音楽プロデューサーのファレル・ウィリアムスが、スキンケアブランドを立ち上げるのに理想的なセレブリティーであることは、彼の47歳とは思えないほどに若々しい顔を一目見れば明らかだ。ただ彼は、その点を打ち出すのみならず、「斬新な」サブスクリプションビジネスを、ヒューマンレース(Humanrace)で展開している。
音楽プロデューサーのファレル・ウィリアムス(以下、ファレル)が、スキンケアブランドを立ち上げるのに理想的なセレブリティであることは、彼の47歳とは思えないほどに若々しい顔を一目見れば明らかだ。ただ彼は、その点を打ち出すのみならず、「斬新な」サブスクリプションビジネスを展開している。
2020年11月25日にスタートしたファレルのブランド、ヒューマンレース(Humanrace)。同ブランドは現在人気を博しており、スキンケア用の3点セットは、たびたび完売している。先日も同ブランドは、この製品の再入荷対応を行った。ファレルは、過去にもスニーカーデザインを手掛けて大成功を収めており、ヒューマンレースもストリートウェア業界独自のドロップモデル(不定期での限定販売)や高揚感の演出と、D2C界隈で人気が高まっている、サブスクリプションモデルを組み合わせている。
「私たちはスニーカーカルチャーから生まれた」と語るのは、ヒューマンレースの代表を務めるレイチェル・マスカット氏だ。同氏は、ファレル・ウィリアムスとスキンケアブランドを立ち上げる以前、アディダス(Adidas)でコラボレーション担当 グローバルディレクターを務めていた。その際には、ファレルのコラボレーションスニーカーを手掛けた経験もある。マスカット氏は、スニーカーが発売からわずか2時間半で完売したことを思い出し、以下のように語る。「予想以上に早く売り切れてしまったのを覚えている」。
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ストリートブランドと美容ブランドの密接な関わりは、決して珍しいことではない。過去2年間にも、オフホワイト(Off-White)とアモーレパシフィック(Amorepacific)、シュプリーム(Supreme)とパット・マクグラス(Pat McGrath)、キス(Kith)と、さまざまなブランドのあいだで、コラボレーションが行われてきた。
ヒューマンレースの特徴
ヒューマンレースのジェンダーニュートラルな製品は、発売時期にスニーカー界のインフルエンサーに贈られた。これが、スキンケアに不慣れな男性消費者の需要を押し上げる要因になったという。「多くの男性が、肌を手入れする習慣がまったく無いという事実を知れて、本当によかった」とマスカット氏は語る。なお、同ブランドの男女顧客比は、推定50:50なのだという。
ヒューマンレースの特徴のひとつが、再入荷待ちの顧客へのコミュニケーションだ。たとえば同ブランドでは、再入荷時期が近くなると、「製品が間もなく再入荷される」という案内文と、メールアドレスの登録欄がWebサイトに表示される。アドレスを入力して会員登録しておくと、再入荷した製品が一般顧客に売り出されるよりも前に、パスワードを使って先行予約をすることができるという。この斬新な会員制をベースとしたモデルが、顧客のロイヤルティーを高めるのだと、マスカット氏は強調。ヒューマンレースの会員制eコマースの機能を請け負うボールド・コマース(Bold Commerce)によると、12月に再入荷分を販売する際には、発売日より1日はやく先行購入できる権利を持っていた登録者は、5万人にもおよんでいたという。
また、ヒューマンレースの創設者であるファレルが、会員限定のイベントやコンテンツによって、ブランドロイヤルティを構築する役割を担っているのも、同ブランドの特徴だ。「会員とのコミュニケーションには、チャンスがあると見込んでいる」とマスカット氏。現在検討しているのは、ファレルや、エレナ・ジョーンズ氏(ファレルのかかりつけの皮膚科医)のZoom対談だ。
製品を届けるだけでは不十分
製品案内以上の価値を会員に提供するブランドについて、「これをしっかり理解し、実践できているブランドは順調だ」と語るのは、ボールド・コマースの共同設立者で、事業成長担当バイスプレジデントのジェイ・マイヤース氏だ。D2Cのサブスクリプションモデルには、毎月製品を届けるだけでなく、「キュレーションとアクセス」も重要だと同氏は強調する。
「サブスクリプションを申し込んでもらうことは、単に製品を売ることよりもはるかに難しい。そこには大きなコミットメントが必要だ」とマイヤース氏。「単なる、製品補充にとどまらない何かを顧客に届けることを、賢いブランドは理解している」。
ヒューマンレースはさらに、ラッパーのタイラー・ザ・クリエイター、ファレルの妻で、モデル/デザイナーのヘレン・ラシチャンなどの著名人とともにウェルビーイング(Well Beings)と呼ばれるコミュニティを作り、ブランドを宣伝している。「彼らのことは、このコミュニティの友人と見ている。現在のところ、報酬は発生していない」。
ヒューマンレースは、いまのところD2Cに焦点を当てているが、将来的には卸売パートナーとの提携も視野に入れるという。マスカット氏は以下のように述べる。「卸売事業への進出する野心は、明確に持っている」。
[原文:Inside Humanrace’s subscription-based, streetwear-inspired business model]
LIZ FLORA(翻訳:田崎亮子/編集:村上莞)