ハイドロフラスク(Hydro Flask)の親会社であるヘレンオブトロイ(Helen of Troy)は、ウォーターボトルへの関心が薄れるのを受けて戦略を転換しつつある。
ハイドロフラスクをはじめ、オクソー(OXO)、オスプレー(Osprey)、ピュア(PUR)、ドライバー(Drybar)などほかの主要ブランドを保有しているヘレンオブトロイは7月10日に第1四半期の決算を発表する際、断熱飲料の「売上低下」を指摘した。ハイドロフラスクも含むヘレンオブトロイのホーム&アウトドア部門の売上高は、前年同期より7.3%減少した。ヘレンオブトロイは、季節扇風機、ヘアケア器具、空気清浄および加湿製品の売上減少も理由に挙げた。
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ハイドロフラスク(Hydro Flask)の親会社であるヘレンオブトロイ(Helen of Troy)は、ウォーターボトルへの関心が薄れるのを受けて戦略を転換しつつある。
ハイドロフラスクをはじめ、オクソー(OXO)、オスプレー(Osprey)、ピュア(PUR)、ドライバー(Drybar)などほかの主要ブランドを保有しているヘレンオブトロイは7月10日に第1四半期の決算を発表する際、断熱飲料の「売上低下」を指摘した。ハイドロフラスクも含むヘレンオブトロイのホーム&アウトドア部門の売上高は、前年同期より7.3%減少した。ヘレンオブトロイは、季節扇風機、ヘアケア器具、空気清浄および加湿製品の売上減少も理由に挙げた。
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ボトルからタンブラーへのシフト
2009年にオレゴン州で創設されたハイドロフラスクは、ウォーターボトルのカテゴリーで大手ブランドになった。しかし米国では、「消費者の嗜好がボトルからタンブラーにシフトし続けており、そこでのハイドロフラスクの存在感は小さい」と、ヘレンオブトロイの最高執行責任者(COO)を務めるノエル・ジョフロア氏は決算発表で述べた。ハイドロフラスクはタンブラーも販売しているが、従来からウォーターボトルの方がより多くの市場シェアを占めてきた。ハイドロフラスクの商品は実店舗とオンラインに加えて、Amazonでも購入できる。
再利用可能なウォーターボトルへの需要は、近年飛躍的に増加し、ナルゲン(Nalgene)、イエティ(Yeti)、スウェル(S’well)などのブランドが恩恵を受けた。しかし現在は、インフルエンサーによる熱狂的なレビューや、TikTokのバイラル動画により、タンブラーが急成長している。そしていま、ハイドロフラスクは競合に追いつくため、タンブラーに重点を移しつつある。
市場でもっとも人気のあるタンブラーのひとつは、スタンレー(Stanley)の40オンス(約1180ml)のクエンチャータンブラーだ。報道によると、、このタンブラーは入荷してからわずか数時間または数分のうちに売り切れたという。一時は15万人の順番待ちリストができたほどだ。ハイドロフラスクは6月(最新の決算発表にはこの月が含まれていない)に、新しいトラベルタンブラー(Travel Tumbler)をソフトローンチした。この商品には2つのサイズがあり、カスタマイズ可能で、スタンレーの商品と同様、柔らかいストローとハンドルが付いている。
トラベルタンブラーの売上はヘレンオブトロイの最新の決算には反映されていないが、「当社は、顧客からすぐに反応が見られたことに手ごたえを感じており、このハイドロフラスクファミリーの新商品が成長することに楽観的だ」とジョフロア氏は述べる。同社はハイドロフラスクの今年の売上が「昨年に比べて、横ばいか、微増」と予測している。
カナコードジェニティ(Canaccord Genuity)のマネージングディレクターを務めるスーザン・アンダーソン氏は、売上が良ければ、ハイドロフラスクが「トレンドを追って」さらにタンブラーへの投資を増やすことが考えられると、米モダンリテールに語った。「同社は現在、ほかの販売チャネルの確立を試みているのだと思う。これまでは主にスポーツ用品店で流通しているが……アウトドア用品店に限らず、タンブラータイプの商品を多く扱っている小売店舗で販売することにより、売上増が見込めるだろう」と、同氏は説明している。
構造改革「プロジェクトペガサス」
ハイドロフラスクの売上減少にもかかわらず、ヘレンオブトロイが所有するブランドの多くは好調だ。オクソーは缶切りやコーヒーメーカーなどの商品を販売しているが、「主要カテゴリーでは市場全体より良い業績を上げている」と、ジョフロア氏は述べており、キッチン用品や乾燥食品保存容器の売上は、パンデミック前の水準を「しっかりと超えている」という。アウトドア用リュックサックを販売しているオスプレーも、ハイキングや、サイクリング、旅行への関心の高さから、「非常に好調」であると同氏は語った。
ヘレンオブトロイの第1四半期の売上高は、前年同期比6.6%減だった。それでも、CEOのジュリアン・ミニンバーグ氏は、業績は 「予測より良かった」と述べた。同社の粗利益率は380ベーシスポイント改善し、在庫は1年前より30%近く減少して、2024年度の残りについて見通しを維持している。
同社は10月、プロジェクトペガサス(Project Pegasus)を発表した。これは年間7500万ドル(約104億円)から8500万ドル(約118億円)の経費削減を目標とした構造改革の計画だ。ミニンバーグ氏によると、このプロジェクトは「営業利益率、キャッシュフロー、運営と組織の効率性を改善するとともに、将来の成長に向けた投資のための基盤を作り上げる」ことを目標としている。プロジェクトペガサスのローンチから3カ月後、同社は全世界の従業員の10%をレイオフすると発表した。
ヘレンオブトロイはプロジェクトペガサスのもと、「大きな勢いを見せており、以前に発表した目標に沿ったコスト削減を実現している」と、ジョフロア氏は述べた。コスト削減の25%は2024年度に予定されており、「大部分」が2025年度に、残りが2026年に予定されていると、同氏は付け加えた。
カナコードジェニティのアンダーソン氏は、同社が最新の決算で「非常に良い結果」を収めたと、米モダンリテールに語った。「在庫の削減によるフリーのキャッシュフローは、間違いなく決算における大きなプラス要因で、ペガサス戦略がうまく機能しており、実際の結果が生み出されつつあることを示している。売上も予測を少し上回った。この結果から、ヘレンオブトロイは人々が求めてきたすべての部分で改善を果たしていると思う」と、同氏は述べている。
[原文:Hydro Flask owner Helen of Troy says shoppers are turning to tumblers]
Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Hydro Flask