インドのオンライン小売り企業フリップカート(Flipkart)による「Facebook360度動画」第1弾は一見、同国バンガロールにあるフリップカート本社オフィスのツアー動画だ。しかし実は、年に一度の大セールの割引クーポンを獲得できる宝探しにもなっている。
インドのオンライン小売り企業フリップカート(Flipkart)による「Facebook360度動画」第1弾は一見、同国バンガロールにあるフリップカート本社オフィスのツアー動画だ。しかし実は、年に一度の大セールの割引クーポンを獲得できる宝探しにもなっている。
9月28日の早朝に投稿された40分間のこの動画は、フリップカートの従業員が登場し、同社のロビーや会議室のほか、映画や音楽のための部屋を案内。どの撮影場所にも、さまざまな商品の割引内容が隠されており、スマートフォンを回転させて、それを見つけ、スクリーンショットを撮影するよう呼びかけている。「Ab itne mein itnaaa milega(より安くよりたくさん)」というキャンペーンテーマに沿った、エンターテインメントになっているのだ。
10秒以内にスクショを撮影
動画を見ていくと、フリップカートオフィスにある「映画部屋」の壁のポスターや、オフィスを忙しく動き回るフリップカート従業員のTシャツなどに割引内容が隠されていることに気がつくだろう。たとえば、ある場面では、Appleの「iPad」の5000インドルピー(約7700円)割引を手に入れることができる。また別の場面では、マイケル・ジャクソンの壁画に、6399ルピー(約9900円)のポータブルスピーカー「JBL flip」を4999ルピー(約7700円)に値下げする割引内容が隠されている。
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映像には同時にタイマーが表示されており、そのカウントダウンにあわせて10秒以内に割引内容を見つけ、スクリーンショットを撮らなくてはいけない。割引内容の数は全部で10個だ。
撮影したスクリーンショットをFacebook動画のコメント部分でシェアし、一番うれしい割引を書き込むと、最大15件の電子ギフト券を獲得するチャンスを得られる。動画内の10個の割引内容をすべて見つけ、スクリーンショットをシェアし、自分だけのうれしい理由を最初にシェアした人は、バンパー賞(bumper prize)として5万ルピー(約7万7000円)相当の電子ギフト券が与えられる。
インドの一大セールシーズン
「インドでは動画が軌道に乗っているが、これをもう一歩進め、受け身で画面を見る以上のインタラクティブなものにしたかった」と、電通ウェブチャトニー(Dentsu Webchutney)のクリエイティブディレクター、 P.G.アーディティヤ氏は語る。「オーディエンスがコンテストに参加したくなるような工夫を考え出したかった」。
インドでは10月、「光のフェスティバル」として知られるディーワーリー(ヒンドゥー教の新年のお祝い)があり、買い物シーズンの最高潮を迎える。ディーワーリーに向けて、米国で言えばブラックフライデーや感謝祭のセールのようなものが目白押しで、複数のブランドが従来のメディアやソーシャルメディア上で宣伝合戦を繰り広げるのだ。
同国最大のオンライン小売りサイトのひとつであり、インドのAmazonとも称されるフリップカート。この時期に、「ビッグ・ビリオン・デイズ」(The Big Billion Days)と銘打った、年に一度のセールを、今年で3年連続で実施している。
毎年新しい宝探しを実施
今回のFacebook360度動画の取り組みは、フリップカートとその代理店である電通ウェブチャトニーが2015年に実施した同様の取り組みの延長上にある。フリップカートは2015年の「#TheBigBillionHunt」で、インスタグラムの複数のアカウントとタグを使い、インスタグラム上で宝探しゲームを実現した。この取り組みは実施した12時間で多数のユーザーを集め、またフリップカートはインスタグラムの1日あたりユーザー数が350%増加した。一方、今年の動画は最初の2日で再生回数が72万8000回を超え、2万1000件以上のコメントが集まった。
「昨年のキャンペーンの成功を受け、毎年新しい宝探しを実施するべきだと判断した」と語るのは、電通ウェブチャトニーのアソシエイト・バイスプレジデントを務めるパラシャント・ゴパラクリシュナン氏だ。「つまり、今回のFacebook360度動画のように、最新のソーシャルイノベーションを推進力の中心に据えていくということだ」。
Amazonインドとの厳しい競争
今回の構想はエンゲージメントの向上を狙ったものだが、同時に、重要なセール期間におけるフリップカートの売上増につながるのは間違いないだろう。フリップカートの売り上げは何年も増加が続いてきたが、最近は横ばいになっている。インドの一般大衆にeコマースをもたらし、インドでもっとも価値のある新興企業とされるフリップカートだが、急激に追い上げてきたAmazonインド(Amazon India)との厳しい競争に直面しているのだ。
フリップカートのマーケティング担当バイスプレジデント、シャウミャン・ビスワス氏は、「人々を引き込むストーリーによるユーザーとのエンゲージメントが、我々には売り上げと同じくらい重要だ」と語っている。
Tanya Dua(原文 / 訳:ガリレオ)