イケア(Ikea)が、人々がより長いあいだカタログを利用できるよう、ピンタレストでショッパブル(買い物ができる)な形式でのカタログ展開に取り組んでいる。アイテムやスタイルの好みに関するアンケートを行い、その結果に基づいて、ユーザーボードにプロダクトの「ピン」を追加する、ピンタレストの仕組みを活用する形だ。
スタートアップブランドたちのなかには、手に持って見られるカタログ印刷のビジネスを開始しているところもある。一方で200ページ以上からなるカタログで知られるイケア(Ikea)は、彼らのカタログをピンタレスト(Pinterest)と統合しようとしている。
人々がより長いあいだカタログを利用できるよう、またカタログがサイトと郵便箱以外に存在できるように、ピンタレストでショッパブル(買い物ができる)な形式でのカタログ展開に取り組んでいる。アイテムやスタイルの好みに関するアンケートを行い、その結果に基づいて、ユーザーボードにプロダクトの「ピン」を追加する、ピンタレストの仕組みを活用する形だ。
イケアのメディア・プロジェクト・マネージャーであるケリー・ロンガルゾ氏が説明するところによると、ピンタレストは「DIY愛好家やハウツー、カスタマイズを好むユーザーが集まる場所」となっている。これはイケアがリーチしたいプライムオーディエンスだ。「ただ(カタログを)コピー・アンド・ペーストしたくはなかった。すでにデジタル版のカタログは、オンラインで構築している。しかし、過去に行われたプロモーションは味気がなく感じられた。人々にオンラインでカタログを見てもらうアイデアが尽きていた。そのため何か変わった手法を探した」と、ロンガルゾ氏は言う。
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ピンタレストカタログ
イケアが長年起用してきたメディアエージェンシー、ウェイブメーカー(Wavemaker)と、ピンタレストの戦略部門、クリエイティブ部門と協力して作り上げたのが、イケアのプロダクトアンケートだ。これをピンタレスト内に構築し、ユーザーが何を購入しているのか、どのようなスタイルの家具を彼らが求めているのか、そして個人の好みについてのその他の情報を集めた。アンケートに答えたあとは、ユーザーの回答をもとにイケアが自動でピンタレストボードを埋めるか、推薦されたプロダクトを閲覧しながら自分でボードを埋めることもできる。すべてのピンがイケアのプロダクトカタログページとリンク付されている。
ロンガルゾ氏によると、昨年8月にローンチして以来、このツールを使って2万5000のピンタレストボードが作られたとのことだ。アンケートの完了率は4%となっている。プロダクトページへと移動するコンバージョン率とともに、エンゲージメント面からも、このピンタレストカタログの成果を測っているとのことだ。数字は明らかにしなかった。
この4月に株式上場したピンタレストだが、結婚式、自宅のデザイン、レシピといったアイデアを探すユーザーによるサイトトラフィックをマネタイズする取り組みを続けてきている。有料・無料ともに、ブランドパートナーシップはその戦略の大部分となっている。イケアの例のように、ブランド向けにアンケート形式の「プロダクト発見用」エンジン運営に加えて、ピンタレストは有料広告プロダクトも構築した。プロモーテッド・ピン(Promoted Pins)広告スポットに加えられるスポンサード動画ピンを展開している。
「ピンタレストではユーザーはデコレーションやプロダクトを念頭にアクティブに検索を行うため、ブランドたちにとってまず最初に頭に浮かぶプラットフォームとなった。そのことはピンタレストにとっては優先事項だ。かつてのピンタレスト像は、インスピレーションをもらるプラットフォーム、といった具合だったが、いまではそこにアクションを加えた形だ」と、ウェイブメーカーのマネージングパートナーであるノア・モーリン氏は言う。
「プリント版のみは困難に」
プラットフォームとのパートナーシップを最大限に活用するため、イケアのチームは定期的にFacebookやピンタレストなどプラットフォームの担当者とのワークショップに参加していると、ロンガルゾ氏は言う。なかでも、もっともワークショップに参加しているのが、ピンタレストとのことだ。こういった場で議論を重ねることで、動画広告やショッパブルカタログの構築(これは有料プロダクトではない)といったピンタレスト上の有料戦略、オーガニック戦略の肉付けを行ってきた。しかし、自社からのeメールやほかのプラットフォーム、サイト上でのプロモーションのための支出は行ったという。
今後、新しい形式のデジタル広告を探り、ショッパブル機能を戦略に取り組んでいく計画をイケアは抱えているとロンガルゾ氏は言う。新しいデジタル広告にはイベントや新しく作られたモバイルアプリなどがそこに含まれる。と同時に、プリント形式のカタログの製造は減らしていくと述べた。
「(カタログは)イケアのはじまりから、そのコンセプトにおいて非常に大きな部分を占めてきた。2019年になり、消費者の行動が変わりつつあることを目にしている」と、ロンガルゾ氏は言う。「世界はよりデジタルへと移行しており、プリント版のみ(のカタログ)は困難になりつつある」。
Hilary Milnes(原文 / 訳:塚本 紺)