2020年、 D2C ブランドは収益成長の「壁」につきあたる

D2C(Direct to Consumer)が変化の兆しを見せている。

ここ数年で、消費者への直販を謳う企業は大きく増えた。そのほとんどはオンラインで販売され、コストが低く抑えられるため低価格で品質の高い製品を提供できる。

たしかに理屈は通っている。だが市場では変化が起きている。これらD2Cブランドが登場した当時は、FacebookとGoogleのインベントリーが潤沢だった。カスタマー獲得コストがいまよりはるかに安かったのだ。このコストが高騰したことで、デジタルネイティブのD2C企業の多くが壁に突き当たることとなった。ベンチャーキャピタルも、創業者も、かつて有効だったビジネスモデルが通用しなくなりつつある現実を認識するようになった。

D2Cブランドとしての成功の形が変わりつつあるのだ。ベンチャーキャピタルから複数ラウンドで資金調達を行った企業は、10倍のリターンが求められる。非常に迅速な商品開発と販売が求められるのだ。ユニコーン企業もその例にもれない。たとえば歯の矯正器具を販売するスマイルダイレクトクラブ(SmileDirectClub)は2019年に上場を果たした。2018年の同社の収益は4億2300万ドル(約462億円)だったが、報道によれば2018年第1四半期から2019年第2四半期までの同社のマーケティング費用は2億ドル(約218億円)となっている。アウェイ(Away)は最近1億ドル(約118億円)の資金調達を行い、時価総額はいまや14億ドル(約1530億円)に達する。同社は200ドル(約2万1800円)のスーツケースを販売しており、バッグを販売するだけのブランドではないことを投資家に示そうと躍起になっている。

いずれのブランドも、勢いを落とさないスケーリングが見込まれる有名な例となっている。いまやD2Cで成功し、急激な成長を実現するには金がかかるのが現実だ。シリーズAを超えてベンチャーの支援を受けるブランドは年間1億ドル(約118億円)の売上を期待される場合が多い。とりわけカスタマー獲得費用が高騰を続けるなかで、昨年、多数のブランドがこれについて実現不可能だと考えるようになった。

「成長は容易ではない」

飲料ブランドのアイリス・ノバ(Iris Nova)の創業者でありCEOのザック・ノーマンディン氏は「成長するのは容易ではない」と述べている。「来年どうなるか非常に興味深い」と語る同氏は、D2Cブランドは「成長と持続が続けられないことに気づくだろう」と続ける。各ブランドがここまで成長を続けられたのは、単にインターネットを通じた、まるでドーピングのようなグロースハックによるところが大きい。

ブリッシュ(Bullish)のマネージングパートナー、マイケル・ドゥーダ氏によれば、オンラインチャネルで急速な成長を遂げた企業は、収益が3000万から4500万ドル(約33億から49億円)に達するあたりで壁につきあたることが多いという。「D2Cの有望株ですら、(上記の収益点において)変化による懸念が生じるようになっている」。

ベンチャーキャピタルも、創業者も、盤石な企業を作り上げるための将来を見据えた指針を探そうとする。ドゥーダ氏は「企業はいつだって間違いなく成功できる戦略を追い求めるものだ」と語る。「『GoogleとFacebookで2000万から3000万ドル(約22億から33億円)まで成長して、その後はこうする』といった戦略だ。だが、そのようなものは存在しない」。カスタマー獲得コストが高騰するなかで、少数のチャネルに依存していた企業は予算が枯渇しはじめている。「これまで非常に賢明な判断をしてきたのに、この点に気づくのが遅すぎる企業が多いことに驚かされる」と同氏は語る。

次に何が起こるかは分からないのだ。確固とした価値提案をもたない企業、手っ取り早いだけのデジタルマーケティングに依存してきた企業は、いずれ行き詰まる可能性が高い。同様に堅実な商品をいくつか展開している新興の消費財ブランドも、シリーズA以降はベンチャーキャピタルからのプレッシャーに苦しむようになる。また、シードラウンドを終えたばかりの小規模ブランドは、持続可能なほかの小売チャネルを探し求めるなかで、コンテンツが伸び悩む可能性がある。

収益上の壁は22億円あたり

ベンチャーキャピタルのあいだで、D2CはこうすればOKという唯一の方法は存在しないという認識が広がっている。レアラー・ヒプー(Lerer Hippeau)のプリンシパル、ケイトリン・ストランドバーグ氏は昨年11月に行われた、米DIGIDAYの兄弟サイトであるモダン・リテール(Modern Retail)のサミットで、ポートフォリオ候補の企業にまず訊ねるふたつの質問があると語った。それが「Amazon戦略は?」と「ウォルマートで扱ってもらうための方法は?」だ。これに答えられない企業は、スケーリングのための確固とした道筋を持ち合わせていない可能性が高い。同氏は、収益上の壁を2000万から5000万ドル(約22億円から55億円)と推測している。

2020年の先行きがひたすら暗いというわけではない。だが、これをしておけば間違いない、というやり方はもはや存在しない。倒産するブランドや、伸び悩むブランドも出てくるだろう。ドゥーダ氏は次のように語る。「自立できる企業がはっきりしてくるのは、健全なことといえるだろう」。

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:SI Japan)