RETAIL REVOLUTION

「 ホリデーシーズン の大混雑が恐ろしい」:年末商戦に備える5人の小売従業員

今年のホリデーシーズンは波乱含みで、従来とは一線を画するものとなるだろう。

多くの小売企業がコロナ禍によって甚大な打撃を受けるなか、eコマースは急成長を遂げている。実際、米小売大手のJCペニー(JC Penney)やニーマンマーカス(Neiman Marcus)は経営破綻に追い込まれたが、Amazonをはじめとするプラットフォーマーは売上を大きく伸ばしている。デロイト(Deloitte)の調べによると、今年のホリデーシーズンの売上は最大1.5%増加するという。ちなみに、2019年の成長率は4.1%だった。eコマースの売上については最大35%増と予測している。

実店舗で商品を販売する小売企業はホリデーシーズンの到来に向けて、着々と準備を進めている。デジタルブランドも同様だ。しかし、先のことは誰にも分からない。米DIGIDAYの姉妹サイト、モダンリテール(Modern Retail)は、ホリデーシーズンの売上に生活のかかる5人の人物に取材し、年末商戦への備えと懸念について聞いた。D2C企業のマーケターから、モバイルアプリを通じて食料品の即日配達サービスを展開するシプト(Shipt)の配達員まで、誰もが新しい世界に足を踏み入れつつあり、必ずしも十分でない生活保障に不安を抱いている。

本稿では、2020年のホリデーシーズンという、いわば未知の世界について考察する。それがどのような変化をもたらすものか誰にも分からないが、今後何年にもわたって予期せぬ影響を生じることは確実だ。

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「作業負担が増大している」:年末商戦の大混雑に備える米量販店ターゲットの店員

ターゲット(Target)の店舗は、いろいろな意味で、普段の状態に戻っている。これまでと違うのは、誰もがマスクを着用していること、店内のあちこちにアクリル樹脂の仕切り板が設置されたことくらいだろう。だが、もっとも大きな問題のひとつは、米国ではいまだ新型コロナウイルス感染症の収束が見えないにもかかわらず、私たちが通常通りの営業に戻っていることだ。

ホリデーシーズンは年に幾度かある繁忙期のひとつで、難しい時期でもある。そしてコロナ禍のさなかにあるという事実が、状況をさらに複雑にしている。どの店にも大勢の買い物客が押し寄せるだろう。つい最近の新学期シーズンは、今年一番の忙しさだった。それにもかかわらず、私の働く店では来店客のモニタリングも制限もしていなかった。ほとんどの客はマスクを着用していたが、そうでない人に着用を強制することはできない。作業負担は増えているのに、私たちに支払われる報酬はとても十分とは言えない。

多くの店員が危険手当の支給を希望している。経営幹部や多くの事務職は年内いっぱい在宅勤務できるのだからなおさらだ。店には接客にあたる店員を配置しなければならない。それは分かる。だが、ほかの従業員が在宅勤務という贅沢を許されているのだから、もっとも危険にさらされる我々店員には適切なレベルの報酬が支払われてしかるべきだ。

店舗への客足は最小限に抑える必要がある。店員には実質的な危険手当が支払われるべきだ。時給2ドル増し程度でかまわない。勤続年数が長い者には、追加的な勤務時間や安定したスケジュールを割り当てるなど、年功に対する特典のようなものも考慮されるべきだ。感染の危険にさらされるのは我々店員なのだから、医療費も支給してほしい。そして店内に掲げた買い物時のルールは、その遵守を客任せにするのではなく、強制的に守らせる必要がある。

――アダム・ライアン氏:ヴァージニア州のターゲットに勤務する非常勤スタッフで、ターゲットワーカーズユナイト(Target Workers Unite)の連絡員を兼務

「プレゼントはあげるけど、ウイルスはあげない」:百貨店のサンタを待ち受ける、いつもと違うデジタルな世界

私が赤い衣装を着けるようになってもう8年になる。例年は、少なくとも14日間、地域の百貨店はもとより、企業や家族のイベントなど、さまざまな場所でサンタクロースに扮する。ナイトクラブでサンタをやったこともある。

ありがたいことに、取引先の小売グループはコロナ禍でも予定通りにイベントを開催するという。そこで私たちは、こんなフレーズを掲げることにした。「プレゼントはあげるけど、ウイルスはあげない」。

私は体格のよい、頑健な人間だ。心配なのは、ウイルスに感染しても、無症状のまま、子どもたちのあいだに感染を広めてしまうことだ。そんなことは絶対にゴメンだ。百貨店およびエージェントと相談して、このキャッチフレーズを厳守することで合意した。

例年は私の座る場所の前に長蛇の列ができるのだが、対策の一環として、今年は完全チケット制に切り替える。子どもたちと顔を合わせ、クリスマスに何が欲しいか訊ねることはできる。ただし、私と子どもたちのあいだには、なんらかの仕切りが設置される予定だ。写真撮影についても、実際には最低6フィート(約1.8メートル)の距離をあけるのだが、視覚的なトリックを用いてサンタと子どもたちの距離を実際よりも短く見せる工夫を講じる。

私を含め、今年は多くのサンタクロースがバーチャルイベントに参入するだろう。予約もウェブサイト経由で取ることができる。サンタは撮影用の背景の前で高画質のビデオカメラに向き合い、子どもたちと短い時間、交流する。今年は例年より早めに「ビデオ訪問」がスタートする。バーチャルイベントのおかげで、私の仕事は増えるだろう。企業イベントや家族イベントの仕事は激減するかもしれないが、減った分はバーチャル訪問でカバーしたい。

基礎疾患を持つ同僚たちは、このシーズン、赤い衣装に袖を通すことはないだろう。多くの同僚たちが悲しい思いをしている。私たちにとって、サンタは単なる職業ではなく、使命なのだから。

――ランス・スカプラ氏:リアルビアード・アンド・ベリー・サンタ(Real Beard and Belly Santa)経営者

「チップも報酬も減るばかり」:追加的な季節雇用に不安を抱く、シプトの買い物代行員

インスタカート(Instacart)やウーバー(Uber)とは異なり、シプトの配達員は自分たちの労働条件に概ね満足していた。だが報酬体系が変更されて以降、大きな重圧を感じている。(「ショッパー」と呼ばれる買い物代行員の話では、当初の報酬は注文総額の7.5%プラス5ドルの基本給だったが、現在ではアルゴリズムによる算出方法に変更されているという)。

私は免疫不全を抱えており、本来現場に出るべきではないのだが、生活費を稼がなければならないという現実がある。働く必要のあるショッパーを責めることはできない。皆、家族を養う必要がある。

率直に言って、私たちショッパーを個人事業主に分類するのは間違っている。なぜなら、私たちは事実上、シプトの管理下にあるからだ。ショッパーに与えられる柔軟性など勤務時間くらいのものである。私はシプトの営業時間が始まる朝6時に起床する。買い物代行の依頼を断ると、応答率に影響するからだ。依頼の内容によっては、最終的に最低賃金を下回る案件もある。たとえば、コストコ(Costco)での買い物代行は2時間近くかかることもあり、ガソリン代を差し引くと、報酬総額が14ドル前後になってしまう。

今月、シプトは需要に見合う体制を整えるため、さらに10万人のショッパーを雇用すると発表した。従来から、シプトはホリデーシーズン中に人材を雇用している。実を言うと、私も昨年、季節雇用されたひとりだ。だがそれは報酬体系が変更される前の話だ。いま現在、仕事にありつけないショッパーがいるというのに、さらに増員するというのだから、開いた口が塞がらない。ショッパーは地域によってはすでに飽和状態で、チップも報酬も減るばかりだ。このうえ大量の新規要員を雇用するなど、理解に苦しむ。多くのショッパーは注文が来るのを待っているのだが、仕事は新規のショッパーに優先的に回されているようだ。おそらく、新人の引き留め策の一環だろう。

――匿名希望:テキサス州在住のシプト配達員

「多くのブランドが苦労する」:新旧のチャネルに注力する、あるD2Cマーケター

3月18日頃のことだ。今年のマーケティングプランをすべて白紙に戻さざるをえなくなった。ロックダウンが発効するちょうど2日前、我々は飛行機に乗って出張先に向かう予定だった。サウス・バイ・サウスウェスト(South by Southwest)の健康とウェルネス関連の催しでスポンサーを務めることになっていたからだ。我々にとっては2020年に向けてのとても大きな戦略だった。従来、地域的なイベントに注力してきたが、その経験を足がかりに、今後は全国的なイベントにも乗り出したいと考えていた。

まだ10月も半ばだというのに、ホリデーショッピングを早めにやりたいという要望や要求を目の当たりにする。誰もが時間を持て余している。旅行にも行かない。ホリデーショッピングは待ち遠しいと思える希少な未来だ。考えるだけで心が浮き立つのだろう。

今年のホリデーシーズンは、コマーシャルが増えるのではないか。従来、広告に大きな予算を投じてこなかったブランドは、必要な規模のリーチを確保するのに苦労するだろう。選挙もあるし、興味深い時期だ。

Facebookにしてもインスタグラムにしても、SNSは我々にとって相変わらず素晴らしいチャネルだ。我々は多くのインフルエンサーたちと連携して、本格的にアフィリエイトプログラムの強化を図っている。つい先日は、3本のテレビコマーシャルをスタートさせた。ポッドキャストはサークル感覚で趣味や意見の合う仲間を集め、ブランドを広めるのに向いている。

[Facebook広告のコストについては]常に目を離さず、継続的な評価を行っている。担当チームは驚くほど機敏だ。常に予備のクリエイティブを準備して、製品やメッセージを差し替えながらテストを繰り返している。あとはパフォーマンスの推移を見守るだけだ。

――ニッキー・サケリオ:ヴオリ(Vuori)のマーケティング担当バイスプレジデント

「おむつを買っておけ」:Amazonの倉庫で働く新米従業員はホリデーシーズンまでに仕事の要領を覚えたい

最初に断っておくが、私はAmazonの倉庫でよく見かけるような、大柄で体格のよい男ではない。私は大学生で、以前は外食産業で非常に堅い仕事をしていたが、あらゆるものが機能停止に陥ったとき、私を雇ってくれたのはAmazonだけだった。

テキサス州の物流施設に配属されて3週間ほどになる。倉庫の業務に関しては、まったくの素人だ。当初、仕事に行くのがひどく憂鬱だった。というのも、今月、私たちの職場で新型コロナウイルス感染症の陽性者が出たからだ。私の出勤日は月曜日から水曜日で、時間は午前3時から午後2時まで。8時か9時ごろ就寝して、朝の2時に起床する。職場まで車で45分だ。1日に20分の有給休憩が2回と、無休の昼食時間が30分。まあまあ悪くない条件だ。

荷物の量はすでに手一杯の状態だ。配送量が急増するホリデーシーズン中のシフトを考えると、いまから心底恐ろしい。

コロナ禍がなければ、私の出勤初日はまったく違うものになっていただろう。新入りは大勢いるのに、彼らを訓練する者がいない。結果的に多くの手違いが起こる。聞くところによると、以前はちゃんとした研修があったそうだ。だがいまは、時間的に余裕がない。新人の受け入れ体制がこれでは、何百もの荷物が迷子になるのも無理はない。

職場には、ソーシャルディスタンスの徹底を指導する「アンバサダー」と呼ばれる人々がいる。最初は混乱したが、なかにはコツを教えるのがとてもうまいアンバサダーもいた。作業中の位置取りや、1日を乗り切り、翌日に備える秘訣など、仕事の要領のほとんどは同僚から学んだ。

倉庫の仕事の良い面は、以前従事していたレストランの仕事ほど、精神的な負担が大きくないことだ。ささやかなプラスと言えば言えなくもない。その反面、足首を捻挫したのに、1日の仕事が終わるまでまったく気づかなかった。倉庫がそれほど大きくないこともありがたい。大規模な倉庫だと、トイレに行くのに15分も歩く。シアトルの倉庫に勤務していたアンバサダーのひとりから、「おむつを買っておいたほうがいいよ」と言われた。

――匿名希望:テキサス州のAmazonの倉庫で働くフルタイムの従業員

[原文:‘I’m already dreading the big rush’: 5 retail workers on the upcoming holiday season

モダンリテール編集部(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)