スタートアップ企業は、レジストリ(ほしい物リスト) の分野でより大きなシェアを取ろうとしている。パンデミックによる需要の高まりによって、2022年はブライダルレジストリとベビーレジストリの双方にとって重要な年になることがすでに決定している。
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スタートアップ企業は、レジストリ(ほしい物リスト) の分野でより大きなシェアを取ろうとしている。
パンデミックによる需要の高まりによって、2022年はウェディングレジストリとベビーレジストリの双方にとって重要な年になることがすでに決定している。ある試算によると、米国では今年250万件の結婚式が行われる予定で、これは1984年以降で最大の数だ。Amazonは現在、ウェディングレジストリを独占しており、ザ・ノット(The Knot)のデータによると、1月はベッド・バス・アンド・ビヨンド(Bed Bath & Beyond)を超えた。Amazonは2021年末の時点で、米国のウェディングレジストリ全体の45%を占めるとされている。
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Amazonが苦戦するサービスで差別化
しかし、デジタル系スタートアップは、百貨店やAmazonが苦戦するようなサービスで抜きん出ることを試みている。これにはカスタマイズされたおすすめ品や、限定商品、統合された準備ツールなどがある。
ベビー用品のレジストリにおいて、ベビーリスト(Babylist)の目標は、子育てに関するコンテンツとeコマースのプラットフォームになることだと、創設者でCEOを務めるナタリー・ゴードン氏は米モダンリテールに語った。
ベビーリストは昨年11月、シリーズCラウンドで4000万ドル(約45億6000万円)を調達した。2011年に発足した同社は1月、最初のポップアップ店をLAに開設し、来店客が商品を試したり、購入できるようにした。
同社はアフィリエイトビジネスのモデルで操業を開始したが、今では出産を控えた夫婦のニーズを満たすワンストップショップをめざしていると、ゴードン氏は語った。「たとえば、パートナーの生命保険などのサービスを、出産を控えた夫婦向けの電子メールマーケティングに組み入れている」のだという。また、若い新米の親にアピールするため、TikTokなどのプラットフォームにも投資していると、同氏は話した。
同社は2021年に2億5000万ドル(約285億円)の収益をあげたと、ゴードン氏はいう。利用者は、ベビーリストの自分のレジストリに平均100〜200点の商品を追加する。同氏によると、パンデミックとそれに関連するサプライチェーンの遅延が、ベビーシャワー関連の購入の決定に影響した。現在では、出産を控えた夫婦と、お祝いを贈る人々は、パンデミック前よりも数カ月も早く商品を注文するようになったという。
同社は、ベビーリストのおすすめ商品やギフトガイドをキュレーションする社内のコンテンツチームに大きく依存している。「我々は、コンテンツをマーケティングの一形態と見ており、当社サイトへの訪問者が1日に何度もサイトを訪問することを発見した」とゴードン氏はいう。このチームは商品の特徴を紹介する説明動画も制作している。また、ベビーリストの編集チームは、商品のリコールや安全性の情報開示などのリストを常に更新している。「新米または出産を控えた親が商品を見つけるのを助けながら、当社への信頼を築き上げるという考えだ」。
「優れたフルフィルメントパートナー」
同社はまた、新興のD2Cブランドがめざすチャネルとなるための活動も行っている。ゴードン氏は、調製粉乳のボビー(Bobbie)や、D2Cベビーカーブランドのコルゴ(Colugo)を、サイトの人気商品として例に挙げている。
同時に、ベビーリストの自社商品を成長させるチャンスもあると、ゴードン氏は語った。
たとえば、3年前に発売され、現在同社のベストセラー商品となっているベビーリスト・ボトルボックス(Babylist Bottle Boxes)は、その一例だ。このボックスはベビーリストでもっとも評価の高い各種の哺乳瓶を詰めたもので、親たちは購入前に商品を試すことができる。「必ずしもギフトに最適とはいえない品物を、気の利いたギフトに変えるクリエイティブな方法だ」とゴードン氏は話した。同社は昨年、おむつギフトボックスを売り出した。これにはD2Cブラントのダイパー(Dyper)とコテリー(Coterie)の商品も含まれている。
Amazonの豊富な品揃えとの競合について、ベビーリストはeコマースの巨大企業であるAmazonと直接競合するつもりはないとゴードン氏は語る。ベビーリストの利用者は、チェックアウトをするために、Amazonや、ターゲット(Target)、ウォルマート(Walmart)、ノードストローム(Nordstrom)など多くの小売業者のサイトにリンクすることができる。ボビーなど一部のD2Cブランドは、ベビーリストを経由した注文を自社で処理することもある。
「当社はAmazonを、ユーザーがチェックアウトする際に好む、優れたフルフィルメントパートナーと考えている」と同氏は語った。
カップルのためのワンストップサービス
ベビーレジストリの分野と同様に、ウェディングレジストリのスタートアップ企業も、大型小売店にはない幅広いプランニングツールを提供することで、大手企業との競争に挑んでいる。
ザ・ノットは1996年に設立された会社で、ウェディングレジストリ業界では確立された実績がある。最近になって、2013年に設立されたゾーラ(Zola)も支持を集めている。ジョイ(Joy)などの他社は現在、大手小売業者と対抗する方法を模索している。
ジョイは2016年に設立され、2021年の売上高が前年比で100%以上の伸びを示した。共同創設者でCEOを務めるビシャル・ジョシ氏は、ジョイの成長の理由は、レジストリ以外の、関連するウェディングプランニングツールを追加したことだとしている。これらの追加は、ジョイをカップルのためのワンストップ・ウェディング・ポータルにすることを意図していると、同氏は語る。
同社のウェブサイトとアプリのデザイン更新には、結婚式の招待客管理やライドシェアの統合が含まれており、「特にパンデミックの最中で多くのものが流動的な時期に」カップルのあいだで人気となっていると、同氏は述べている。
「カップルの日常生活に合わせた技術的な統合は、当社のレジストリとほかの小売業者との大きな差別化要因だ」とジョシ氏は述べる。たとえば、新しいデザインにはウェブブラウザの「ジョイ」ボタンがあり、カップルはどのウェブサイトからでも簡単にレジストリにアイテムを追加できるようになった。
あらゆる商品を登録可能に
昨年春にレジストリポータルを開設して以来、同社はサイトの収益化を拡大してきた。「当社は、ジョイでギフトを贈るゲストの数が前月比で90%も増加するのを目にした」とジョシ氏は話した。「この理由は、カップルの望んでいるもの、たとえば現金ギフトの手数料無料や、どの小売業者からでも自分のレジストリに商品を追加できる機能など、カップルが何を望んでいるかを考えていることが、この結果につながったと考えている」。
ジョイの利用者は、大手小売業者だけでなく、エッツィ(Etsy)の職人やチャリティ団体など、ネット上のあらゆる中小企業の商品も登録できる、とジョシ氏は語った。ジョイは、レジストリに登録された商品が売れた場合、1%の手数料を取ることで収益を得ている。
現在のところ、同社のマーケティングは口コミに大きく依存している。これは、現在のレジストリの問題点を解決することで、カップルやゲストが友人にジョイを勧めるようになることを期待しているためだ。
「ひと組のカップルがジョイを利用すれば、その100人以上のゲストが当社の商品に触れることになる」とジョシ氏は述べた。
[原文:How wedding and baby registries are looking to compete with Amazon]
Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Joy