Voxは7月7日、Amazonプライムに対抗するウォルマートの待望の競合サービスがまもなく(実際には今月)スタートすると報じた。「Walmart+」と呼ばれるこのサービスは、年額98ドル(約1万500円)で、スピード宅配などの特典を提供するとされている。
ウォルマート(Walmart)は、オンライン食料雑貨分野を支配してきた。現在は、その支配領域を拡大しようと努めている。
Voxは7月7日、Amazonプライムに対抗するウォルマートの待望の競合サービスがまもなく(実際には今月)スタートすると報じた。「Walmart+」と呼ばれるこのサービスは、年額98ドル(約1万500円)で、スピード宅配などの特典を提供するとされている。価格と同様に、そうしたほかの特典で、ウォルマートはAmazonとの差別化を試みている。だが、キングコング級のAmazonプライムに対抗するのにそれで十分かどうか、依然として疑問が残る。
ウォルマートが握るチャンス
eコマース分野では、Amazonはいまだに大手なのは確かだ。eマーケター(eMarketer)によると、Amazonは今年、米国のデジタル販売市場で38%のシェアを握っている。2位のウォルマートのシェアは5.8%だ。それでも、成長率はウォルマートが上回り、Amazonの21.1%に対して44.2%となっている。ちなみに、オンラインでもっとも成長している小売業者はターゲット(Target)で、売上成長率は52%だ。
Advertisement
ウォルマートの場合、希望は、すでに支配している食料雑貨分野の利用にある。2020年第1四半期に、ウォルマートのeコマース事業は74%成長し、食料雑貨への需要によるところが大きいとしていた。これは、食料雑貨分野への進出ペースが遅いAmazonと正反対だった。Amazonは、新型コロナウイルスのパンデミック中、需要が殺到し、一部の配達に数週間かかり、食料雑貨の配達サービスを提供している地域が限界に達した。
Amazonプライムが何年も前から成長できたのは、利用しやすいからだと、メディア測定企業のカンター(Kantar)でシニアバイスプレジデントを務めるレイ・デュラン氏は指摘する。「1回クリックするだけだ。とても簡単だ。欲しい物を何でも買える──食料雑貨以外は」。ウォルマートの場合、Amazonがまだ達していない規模でその空隙を埋める能力が、この戦いでの勝利に役立つ可能性がある。
だが、対抗するのは容易でない
とはいえ、Amazonに対抗するのはけっして容易ではない。「Amazonプライムの会員は、かなり定着している傾向がある」と、eマーケターの主任アナリストであるアンドリュー・リップスマン氏は語る。ウォルマートのような企業は「独特で差別化された利点を提供して、惰性に打ち勝たなければならないだろう」と、リップスマン氏は付け加えた。
現在、料金は、Amazonの119ドル(約1万2700円)に比べて98ドルとWalmart+の方が安い、と報じられている。ウォルマートのガソリンスタンドでの割引や新製品の優先提供など、特定の独占的な特典も提供しているとされる。新製品の取り扱いは、効果的な差別化要因になると証明される可能性があると、リップスマン氏は話す。「ホリデーシーズン向けの超特価品」を利用するのもひとつの手だという。
Shopify(ショッピファイ)との新たな提携を通じて、Walmart+会員により限定商品を提供する手もある。そうすれば、「ウォルマートは、差別化された在庫を持てる」とリップスマン氏はいう。これなら、会員にもっと貴重な商品を提供できると同時に、商品棚に並べる可能性がある新製品の実験場になる。
戦いはまだ始まったばかり
これらの方法をすべて採用しても、ウォルマートがAmazonから流れてくる大量の顧客が行き着く先になる見込みは薄い。さしあたっての計画は、下地を作って、圧力をかけられる、競争力のある小さな分野を見つけることになりそうだ。「比較を始める買い物客が現れると思う。おそらく、そうした買い物客は、一方にしか金を出さないだろう」とデュラン氏は語る。
つまり、戦いはまだ始まったばかりだ。「ウォルマートにとって長期戦になるだろう」と、リップスマン氏は述べた。
[原文:How Walmart’s new subscription program is trying to compete with Amazon]
Cale Guthrie Weissman(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:長田真)