2018年、デザインとビジネスへのアプローチを最新化するという偉業ともいえる目標を掲げ、エアロソールズのCEO職を引き受けたアリソン・バーゲン氏。ブランド再編成について、社内変更や製品の価格設定など、最近の変更に対する顧客の反応についても語ってくれた。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
エアロソールズ(Aerosoles)のCEO職を引き受けた後、アリソン・バーゲン氏はファッションファンに同ブランドを購入してもらえるよう全力投球し続けている。
バーゲン氏は、米Glossyポッドキャストで、「コンフォートシューズのブランドで働くようになるとは思ってもみなかった。(このCEO職を)引き受けるまでにオファーは2回あったと思うのだが、それは自分のエリート意識を克服しなければならなかったから」と述べている。バーゲン氏は、それまでに、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)、マイケル・コース(Michael Kors)、ダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)でマーチャンダイジングを率いた経験を持っていた。
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「結局(エアロソールズに)惹かれたのは、創設者のジュールス・シュナダー氏のユニークなストーリーが理由だ」とバーゲン氏は言う。「シュナイダー氏がブランドを始めた方法と理由はブランドが設立された80年代後半には革命的だったが、現在でも同様に関連性があると感じた。シュナイダー氏は『女性は、スタイルのために快適さを、また快適さのためにスタイルを犠牲にする必要はない』と考えたのだった」。
バーゲン氏は、デザインとビジネスへのアプローチを最新化することを目標に、2018年エアロソールズに加わった。この目標の実現はかなりの偉業であった。
バーゲン氏はこう述べている。「タイタニック号のような巨大な船のコースを変えるのは、ボタンをひとつ押せばすむものではない。流通、製品、ブランディング、チーム構成など、ビジネスの多くの側面を再配置して再調整することが必要になる。収益性の観点から、このブランドの関連性を高め健全な未来に推し進めるためには、これらすべてを変えていかなければならなかった」。
また、同氏は自分が実施した社内変更や、製品の価格設定など最近の変更に対する顧客の反応についても語ってくれた。
以下、対談のハイライトをお届けする。なお、読みやすさのため、若干の編集を行なっている。
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製品の割引をやめること
「周知のとおり、いま新規顧客を獲得するには非常にコストがかかるので、認知度と顧客基盤のあるブランドを継承するのは確かにすばらしいことなのだが、我々が抱えていた課題のひとつには、顧客からいつも60%オフで製品を購入できると思われていた点があった。そこで、(会社の変革により顧客を失う可能性について)率直に話し合わなければならなかった。これは多くのブランドがやっていることではないが。
私にとってとても重要だったのは、状況を認識して把握して、それに対して正直であり、そして対処するということだった。つまり、『我々は変更を行う。感情と満足度を活用し始める。ファッションに対してその時々のアプローチを取り入れることや、もっと質の良い素材を使うことなど、何であれ、品質を向上させる』ということ。これは、次のステージへ我々が移行する際に離れてしまうだろう大きな顧客ベースが存在するということを受け入れることだった。そのような顧客を保持したいとは思う。
しかし、その一方で、我々のビジネスが健全で高い収益を上げるためには、ちなみにエアロソールズは破産後に買収されているので、過去の方法ではうまくいかないのはわかっていたんだけれども、我々は、フェアな関係を持つことができる質の高い顧客にフォーカスする必要があった。誰もが知っているように製造コストは上がる一方だ。だから、回避できる策はなかった……そして、そのプロセスにおいて一定数の顧客を失った」。
会社のサイロを排除することについて
「ブランドは呼吸をしている生き物だ。だから、巨大な公開会社であろうと、小規模な現代的ブランドであろうと、私がこれまでに携わってきたすべてのブランドは植物のようであることが最大の課題だ。ブランドには水が必要だ。日々成長して変化している。そして、時代や顧客の変化する感情に合わせて進化するために、(会社は)積極的に変化し続けなければ苦しむことになる。そうなると、関連性の高い場所に再度つながり根を張るためにさらに大きなギャップを埋めなければならなくなる。
そして、私は、さまざまな部門がたがいに話し合っていないとか、製品チームが目指すものをPRが理解していないとか、このプロセスにおいて多くの企業で起こっていることを見てきた。なので、デジタル化であろうと、異なるタイプの顧客を追求する場合だろうと、我々の行動すべてが会社の目的につながっていることを確保すること、つまり調整するということに対して私はとても敏感だった。会社の構造はその大きな部分を占めている」。
オムニチャネルのメリット
「我々は、我が社の目的と相手の目的に応じて、さまざまなパートナーと異なる能力で協働している。健全な融合がある。世界は非常に不安定なので、いくつかの異なる販売チャネルに存在していることはとても役立っている。強力な実店舗戦略を直接持っているか、卸売パートナーシップを通じて戦略を行っているか、従来の卸売を通じてオンライン販売するか、ドロップシップ(直接出荷)モデルで行っているかなどにかかわらず、だ。
ドロップシップの長所と短所は、在庫を管理でき、在庫の柔軟性を最大限に高められる点だ。ビジネスとしては、エアロソールズ・ドットコム(aerosoles.com)か、パートナーのサイトかにかかわらず、最初に売れる場所で販売すると決めることができる。(しかし、同時に)在庫リスクもある。卸売業者に対しては靴を売ればそれで終わり、返品はない。これも素晴らしい。だが、(オムニチャネルには)好ましいバランスがある。なぜなら、ビジネスリーダーとして我々が求めているのは、リードタイムを短縮して在庫を減らしたり、真のオムニ戦略で在庫を共有したりすることによって、在庫をいっそう効率的に最大化する方法だからだ。なので、我々はさまざまな方法で仕事をしているし、それは非常にうまくいっていると思っている。時が変化して、状況が不安定になったときにも、様々な方法を活用して対応できる能力からメリットを受けている。
そして、我々にとっては、最下位のパートナーの一部から撤退して、ノードストローム(Nordstrom)に移ったのはものすごいことだった。コロナ以前の多くの戦略のおかげで、偶然にも他社よりもうまく生き残る準備ができていた。最下層のデパートには、大打撃を受けて破産したところが多かった。しかし我々にはそのリスクはなかった。適切なパートナーと適切な顧客ベースとのより深いパートナーシップの結果として、我が社はより健全な位置に存在できていた」。
[原文:Aerosoles’ Alison Bergen: We had to accept that we’d lose customers as we evolved]
JILL MANOFF(翻訳:ぬえよしこ、編集:小玉明依)