パンデミックによって人々のオンライン利用、テレビでのストリーミング配信動画視聴の時間が増えていることから、フォトサービスを手がけるシャッターフライや、エディブル・アレンジメンツ、ビビッド・シーツといったブランドはデジタル動画に注目する。メディアミックスを多様化し、より多くの買い物客に自社を知ってもらうためだ。
シャッターフライ(Shutterfly)がこのところ、かつてないほど大規模なマーケティング活動を展開している。
カリフォルニアを拠点に、カスタム可能なフォトブックやフォトギフトなどを手掛ける同社は、ソーシャルメディア、ストリーミング、オンライン動画を利用した活動を2021年後半から強化している。ブランドの方向性を見直す取り組みの一環で、グラフィックプリントやグラフィックデザインなど、同社が新たに展開しているサービスを宣伝することが狙いだ。また、若いZ世代の新しいオーディエンスに自社ブランドを紹介しようという意図もあると、同社で最高マーケティング責任者(CMO)を務めるクレイグ・ローリー氏はいう。
「人々がメディアを消費する方法は多様化している」。ローリー氏はそう述べ、ストリーミングサービスやソーシャルメディアなど、人々が時間を費やしている場所に合わせてメディアミックスを調整する必要があると付け加えた。「彼らが現れる場所がさまざまに異なるなか、我々は彼らが向かう場所にいたいと考えている」。
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SNSでのメディアミックス展開
こう考えているのはシャッターフライだけではない。パンデミックによって人々がオンラインで過ごしたりテレビでストリーミング配信を見たりする時間が増えているため、エディブル・アレンジメンツ(Edible Arrangements)やビビッド・シーツ(Vivid Seats)といったブランドもデジタル動画に目を向けている。メディアミックスを多様化し、より多くの購買客に自社を知ってもらうためだ。
シャッターフライは10月、メディアミックスの転換とともに実施した「メイク・イット・シング(Make it a Thing)」キャンペーンで、過去のキャンペーンより多くのデジタル動画やストリーミング動画を展開する戦略に出た。ブランディングとマーケティングを専門とするエージェンシー、ミスチーフ(Mischief)と提携したこのキャンペーンで、シャッターフライは家族の写真を使ったクリスマスツリーの飾り付けなど、自社のギフト製品を紹介する30秒のスポット動画を公開した。
また、TikTokやSnapchatをはじめとするソーシャルメディアで広告費を大幅に増やしたと、ローリー氏は述べている。「メイク・イット・シング」キャンペーンと関連のデジタルマーケティング活動は、同社にとって過去最大規模の取り組みになっているという。
ローリー氏はこのキャンペーンの広告費や詳細を明らかにしていないが、同社の広告費は昨年より増えたという。調査会社カンター(Kantar)のレポートによれば、シャッターフライが2021年上半期に費やしたメディア費用は、4700万ドル(約53億6500万円)を超えていた。2020年通期のメディア費用は2600万ドル(約29億7000万円)ほどで、2019年の3400万ドル(約38億8000万円)から減少している。なお、カンターはソーシャルメディアの広告費を追跡していないため、レポートの金額にソーシャルメディアの費用は含まれていない。
認知されていないサービスの活用法を知ってもらう
人々の購買方法が変化するなか、多くの人が「ただちに価値がもたらされ、自分がどこにいてもすぐに満足感が得られる」ことをブランドに期待していると、メディア企業のレイザーフィッシュ(Razorfish)で戦略およびパフォーマンス担当バイスプレジデントを務めるエディ・ゴンザレス氏は指摘する。こうした状況に対応するために、シャッターフライなどの企業は、より多くのマーケティングタッチポイントを作り出す戦略を採っているのだ。
「フルファネル戦略の活性化に成功したマーケターは、マーケティング活動が組織の成長をどのように促しているのかを完全に把握できるようになった」と、ゴンザレス氏は付け加えた。
ローリー氏によれば、最初のキャンペーンは、動画の視聴完了率やエンゲージメントが安定するなど、順調な成果が見られたようだ。ただし、「このような短期的な成果はなんとか上げられるものだ」と同氏はいう。「ブランドに対する認知度、親近感、関連性といった面で影響を与えられるかどうかは、長期的に見なければならない」。
2022年に向けて、シャッターフライは現在のブランドキャンペーンへの投資を継続する予定だ。これには、ソーシャルメディア、オンライン動画、ストリーミングの取り組みを拡大するという新たな方針に向けた活動も含まれる。
「このようなデジタル環境では、シャッターフライのサービスで制作できることが知られていない事例がたくさんある」と、ローリー氏はいう。「そのような事例を詳しく紹介し、しかも適切なオーディエンスをターゲットにできることが重要になる」。
KIMEKO MCCOY(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:小玉明依)