パンデミックの真っただなかに、世界のサプライチェーンは混乱に陥った。多くのブランドは商品の到着を何カ月も待つこととなり、到着するのが遅すぎた商品は過剰在庫となって対応を余儀なくされた。現在これらの問題の多くは落ち着いたが […]
パンデミックの真っただなかに、世界のサプライチェーンは混乱に陥った。多くのブランドは商品の到着を何カ月も待つこととなり、到着するのが遅すぎた商品は過剰在庫となって対応を余儀なくされた。現在これらの問題の多くは落ち着いたが、別の問題が浮上した。インフレと個人消費の減少が、商品の仕入れの計画における頭痛の種となっているのだ。
ナイキ(Nike)やフット・ロッカー(Foot Locker)などスポーツウェアのブランドも、在庫管理の問題に直面している。ナイキの株価は10日間(8月23日時点)連続での下落という記録を打ち立て、異例ともいえる苦境に立たされた。この主な原因として複数のアナリストが挙げるのが、ナイキの継続的な過剰在庫だ。
8月23日に四半期決算を発表したフット・ロッカーは、消費支出の低下と過剰在庫が影響し、売上高は約10%減少した。
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メーシーズ(Macy’s)のような大手の小売企業にとっても、在庫は大きな負担で、過剰に抱えた在庫を減らすため大幅な値下げを余儀なくされた。CEOのジェフ・ジェネット氏は8月22日の決算発表で、値下げによって全体の在庫を減らすことはできたものの、先々のシーズンの仕入れを正確に予測することがより困難になったと述べた。
「第2四半期の業績は私たちの予想を大幅に上回るものだったが、これはプロモーションや値下げによるもの。そのため、消費者の状態の潜在的な変化を読み解くことが難しくなった」とジェネット氏。「今年の残りの期間の計画を立てて2024年について考えるにあたり、当社の顧客が受ける影響について引き続き警戒している。特にメーシーズでは、識別できている顧客の約5割は平均世帯年収が75,000ドル(約1099万円)以下だ」。
だが、下着ブランド「ハーパー・ワイルド(Harper Wilde)」でマーチャンダイジングと在庫計画を担当するディレクターのナディア・フルシュカ氏によると、インフレや個人消費の減少が在庫計画に与える影響は、パンデミック初期に突然訪れた混乱と比べれば穏やかで、対処しやすいものだという。
「インフレはじわじわと進むため、それに応じた調整ができる」とフルシュカ氏。「消費者が支出を抑えるといった事態は、さらに予測がしやすく、もっと緩やかに起こる。しかしコロナ禍は、文字通り一夜にしてすべてが変わった」。
数年間にわたるパンデミックの混乱はハーパー・ワイルドにとって、より不安定な在庫計画に備える上で役に立ったとフルシュカ氏は話す。同社では航空輸送と海上輸送の比率を、7対3(航空輸送を優先)から3対7(海上輸送を優先)に切り替えた。海上輸送は比較的時間を要するが、航空輸送よりも費用が手ごろで、特に米国の港の混雑が2022年末にようやく解消してからは、遅延も発生しにくくなった。
この変更によって、同社の週ごとの在庫回転率(在庫の入れ替わりの速さ)が70%向上したとフルシュカ氏は語る。
[原文:Inflation is complicating brands’ inventory planning]
DANNY PARISI(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)