知名度を得た。
チョウ氏が昨年4月に投稿した、ルオとの別れに関するすべてのソーシャル上のコンテンツによって、彼女に対する同情の嵐が巻き起こり、その結果ウェイボのサーバーは一時的にクラッシュしてしまった。台湾メディアの報道によると、この騒動でルオ氏は2つのバラエティ番組から降板させられ、950万ドル相当のブランド契約を失ったという。一方で、チョウ氏は、ウィリアム・チャン氏、オーヤン・ナナ氏、ファン・チェンチェン氏、リウ・ユーシン氏などの主要な有名人が出演する、ストリートウェア文化を中心としたアイチーイー(爱奇艺)のリアリティ番組 「フォートリー(Fourtry)」 の第2シーズンに参加し、インフルエンサーから真の有名人へと飛躍した。
「彼女は間違いなく中国のインフルエンサー業界の古株だ」と、このブランドの共同創設者であるリン・ジュー氏は述べた。ジュー氏はハーバード大学の卒業生であり、チョウ氏の友人であり、国連の政策アナリストを経て、北京に引っ越し、ブランドに参加したという経歴を持つ。
コード・ミントが有する競争優位
コード・ミントにはひとつ、競争優位がある。韓国最大の化粧品OEMのひとつであるコスマックス(Cosmax)からエンジェル投資を受けているという点だ。ジュー氏は、「(コスマックスは)これまでアーリーステージのメイクアップブランドに投資したことはない。私たちは彼らの最初の投資だ」と語る。同氏によると、同ブランドは、今春に予定されている新たな投資ラウンドのため、まだ名前は明らかにされていないが、大手の国際的なビューティ複合企業とも交渉中だという。
チョウ氏のビューティブランドのローンチは、6年間成功を収めてきたアパレルブランド、グレース・チョウ(Grace Chow)に続くものだ。グレース・チョウはタオバオ(淘宝)上の店舗で年間売り上げ10億人民元(約167億円)に達している。
「私はずっと自分の化粧品ブランドを立ち上げたいと思っていた」と語るチョウ氏だが、彼女のビューティ分野への最初の一歩は2017年にリリースされたリップグロスだった。「当時は残念ながら、化粧品ラインを開発する時間も人手もなかった。2020年になって、ついに私はこれに時間を費やせるようになり、私のビジネスパートナーたちは、私と一緒にこの新しいビューティブランドを作るために(中国に)戻ってきた」と彼女は語る。
ライブストリーミングが販売を牽引
コード・ミントは中国の洗練されたソーシャルコマース・エコシステムのなかで上手く展開しており、そこではライブストリーミングがブランドの主要な販売を牽引している。コード・ミント立ち上げのチョウ氏によるライブストリームセッションは240万人の視聴者を集めた。そこでは商品を購入するためのリンクが含まれており、プロダクト完売につながった。このシリーズの商品のひとつであるハイライターは、ローンチ後3分もしないうちに売り切れてしまった。3月上旬に再入荷する予定だという。
また、オリジナルのTikTok中国版であるドウイン(抖音)とオンラインストアの追加について交渉中であるほか、動画プラットフォームのビリビリ(哔哩哔哩)を使って、eコマースのためのデジタル上の存在を拡大することを検討しているという。
「中国のプラットフォームは今どこも、独自のエコシステムを構築している」と、ジュー氏は述べた。「彼らはどこも、タオバオを閉じ、独自のeコマースビジネスを構築しようとしている。私たちは中国のZ世代とつながりを作りたいと考えており、ビリビリは彼らが利用するメインのプラットフォームである」。
「クリーンビューティ」というコンセプト
また、この2年間でドランク・エレファント(Drunk Elephant)やスーパーグープ(Supergoop)などの安全性を謳う「クリーンビューティ」ブランドが中国市場に進出してきたこともあり、同社も「クリーンビューティ」というコンセプトを中国の主流に持ち込むことを目指している。
「私はとても敏感肌なので、美容製品に関しては成分を厳選している。しかし正直なところ、これらのプロダクトをローンチする前、私は『クリーンビューティ』という概念についてあまり知らなかった」とチョウ氏は述べた。「クリーンビューティのメイクは選択肢が限られているので、今は自分の製品を使っている」。彼女は、若い世代のおかげで、中国市場でのクリーンビューティの可能性に「自信」を持っていると付け加えた。
「クリーンビューティ」の概念は、中国の主流の美容市場ではあまり知られていない。「アメリカにいる(消費者)なら、(この概念は)当たり前のこと」と、ジュー氏は述べた。「なぜなら、セフォラ(Sephora)で買い物をすると、多くの商品にはクリーンであることを示すマークがついているからだ」。
中国での発売に続いて、同ブランドは今年後半に米国への海外展開を計画している。チョウ氏の主なソーシャルメディアのフォロワーは中国だが、彼女はインスタグラムでは220万人のフォロワーも抱えており、国際的なファン基盤も持っている。
[原文:Influencer Grace Chow taps into China’s indie beauty craze with Code Mint]
LIZ FLORA(翻訳:塚本 紺、編集:長田真)